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子どものころの不思議で止まっていること

最近、不思議な本を読んで、子どものころに不思議だったことを思い出した。

ミステリ、ファンタジー、SF、青春、恋愛。
5つのジャンルの物語が一同に会する街で、真相を知っているのは読者だけ。

ここまで舞台設定に惹かれるあらすじがあるだろうか。
とてつもないワクワクを感じる、森バジルさんの短編小説。

とある街を舞台に描かれる、全く異なるジャンルからなる5つの物語は、それぞれの世界と交わらずとも、少しづつ重なりあうことで、思いがけない奇跡を起こす。

世界観や文体は章ごとにくっきりと切り替わるのに、舞台となる街だけは変わらない。

どの章でも当たり前のように描かれる街で、登場人物たちが縦横無尽に駆けまわっているのが不思議でしょうがなかった。

どこにでもある普通の街。それなのに、別の章から覗いてみると、見たことのない風景に様変わりする。

角度を変えると景色が一変する物語は、くるくると回転して色鮮やかな世界を映しだす万華鏡のようだった。

ところで、万華鏡ってどんなしくみなんだろうか。
ふと、頭のなかに疑問が浮かんだ。

いざ思考を巡らせると、ちゃんと理解しているわけではなくて「覗きながら筒を回すと、キラキラした世界が切りかわっていくいうもの」として記憶に刻まれていた。

万華鏡の仕組みをわかりやすく説明している記事。
鏡の角度がとても重要らしい。

ついでに、万華鏡を発見した人光の三原色を発見した人が同一人物だということも初めて知る。ブリュースターめちゃくちゃすごいな。

そんなふうに「万華鏡」について、いろいろと調べてみると、初めて知ることばかりだった。

子どものころに不思議だなと思っていたことが
今も「不思議」なままで止まっていた。

そして、子どものころの不思議で止まっているのは、きっと「万華鏡」だけではないのだろう。

あのころに不思議でしかたなかった出来事は数え切れないくらいあって、今では当たり前のような顔をして日常のなかに溶けこんでいる。

「この世界のこと一切もれなくぜーんぶ知るまでは、誰に何言ったって知ったかぶりだよ」

『ノウイットオール あなただけが知っている』森バジル 本文引用

せめて、子どものころの自分には知ったかぶりしたくないなと思ったので、今年はあらためて、あのころの不思議で止まったままになっている時計の針を動かしてみようと思う。

日常に紛れた不思議を探してくるのも
それはそれで、大変かもしれないけれど。


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