はいねる

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『ヴィンセント博士のミステリーサンプル』第4話を知っているか

■場面:ロンドン塔・展示室(深夜)   犯行予告直前。   グレイとヴィンセント、今後の動き方について   ジョーンズ警部と話している。 グレイ 「今回のターゲットは、王家の財宝『ダイヤモンド・カリナン』ですからね。万が一でも奪われたら英国の面目丸潰れです。慎重に行きましょう」 ジョーンズ 「安心しろ、あんたらの手を煩わせやしない。 それじゃ、またあとでな!」   ジョーンズ警部、去っていく   ※SE:走り去る足音(タタタッ) ヴィンセント 「(軽くため息を付いて

    • 小説『Night night』を知っているか

      ジョン・H・ワトソン、アーサー・ヘイスティングス、アーチ・グッドウィン……探偵がいるから、助手も存在する。Not bad,Quite good(良いんじゃない?好きではないけど)  ロンドンにも青空を願う人間はいる。そう、俺みたいな。  こう年がら年中、霧煙る曇天に埋もれれば、無駄に沈みすぎる思考に辟易もする。『いい加減慣れたよ』なんて皮肉交じりに言うロンドナーなどクソ喰らえだ。どうして愛せると思う? アールグレイとビスケットじゃ、冷えきった身体は温まらない。ここはやっぱり

      • モキュメンタリー「traditional culture」を知っているか

        以下は、映像またはテレビの企画書として制作したものです。 タイトル 「traditional culture」 概要 架空の日本を舞台にしたモキュメンタリー 狙い 日本が誇る伝統技術やカルチャーを紹介しながら、その職人たちがもしかしたら死刑制度に関わっていたかもしれないif時空を描く。コメディタッチで笑えるけれどリアルでゾッとする、フィクション世界の日常をリアルに丁寧に見せる。 登場人物 工芸職人(女・25)メイクアップアーティスト(男・21) 農業家(女・19

        • 映画『笑うカブトムシ』を知っているか

          以下は、映像または舞台の企画書として制作したものです。 タイトル 「笑うカブトムシ」 概要 密室の会話劇のみで展開するSFコメディ 狙い 近年世界中で問題となっており、2018年に日本でも施行された『カルタヘナ法』をテーマに人間の欲望や愚かさを描く。映画『十二人の怒れる男』のような会話劇とブラックコメディ感を見せる。※カルタヘナ法(遺伝子組み換えの生物を地上に放ち生態系を壊す行為を禁じる法律) 登場人物 生物学者(女、44)人類学者(男、32) ブリーダー(女、

        『ヴィンセント博士のミステリーサンプル』第4話を知っているか

          『黒猫ストリップ』第4話を知っているか

          東京節 「これで最後か」 荷物か、無機物の様に重い音。 少女の眼下に、失神した観客の男が放り投げられる。 その顔は抵抗したときに殴られたのか真っ赤に鬱血していて、少女は小さく息 を飲んだ。 「女もこれで全部だな。隠していないな」 男たちは、緞帳の陰から楽屋の奥、客席の足元に至るまで、ひとっこひとり、猫 一匹逃がさぬようにと場内を探し回っている。 少女は、浅い息を繰り返していた。唇も咥内もガサガサに乾いているのに、どこ までも体が呼吸を求めていた。両手の自由を奪われても、

          『黒猫ストリップ』第4話を知っているか

          『黒猫ストリップ』第3話を知っているか

          ポルターガイスト 「あっ」 雨だったからだろうか。 その日は客入りがあんまり良くなくて、寄席の空気もど こかぬっとりと地を這うように落ち着いていた。楽屋では芸人たちもまたゆる ゆると暇を持て余している。舞台の袖に、いつものように座布団や小道具を運んでいると、通路に飾られた花束の中に、一匹の蟻を見つけた。 蟻は、花の中心で、飴溜まりに足を取られて溺れている。助けてやろうかと指を 差し出したが、一瞬考えてそれを止めた。きっと苦しいだろう、身動きも取りづ らいだろう。だけど、蟻

          『黒猫ストリップ』第3話を知っているか

          『黒猫ストリップ』第2話を知っているか

          恋のバカンス <朝顔や釣瓶(つるべ)とられてもらひ水> 夏も盛りのその日。この街は、朝から何やかやとそわそわとして落ち着きがなか った。早い刻から、職人・商人問わず、町衆はバタバタと座ることもなく慌ただ しく駆け回っていた。それは、芸人も同じこと。平素より忙しない人種ではあっ たが、今日はそれ以上皆浮足立っているようで、あの普段は芸人の言動にも頓着 しない陽炎が、「花の賑わい… などと言っている場合ではないな」と重い腰を上 げて、小屋の表で騒ぐ若い衆を鎮めに出ていく始末だ

          『黒猫ストリップ』第2話を知っているか

          『黒猫ストリップ』第1話を知っているか

          《あらすじ》 大正時代、東京• 浅草の街に、 寄席、見世物小屋、映写場、ストリップショウなどが軒を連ねる大通りがあった。 その一角に和蘭(オランダ)座という古い寄席がある。 腕利きの芸人たちが出演するその小屋に、ある日、1人の美しい少女が迷い込んだ。 ひょんなことから、その子の世話をすることになったのは、 当代随一と名高い噺家「竜胆(りんどう」)とその愛猫の黒猫「シロ」。 2人と1匹の間は心を通わせ、擬似家族のような絆が生まれるが、 若き奇術師「紅葉(もみじ」)の登場で、そ

