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『ヴィンセント博士のミステリーサンプル』第3話を知っているか
■場面:ロンドン市警・会議室(昼)
午後12時。ヴィンセントとグレイ、そしてジョーンズ警部。
事件について話している。
※SE:オフィスのざわめき(わいわい)
※SE:カードをめくる音(ペラッ)
グレイ
「『拝啓、国王陛下。
トゥルーピング・ザ・カラーの前夜、ロンドン塔に眠るダイヤを頂戴する。
あなたに神のご加護がありますように』」
ヴィンセント、ハッと驚く
※BGM:ミステリアスな音楽
ヴィンセント
「これは……つまり、犯罪の予告状ってことか?」
グレイ
「さあ、ただの悪戯かもしれません。
カード1枚で断定するのは難しいですが、
ロンドン市警は、事件が起こる前提で動いているようですよ」
ジョーンズ
「知っての通り、国王陛下の生誕祭、
トゥルーピング・ザ・カラーは6日後に開催される。
犯行予告の日まで時間がねえ……!」
ジョーンズ
「もちろん、犯人像の特定は進めてる。
当日も、ロンドン塔に200人単位で警備を敷く予定だ。
しかし、頭のキレる助っ人にも知恵を借りたくてな」
グレイ
「現状集まっている情報から、解決の糸口を探ってほしい。
それが今回の依頼内容です」
ヴィンセント
「なるほど、事情は把握した。
しかし、証拠品ってこのカードくらいしかないんだろ?
特に気になる点はないが……」
ヴィンセント、カードに直接触れようとする
ジョーンズ、それを咄嗟に止める
※SE:手首を握って止める音(パッ)
ジョーンズ
「おっと、ドクター!
そのカードを素手で触るのは止めたほうがいい。
オレみたいになりたくなければな」
ヴィンセント
「えっ、どういうことだ?」
ジョーンズ
「この手を見ればわかるさ。
カードに触れただけで真っ赤に爛れちまったんだ」
ジョーンズ、包帯を取る
※SE:布を脱ぐ音(くるくる…パサッ)
グレイ
「これは、まるで酷い火傷のようですね。
原因は薬剤か、あるいは塩素系の液体でしょう。
いずれにしろ、趣味の悪い犯人だ」
ヴィンセント
「……ん?」
ヴィンセント、何かに気付く
ジョーンズに近付いて、その指先を確認する
ヴィンセント
「ちょっと待て!
ジョーンズ警部、しっかり患部を見せてくれ」
ジョーンズ
「お、おう……」
グレイ
「(興味深そうに)ほう。何か重要な手がかりが見つかりましたか?
ドクター・ヴィンセント」
ヴィンセント
「最近、あんたと居すぎたせいかな。
どうにも物事を穿った見方するようになってね。
……まだ確信は持てないが、犯人の尻尾が掴めたかもしれない!」
ヴィンセント
「ジョーンズ警部、ちょっと調べてほしいことがあるんだ。
アメリカ人の俺にも手を貸してくれるかな?」
※BGM:ミステリアスな音楽
→ゆっくりFO
場面:ロンドン市警・駐車場(昼)
午後1時。グレイ、愛車の運転席に乗り込む。
助手席にはヴィンセントがいる
グレイ
「ヴィンセント、助手席に乗ってください。
研究室まで送りますよ」
※SE:車のドアを閉める音(バンッ)
※SE:エンジンを掛ける音(ブロロローン)
※バックSE:車の走行音(ブーン)開始
グレイ
「(くすっと笑って)ジョーンズの顔を見ましたか?
あなたの推理に感心しきっていましたね」
ヴィンセント
「ロンドン市警の役に立てたなら幸甚(こうじん)の極みだな。
まさか専門知識が生きるとは」
グレイ
「全てあなたが考えた通りでしたよ。
あのカードには、植物の樹液が染み込ませてあった。
それも、成分分析じゃないと割り出せないヤツがね」
ヴィンセント
「……ジャイアント・ホグウィード。
セリ科の多年生植物で猛毒を持っている。
うちの大学の植物園でも繁殖していたが、
何者かに荒らされて被害届が出ていた」
ヴィンセント
「ヤツの樹液には光毒性の物質が含まれていて、
深刻な皮膚炎を引き起こす。ジョーンズ警部は軽症で済んだが、
目に入っていれば失明していただろうな」
グレイ
「これは悪質な化学テロですよ。
イタズラ目的なら、こんな手の込んだ事はしないでしょう。
つまり、カードの送り主は犯罪のプロってわけです」
グレイ
「(楽しそうに)ふ、ふふっ。
本当にお手柄ですよ、ヴィンセント」
グレイ、信号で停まる
※バックSE:車の走行音(ブーン)終わり
※SE:車が停まる音(ブロロロ)
※SE:ハザードの音(カチカチ)
ヴィンセント
「喜んでる場合じゃないだろう。
こんなヒントだけじゃ事件なんて解決しないぞ。
まして犯人なんて、向こうから来るわけないんだから……」
グレイ
「さて、それはどうでしょうね。
その『まさか』が起きるのが、人生の面白いところですよ」
ヴィンセント
「……えっ?」
グレイ、いきなりハンドルを切って猛スピードで走る
ヴィンセント、大慌てする
※BGM:疾走感のある曲→始まり
※SE:エンジンを吹かす音(ブルーン)
※SE:猛スピードの走行音(ブロロローン)
※SE:急ハンドルを切る音(キキーッ)
ヴィンセント
「おいっ!? 何してんだ、グレイ!!」
グレイ
「警察署を出てから、怪しい車に付けられているんです。
こちらの様子を伺っているようだ。
顔を拝んでやりましょう!」
ヴィンセント
「それ、例の犯人ってことか!?」
※バックSE:猛スピードの走行音(ブロロローン)
※SE:急ハンドルを切る音(キキーッ)
ヴィンセント
「くそっ、舌を噛んじまうだろ!?」
グレイ
「静かにしててください。
良いところなんですから」
※SE:エンジンを吹かす音(ブルーン)
※SE:猛スピードの走行音(ブロロローン)※しばらく続く
ヴィンセント、グレイの運転に振り回され、悲鳴を上げる
相手の車、遠くに走り去る
グレイ
「(残念そうに)……ああ。ギリギリで逃げられてしまいました。
誰かさんが騒いだせいですね」
ヴィンセント
「(肩で息をして)はあ、はあっ!
