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「マルハタリラ」 ぼくの友達が、薬で捕まったときにぼくはちょうど彼と電話をしていた。彼は、よくその言葉を使っていた。 ──マルハタリラが今日うちにやってきてさ、掃除してくれるのよ。あの子気が利くじゃん。だからさ、本当に助かるわぁ。 話の途中で、カシュッていう音が入るきっとタバコを吸っているのではないだろうかと思う。ぼくは、彼の口から出た「マルハタリラ」の意味を尋ねることなく、淀みなく彼と話を続ける。 ──そうなんだ。優しい人なんだね。大切にしな。 ふぅと煙の吐く音がする
公道に面する窓はいつも締め切っているし、カーテンも閉じていた。しかし、その方角は日が照っている方角で、どうしても、カーテンだけは開けたいと思ってしまう。時々カーテンの代わりに、シャワーを浴びたときに使ったタオルをカーテンレールに引っ掛けるときがある。カーテレールの上のところも、そこだけホコリが溜まっておらず、キレイだし、タオルも部屋干しなので臭いが付く。 コンビニの夜勤のアルバイトなので、普通のサラリーマンとの働いている時間が違う。だから、洗濯するタイミングも夜やってもい
「ゴミ箱が机の近くにある人は、優秀な学者になれる」はイギリスのピーター・ランセル氏が世界ユナイデットインテリ協会に提出した二百枚に及ぶ論文の三十五ページ目の二十四行目の引用だ。 これを読んだ協会員はあながち間違えではないと思う一方で、自分はどうだったかと思い出したになった。中でには、ゴミ箱と机の距離で優秀かそうでないかなんて決まるはずがないと反対するものもいたが、その人は案外効率的な人間で、机の周りで手の届く範囲には、ティッシュとペン立て、メモ帳、ゴミ箱などあったら便利な物
どうも、ウサギノヴィッチです。 今回の作品は、イギリスの作家であるトーマス・ハーディの『三人の見知らぬ客』です。 あらすじは、推して知るべし。 とある田舎の家でパーティーをしていたら、雨に濡れた一人の知らない男がやってくる。 そして、また次の男がやってくる。また、時間をおいてやってくる。 最後には、近所の監獄で死刑囚が逃げ出したという知らせがやってくる。 この男たちは一体何者なのだろうか? 一種のミステリーにも似た雰囲気を漂わせて、物語は進行していく。 さて、冒頭に推し
それが夢だとわかるまでに半日かかった。 起きてから最初のうちは、震えがとまらなかった。起きてすぐには現実を現実だと受け止めきれずに、上半身を起こして部屋を見回したときに飾っているフィギュアがどこか悲しげな顔をしていて、まだ夢の世界にいるように感じられた。部屋が蒸し暑くて息苦しく感じたので、エアコンのリモコンをベッド脇にある机においてあるはずだったのに、手をそちらの方にやったが見当たらなくて、探すのが面倒だなぁと思って、ベッドに寝転んだところの背中のあたりに硬いものが当たっ
彼女は悩んでいた。 空は広いのに、自分の心の中はこんなにも狭いのはどうしてだろうか。 雲が一つなく、群青色の絵の具で塗りつぶしたキャンバスのような空は、本当に彼女の心模様とは正反対だった。 彼女は六限目の音楽をサボり屋上に来ていた。友達には、「保健室に行ってくる」と言ったが、本心はだれとも会いたくはなく、元カレに教えてもらった方法で屋上に忍び混んだ。校庭では、授業でソフトボールをやっている男子がいて、その反対側では、女子がソフトテニスをやっていた。彼らはボールを追いか
夢を見た。 ヒモをしているときにいた街の外れにある大きな河の土手を歩いていた。実際には、そんなところ歩いた記憶はない。そのときは。それから十年して、別の用事があって土手を歩いた。それは夜だったから、そこから見える景色は真っ暗だった。 ヒモをしているときは、彼女の実家に転がりこんでいた。つまり、両親公認のヒモだった。今、思うと最低だななんて思う。ただ、お金をたかることはしなかった。自分のお金は自分でなんとかしていた。それは内緒の方法で。その内緒の方法で持っているお金で、パ
