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期待を裏切らないと言うこと(ウサギノヴィッチ)

どうも、ウサギノヴィッチです。

今回の作品は、イギリスの作家であるトーマス・ハーディの『三人の見知らぬ客』です。

あらすじは、推して知るべし。
とある田舎の家でパーティーをしていたら、雨に濡れた一人の知らない男がやってくる。
そして、また次の男がやってくる。また、時間をおいてやってくる。
最後には、近所の監獄で死刑囚が逃げ出したという知らせがやってくる。
この男たちは一体何者なのだろうか?
一種のミステリーにも似た雰囲気を漂わせて、物語は進行していく。

さて、冒頭に推して知るべしと書きましたが、本当に物語はあらすじの通りに進みますが、この物語は謎を孕みながらも情景描写がたくさんあります。
舞台となる田舎の家についての周りの描写が、だいたい五ページにわたって書かれます。
ぼくはそれについては言ったのですが、少しうんざりした部分はあります。「早く、物語の先へと進め。三人の客が登場しろ」と。
この話は、だいたい六十ページに及ぶ短編ですが、三分の一は情景描写でした。

ある種のミステリーだと思ってネタバレは避けますが、この作品にはもちろん綺麗なトリックなどは存在しません。あるのは、あくまでも心情に訴えかけるような犯人(実際には犯人などというものは登場しません)の自白です。
それをどう受け取るかということになっています。
ぼくは、ミステリー的に読んだので、「あぁ、そういうことだったのね」と流して読んでしまいました。
もともと、作者であるハーディーは悲劇的な作品を書く作家と聞いています。
ただ、この結末が悲劇的かと言われれば、ぼくは悲劇だとは思いません。
それにこの物語の終わりのは、「後世にもこの話は語り継がれている」みたいな感じで終わっていて、一種の寓話として結んでいます。

それにしても、知らない人を家の中に招き入れるなんて、現代では考えられないことだと思います。ハーディーは十九世紀の作家で、時代的には知らない人でもそういうなことをするという文化があった時代だとが思います。ちょうど日本でもそんな感じだったと思います。
現代だったら、この物語は成立するのか? いや、田舎のポツンと建った一軒家の山荘ではそれは可能だと思いますが、そこにはハーディーよりも悲劇的な結末が待っているような気がします。時代性がそうさせているよう気がするのか、もしくは、ハーディーはあくまでソフトな感じで物語を進行させて書いたのか。
今回、ぼくはタイトルで選んだし、もちろん内容が知らない客が来てなにか波乱が起こることを想像をしました。
でも、そこまで悲惨なことは起きませんでした。だからと言って、それが肩透かしを食らったとは思いません。こういう話も存在するんだということも知ったしたし、文学として昇華することもできるのだと関心しました。
 いつも、「文学」で頭がいっぱいな人間にとっては息抜きになるような作品でした。

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