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読書日記2024年4月と銀座の地下図書館

夏みたいに暑くなったかと思えば、急に冷え込んだり。
落ち着かない気候が続いていますね~。
そんな4月に読んだ本から、印象に残ったものを振り返ります。

『続きと始まり』(柴崎友香/集英社)

『続きと始まり』

東京在住の男性一人、女性一人、滋賀県の女性一人。
三者それぞれの視点から、コロナ禍の日常が語られています。
二〇二〇年三月から二〇二二年二月まで。
マスクがなかなか手に入りにくくて高値で売られていたり、飲食店でお酒が飲めなかったり早い時間に閉まってしまったり……。
描かれているのは、ほんの一、二年前のこと。
なのに、「そういえばこんな感じだった」と驚く自分に、さらに驚いてしまいました。
近いようで遠い、不思議な時間の感覚。
日常生活の向こうに揺曳する過去の災害や、家族との確執やすれ違い(三人とも親とはあまり良い関係ではなく、だからこそ新しく築いた家庭や友人関係を大切にしているように見えた)も丹念に描かれています。
さらには今起きている戦争の影も……。
柴崎さんの文章は何でもないように見える日常をやわらかく、淡々と捉えていて、それでいて心理描写も鋭い。
文章を味わうこと自体が愉しみで、ゆっくりと大事に読んだ一冊でした。

『恋紅』(皆川博子/春陽堂文庫)
『散りしきる花』(同上)

『恋紅』『散りしきる花』

皆川博子先生は最高に敬愛する作家さん。
が、作品数があまりに膨大なので全作は読めておりません……積読になっている本も数多く。
特に、私は皆川先生の作品の中でも幻想的な作風のものが大好きなので、時代小説は後回しになりがちでして。
直木賞受賞作である『恋紅』と続編『散りしきる花』も、実は未読でした。
今回、文庫が復刊したのを機に二冊続けて読みました。

時代は幕末から明治の初めにかけての激動の時代。
吉原の遊女屋の一人娘・ゆうが、旅役者の福之助と出会い、恋に落ちる。
行きどころのない寂しさや悲しみを抱えているゆうが、雑駁だけれどあたたかい福之助と少しずつ心を通わせていく恋物語。
また、激動の時代の中、恋を通して、また芝居というものへの情熱を通して、ゆうが成長していく物語でもあります。
皆川先生の作品では、主人公に対して結構、過酷な運命が与えられることが多いのですが、本作のゆうも例外ではなく。
少女から大人の女性へと成長していく過程ではやむを得ないこともあるとは思うのですが、続編『散りしきる花』では、読んでいて思わず「えっ……」と声が出てしまうようなつらい展開もありまして。
それでも読まされてしまうのは、物語の力の強さと、だんだんとたくましくなっていくゆうの魅力ゆえ。
二冊たっぷり、堪能しました。

さて、読書日記からは少し離れますが。
4月の終わりに東京へ一泊旅行に行ってきました。
メインの目的は推しバンドの久しぶりのライブでしたが、この機会に行ってみたかったお店に行ってみよう、ということで。

銀座にある『BookCafe&Bar 十誡』へお邪魔してきました。
ずっとSNSで写真などを見ていて、いつか一度は行ってみたい、と憧れていたのです。

いざ地下へ

「銀座の地下図書館」というキャッチフレーズが良きです。
ちょっとドキドキしながら店内へ。
物腰柔らかな店員さんのご案内で、着席。
落ち着いて店内を見回してみますと……わー、めっちゃ好み!最高!
こんな部屋を書斎にしたい!

本棚が素敵すぎる
雰囲気たっぷりの調度品
こんな椅子に座りまして
こんなメニューを眺めまして
こんな本をめくりつつ
こんなおいしいものを頂きました

私が頼んだのはスコーン、キャンディス、紅茶、グラスシャンパンのセット。
どれも大変おいしかったし、真っ昼間なのに地下の暗闇で飲むシャンパン、というのも味わい深かったですね。

ほかにも色々頼んでみたいメニューはあったのですが(アリスのミニチュアティパーティセットとか)……
二時間の時間制だったので断念、それだけが残念!
かなうことなら、一日中でも読書していたいような素敵なお店でした。
また東京へ行く機会があれば、ぜひお邪魔したいなと思います。

(了)



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