          『黒猫ストリップ』第1話を知っているか

          『ヴィンセント博士のミステリーサンプル』第3話を知っているか

          ■場面:ロンドン市警・会議室(昼)    午後12時。ヴィンセントとグレイ、そしてジョーンズ警部。    事件について話している。     ※SE:オフィスのざわめき(わいわい)   ※SE:カードをめくる音(ペラッ) グレイ 「『拝啓、国王陛下。 トゥルーピング・ザ・カラーの前夜、ロンドン塔に眠るダイヤを頂戴する。 あなたに神のご加護がありますように』」   ヴィンセント、ハッと驚く   ※BGM:ミステリアスな音楽 ヴィンセント 「これは……つまり、犯罪の予告状

          『ヴィンセント博士のミステリーサンプル』第3話を知っているか

          『ヴィンセント博士のミステリーサンプル』第2話を知っているか

          第1章「国王陛下のマーチ」 ■場面:オープニング 主人公・ヴィンセントのナレーションからスタート。 キャラ紹介しつつ、グレイとの出逢いを振り返る。 ※BGM:クラシックっぽいピアノ曲 ヴィンセントN 「俺の名前は、ドクター・ヴィンセント。 アメリカ生まれアメリカ育ちの、優秀な植物学者だ。 (強調して)ちなみに俺は、イギリスという国とイギリス人が、 大嫌いである」 ヴィンセントN 「そんな人間がどうしてロンドンにいるのか。 さぞかし疑問に思うだろう。 学術論文について

          『ヴィンセント博士のミステリーサンプル』第2話を知っているか

          『ヴィンセント博士のミステリーサンプル』第1話を知っているか

          ■あらすじアメリカ人の植物学者「ヴィンセント」は、論文の盗作疑惑を掛けられ、母国を追われてイギリスにやってきた。ある日、仕事の合間に古びたカフェに立ち寄ると、店主である「グレイ」と口論になってしまう。イギリス人は高飛車で傲慢だと憤るヴィンセントに、皮肉屋なグレイは、わざと心を落ち着かせるハーブティを提供する。そして、持ち物や口調をヒントにヴィンセントの正体を言い当てたのだった。この出会いをきっかけに、2人は急速に距離を縮めていく。そして、マザーグースにまつわる小さな事件を解決

          『ヴィンセント博士のミステリーサンプル』第1話を知っているか

          『ドーイドイ』を知っているか

          『ドーイドイ』という言葉を知っているか。 私は知っている、シワシワで温かい掌とともに。 それは、あの世とこの世を繋ぐ絶叫。 訃報を聞いたとき、私は吉祥寺の居酒屋にいた。 「明日は始発かな」 そう思って、お代わりの生ビールを軽めのカクテルに変更した。 梅水晶を追加注文しながら冷静に考える。 喪服はどこにあったかな、駅前の紳士服屋で買えるかな。 ああ、そういえばお盆真っ只中だ。 葬式の次の日、私はいきなりステーキを食べた。 「元気が出ない」 妹からLINEが来たので「無理し

          『ドーイドイ』を知っているか

          『ルードの独断論』を知っているか

          私 はお恥ずかしながら文章を書くことでお金をもらっている。 未だにその実力はプロと名乗れるレベルではないが、 「物書きです」と看板を掲げればみんな素直に信じてくれるので、 今までのうのうと生き伸びてきている。 長年文章と触れ合っていると、言葉の美しさを実感する。 同時に、言語って何か変だな?と思うことも増えてくる。 その中で、特に私が興味を持って研究している理論をいくつか紹介する。 完全な創作理論であり、学術的には一切認められていないので、 その辺の適当具合も加味したうえで

          『ルードの独断論』を知っているか

          『ラーメン』という言葉を知っているか

          ラーメンという言葉を知っているか。 その意味を、辞書で引いたことがあるか。 私はある。ドイツ語で『額縁』。 建築構造の1つで、長方形に組まれた用材を強化すること。 どんな雨風にも負けないように、内面を守るため外面を固める。 建物も、私だってラーメン構造で生きている。 そうしないと壊れちゃうから。 私が最初に物語を書いたのは4歳の時。 大好きなおばあちゃんが亡くなって、 お母さんに「何かお棺に入れたら?」と言われた。 何をどう書けばいいかわからない、 でもおばあち

          『ラーメン』という言葉を知っているか

          『猫の恋』という言葉を知っているか

          猫の恋という言葉を知っているか。 その意味を、心で身体で味わったことがあるか。 私はある。2022年の流行語大賞を決めるとすれば、 それ以外にはないくらい。 猫の恋という言葉を辞書で引いたことがあるか。 その意味に、心臓を射抜かれたことがあるか。 私はある。春の夜となく昼となく、恋に憂き身をやつす猫のこと。 毛を逆立て奇声を発して、恋の狂態を演じる。 30も半ばを過ぎて乙女心など持っていられない。 ただでさえ若い頃から「恋を蹴っている」と言われた女だ。 胸を焦がすよう

          『猫の恋』という言葉を知っているか

          『夢小説』という言葉を知っているか

          推しに彼女ができたっぽい。 知ってた知ってた。「すげえモテる」って公言する人だし。 出会いも多いからすぐにできると思ってた。 でも、そういうの秘密にできる人だと思ってたなー。 よっぽど嬉しいんだろうな。隠す余裕さえない恋なんだろうな。 普段はあんなに冷静でクール気取ってるのにさ。 匂わせでバレバレだって。どんだけ見てきたと思ってんの。 君のことは何でも知りたかったけど、 そこまで教えてほしいとは言ってないよ。 思ったより落ち込んでて笑っちゃうわ。 今何やってるのかな、今夜は

          『夢小説』という言葉を知っているか