Homecomingsが描くのは優しい世界の中にある小さな幸せとやるせなさ
日常の中を緩やかに流れている幸せと
時折、心の隙間から漏れ出るやるせなさ。
その両方を欠かすことなく描くのが
Homecomingsと言うバンドだと自分は思っている。
「Homecomings」とは、多くの楽曲で作曲を務めるVo.Gtの畳野彩加、作詞を務めるGtの福富優樹、そして、リズム隊でありながらコーラスも担当するBaの福田穂那美、Drの石田成美(敬称略)からなる4ピースバンド。
柔らかな歌声と心地よいメロディに揺られながら聴こえてくる言葉は、日常の一幕を滑らかに切り取って、忙しない日々に紛れてしまった幸せを脳裏に映し出してくれる。
しかし、一見、優しさに包まれた世界が限りなく広がっているように見えるが、どこかに大切なものを置き忘れてきてしまったような、微かな物寂しさを感じさせる瞬間も「Homecomings」の曲には存在しているのだ。
今回はそんな「Homecomings」が紡ぐ曲たちを紹介しながら、ただただ自分が好きな歌詞の数々を紹介していこうと思う。
日常の中で感じる些細な幸せ
「Homecomings」の作詞を担当する福富さんが紡ぐ歌詞には、忙しなく過ぎていく日常の中で忘れてしまいそうになる、ほんの小さな幸せを目の前に映し出す力がある。
この「Hull Down」と言う曲では、遠く離れた場所にいる「君」を思いながら、船の上で言葉を探す「わたし」の心境が描かれている。
「わたし」が手紙を書くことに恥じらいを覚えながらも、伝えたい喜びを「スタンプカードを埋めるような」と表現しているのがとても好きだった。
特筆すべきことではないのかもしれない、その日の小さなハイライト。
でも、日々の中で起こる、ほんの些細な幸せだからこそ、春の柔らかな日差しを浴びているように、じわじわと心が温かくなる。
このフレーズはずっと大切に心に留めておきたいぐらい気に入っている。
小さな幸せは、自分が想像しているよりもずっと
明日を生きていく糧になるから。
優しい世界の中で感じる一抹の寂しさ
また「Homecomings」には、緩やかに、でも確かに存在している幸せに隠れた、心が空っぽになる寂しさを感じさせる歌詞が多く含まれている。
楽しげな生活を想像する傍ら、どこか自身に言い聞かせるように投げかけられているフレーズが「Cakes」の歌詞にはちりばめられている。
映画「愛はなんだ」の主題歌としても注目を集めたこの曲は、好きなのに恋人ではない絶妙な距離感を、生々しいほどの生活感を感じさせる言葉で繕っているのが印象的だった。
特に、メジャー1stアルバムである「Moving Days」に収録されている曲たちは、前述の「Cakes」も含めて、歌詞に登場する「モノ」や「コト」に、名残惜しさすら感じさせる一抹の寂しさを宿している気がしてならない。
やるせない感情や並々ならぬ想いの詰まった「モノ」が歌詞の中に置かれていると、途端に曲は身近なものになって、ふわふわと浮かんでいた言葉が急に実態を持って目の前に接近してくるような感覚を抱く。
自身の物語ではないのに、心と記憶にリンクして、自分ごとになる。
福富さんの描く歌詞には
そう思わせるほどの説得力があった。
遠くからぼんやりと眺めているような心地
ふとラジオから流れてきた、この「US」という曲を偶然聴いて、自分は瞬く間に「Homecomings」の虜になってしまった。
未来への希望が込められたメッセージが疾走感のあるメロディに載せて歌われるこの楽曲は、一度、イントロが流れると曲が途切れる最後の瞬間まで、言葉を辿りながら追いかけていたくなる魅力をまとっているのだ。
息の詰まりそうな生活の中では気づかない。
目の前のことに必死になっている時では思い浮かばない。
見通しの良い丘から街を見下ろした時、ぼんやりと遠くから見た景色が言葉となって溢れてしまったような、そんなフレーズだと思った。
実際「Homecomings」の曲には、そういった俯瞰した場所から自分を取り巻く環境を眺めている目線も多く、だからこそ、冷静に彼らが紡ぐ言葉を受け止めることができるのかもしれない。
決して望み通りの日々ではないけれど、明日への希望を見出すような歌詞は「Homecomings」にはたくさんあって、聴いているともう少しだけ前を向いて立っていられる気がする。
最後に
普段の生活の中で忘れてしまいそうになる些細な幸せ。
そして、そんな幸せな時間が途切れてしまいそうになった時には、ぜひ「Homecomings」の歌を聴いてほしい。
日常の中で出会う小さな幸せの一つ一つを数えていくこと、それを糧にして未来に進んでいけることの大切さを知ることができるから。
早朝、起き抜けに眠気まなこで「Homecomings」の曲が聴こえてきたら、その日は些細な幸せを忘れずにポケットに入れておける。
そんな気がする。
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