あんたが予告もなしにカーチェイスするからだろ!?
ったく、どこでそんな運転覚えたんだ!?」
グレイ
「紳士の嗜みの一つですよ。
……この事件、やはり一筋縄ではいかないようですね。
テムズ川の深層のように仄暗い悪意を感じる」
グレイ
「(シリアス気味に)ねえ、ヴィンセント。
あなたの類まれなる好奇心が必要です。
今回の調査、手伝ってくれませんか?」
ヴィンセント
「冗談も大概にしろ、と言いたいところだが……。
ここまできたら、俺も後に引けなくなった。
毒を食らわばもろとも、グレイと運命を共にするよ」
※BGM:疾走感のある曲→ゆっくりFO
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場面:状況の説明
ヴィンセントのナレーション。
犯行予告日までの出来事を説明する。
※BGM:ミステリアスな音楽→始まり
ヴィンセントN
「犯行予告日までの数日間。
俺とグレイは、ロンドン中を駆け巡った。
情報収集はもちろん、裏路地のネズミにまで聞き込みをする。
空に浮かぶのが朝日なのか夕日なのかわからないくらい、
調査に明け暮れた。
まったく、この国に来てからロクなことがない」
ヴィンセントN
「それでも、ひとつだけ良いニュースがあった。
ロンドンのスラム街『イーストエンド』のギャングたちが、
例のダイヤについて嗅ぎ回っていたらしい。
ついでに、悪いニュースも伝えておかねばならない。
俺の調査でわかったことは、その情報ひとつだけだった」
ヴィンセントN
「そして、とうとう決戦の夜がやってくる。
真実を覆い隠すように、現場は深い霧に包まれていた」
※BGM:ミステリアスな音楽→終わり
場面:ロンドン塔・中庭(深夜)
午後23時。犯行予告当日。
グレイとヴィンセント、ロンドン塔にやってくる
周辺は不気味な雰囲気
※SE:2人の足音(カッカッ)
※SE:不気味なカラスの鳴き声(カアカア)
ヴィンセント
「(嫌そうに)
これがロンドン塔か。陰気臭い建物だな。
デカいカラスが飛び回って、まるで牢獄じゃないか」
グレイ
「おや、勘が良いですね。ヴィンセント。
ここは、13世紀頃から監獄として使われてきた場所です。
犯罪者はもちろん王家の人々の処刑も行われました。
英国の生き血をすすっているんですよ」
ヴィンセント
「(鼻で笑って)はっ、最高だな。
こんなところに盗みに入るなんて、
カードの送り主も良い趣味してる。
しかも、わざわざ満月の夜を選ぶとはな」
グレイ
「この騒ぎを心から楽しんでいるのでしょう。
自分の犯行予告により、たくさんの大人が右往左往している、
その様子を近くで眺めているかもしれませんよ?」
警察の一軍がやってくる
ジョーンズ警部、2人に走り寄る
※SE:群衆のざわめき(ざわざわ)
※SE:走る足音(タタタッ)
ジョーンズ
「やあ、2人とも。来てくれて感謝する。
こちらも、ダイヤの展示室に警官を配備したところだ」
グレイ
「先ほどビックベンが23時の鐘を鳴らしました。
あと1時間ほどで犯行予告の時間ですね。
お宝の様子はいかがです?」
ジョーンズ
「今のところ変化はないな。
少しでも近付いたらトラップが作動するようになっている。
犯人は触れることすらできんだろうさ!」
グレイ
「今回のターゲットは、
王家の財宝『ダイヤモンド・カリナン』ですからね。
万が一でも奪われたら英国の面目丸潰れです。
慎重に行きましょう」
ジョーンズ
「安心しろ、あんたらの手を煩わせやしない。
それじゃ、またあとでな!」
ジョーンズ警部、去っていく
※SE:走り去る足音(タタタッ)
ヴィンセント
「(軽くため息を付いて)
はあ、いよいよだな……」
ヴィンセント、ちょっと緊張した様子
グレイ、それに気付く
グレイ
「怖いですか? ヴィンセント」
『ヴィンセント博士のミステリーサンプル』第3話終わり
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