目を開ける夢を見た。 朝なのか外は明るくて、この季節にしては少し肌寒い。白い天井と壁、壁際にはパソコンの乗った机と本棚代わりに使っているカラーボックスが三つあった。部屋の中心にはゴミ箱が置いてあり、寝る前に飲んだ薬のゴミが入っているだけだった。 身体を半身だけでも起こすのも面倒なくらいだるかった。昨日のはお酒を飲んだわけでもないのに起きるのがかったるい。幸い今日は土曜日ということもあり、このまま寝てしまっても問題ないということをあまり働かない頭で回答を導きだす。念のため
どうも、ウサギノヴィッチです。 不条理に出てくる人、特に主人公は真面目で律儀ですよね。 ある一つの目標に向かってどんな災難や困難が降りかかっても、達成させようとするんですから。 たとえば、カフカの『変身』。毒虫になっても会社に行こうとする気持ちは変わらず持っていて、ベッドから這い上がろうとします。 今回読んだのは、本谷有希子の『いかにして私がピクニックシートを見るたび、くすりとしてしまうようになったか』です。 三時間以上、店の更衣室から出ない客が気になってしま
どうも、ウサギノヴィッチです。 今日は僕の解釈じゃないことを披露したいと思います。その作品が難しいとかじゃなくて、書いてるなにかをより知りたかったから、自分で調べてみました。 今回の作品は、多和田葉子の『盗み読み』です。 主人公の女性は、色々な職業の男性と会いますが、その会話はちぐはぐです。ただ、その会話には、実は意味があって、ジェンダーのことについて話しているのでした。 実は大学生のときにジェンダーについての講義を取っていて、A判定までもらったのに、実
どうも、ウサギノヴィッチです。 無限に読める本がこの世に存在するのであればあなたはどうしますか? 始まりもなく、終わりもない本がこの世に存在したら、あなたどうしますか? 今回読んだのは、ボルヘスの『砂の本』です。 無限に読める本を手に入れる男の話です。 僕は、自分の好みの本だったら、寝る間を惜しんでも読んでみたいとは思うのですが、自分の興味範囲外だったら、どうでもいいかなぁなんて思いますね。 今までのレビューを読んでいただければわかるのですが、幻想文
どうも、ウサギノヴィッチです。 令和になってから数日経ちますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回読んだのは、小島信夫の『アメリカン・スクール』なのですが、いかにも昭和、戦後直後というような感じのお話で、元号が変わった今お話するのは、なんだか自分ではくすぐったような、でも、ある種今だからこそこの作品なのかなというのもあるかなと思っています。 あらすじは、戦後直後。アメリカン・スクールに学校見学にいく教師達の話です。そこは日本でありながら、異国のようで、教師
どうも、ウサギノヴィッチです。 人は死の間際になってなにを考えるのか? 僕はきっとなにも考える隙もないまま死んでいくと思います。もし、健康に死んでいくとしたなら、なにを思うのだろうか? 今やっている同人活動のことは思い出すのだろうか? それよりも昔の嫌だった子供の頃も思い出すのだろうか? 未来のことだからわからない。でも、人は年を取り死に向かっていく。そして、それが本当に近づいたときに人はなにを思うのか? 今回読んだ作品で、僕は考えさせられた。 ル・クレジオの『
どうも、ウサギノヴィッチです。 みなさんは、文系でしたか? 理系でしたか? 僕はガチガチの文系でした。歴史が好きでした。ちなみに、現代文はそんなに好きではなかったです。教師から小説や評論の読み方を教わってもなんにも意味がないと思っていたし、人前で立って読まされるって言うのが嫌でした。 なのに、今は小説を書こうをしてるなんて、笑い話ですよね。しかも、小説だけじゃなくて、小説のレビューなんかも書いている。 いやぁ、人って何があるかわからないですね。 さて、なんで文