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5月4日 「デジタル名刺市場」はなぜ1社独占になったのか?

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための質問例はこちら。

→元々は紙の名刺の情報整理(スキャンした名刺情報をOCRと人力(!?)でデータ化する)からスタートした同社だが、なぜシェア8割を超える独占状態を作り出すことができ、その後も維持できているのだろうか?

日本名刺研究会が制定した「名刺の日」です。
May(メイ)四(し)で「めいし」の語呂合せ。

名刺。
感染症下でオンラインの面談が多くなり、交換する機会も減ったのではないでしょうか?

紙の名刺の市場規模データがないか調べてみたのですが、ちょっと見つかりませんでした。
代わりに矢野経済研究所の「一般印刷市場に関する調査」から国内の印刷市場規模推移をみるとやはりペーパレスなどから市場は縮小傾向であることがわかります(下図)。

さらに、2020年4〜5月については単月売上高が3割から5割減という印刷企業が多く、特にチラシやパンフレットなどの販促需要は激減しているとのこです。

矢野経済研究所では、2020年度について、リーマンショックと同程度の1割ほどの減少が予測されるが、新たな需要(注意喚起チラシなど)もあることから、前年度7.1%減の3兆1,940億円と予測しています(一昨年10月時点)。

飛び込み営業含む対面の営業活動は大幅に減少していることから、名刺の需要もかなり減少していることが予想されます。

この状況下でも伸びているのが、名刺管理サービスです。

シード・プランニングによると、この名刺管理サービス市場2013年の13.9億円から2015年32.6億円、2020年176.5億円と拡大しています(下図)。

最大手はシェア8割を超えるSansanで、2位がハンモック、3位がナレッジスイートとなっています(下図)。

Sansanは2020年の6月には「オンライン名刺」機能を自社のEightだけでなく、Microsoft Teamsに連携してリリースしています。

先月公表された直近のSansanの決算(2022年5月期第3四半期)をみてみましょう。

2021年6月から2022年2月までの9ヶ月の実績では、売上高147億円(前年同期比25.1%増)、経常利益7.5億円(前年同期比56.7%増)と大変な伸びとなっています(下表)。


同社は法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」と名刺で取り込んだ情報を活用するSNSのようなサービス「Eight」の2つが大きな柱になっていますが、その内訳は以下のようになっており、Sansan事業の割合が大きいことが分かります(下表)。


決算説明資料を見ていて印象的なのが、特にSansan事業での「ストック収入」の安定感です。直近ではその割合は実に94.7%となっていてほとんどがストック収入です(下図)。


ストック収入で怖いのは解約ですが、12ヶ月平均解約率はなんと0.65%と極低位(下図)で、いわゆるネガティブチャーン(解約による収入減より既存契約による収入増加が上回る)を実現しています。


さらに、契約数を順調に積み上げるだけでなく、契約あたりの月次売上も増やすことに成功しています(下図)。


→元々は紙の名刺の情報整理(スキャンした名刺情報をOCRと人力(!?)でデータ化する)からスタートしたサービスだが、この状況下で電子化した名刺そのものを提供するサービスまで提供することになった。今後、同社はどのようなサービスを提供することができるだろうか?それはどのような相乗効果があるだろうか?



最後までお読みいただきありがとうございました。

このような頭の体操ネタ、一昨年7月から続けています。
以下のマガジンにまとめていますので、よろしければご覧ください。


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