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わがままペットな彼女

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スペース・改行含めて300文字。一話につき一分で読めます。 ヘッダー画像はセトちゃんに描いてもらいました。
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#小説

『わがままペットな彼女』もくじ

【作品紹介】[フィクション・日常系]

只今同棲中の彼女はたぶんわがまま。
食いしん坊な為、食べ物で簡単に釣れます。
色々と考えている割に案外阿呆。
そのうえ無職になりまして。
そんな、わがままペットな彼女と僕の話。

スペース・改行含めて300文字。一話につき一分で読めます。

只今休載中。
目標:100話。

楽しんでもらえると嬉しいなあ。

ヘッダー画像 ➡️ 音宮セト

【もくじ】0

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01.ネコ型ロボットと主人公補正

 ふと彼女からメールが届いた。
「ネジの足りない出来損ないが優秀に見えてしまう主人公パワーはスゴいと思う」
 何があったのだろうか。こちらは仕事中なのだが。
「ちなみに、映画では毎回改心するイジメっ子は主人公補正によるもの? それともネコ型ロボットによる何か?」
 返信する間もなく立て続けに送られてくるメールは恐らく彼女の中の考えを忘れないためのメモ代わりなのだろう。
 それでも語尾がハテナマーク

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02.ほーむぺーじ

「ところで、ホームページを作ろうと思う」
 何がところでなのかは分からないが、脚本家を目指している彼女がホームページを作ろうとしているという話は前々から聞いていた。
「タグやらhtmlやらの簡単なものは分かるのだが、詳しくは分からないのだ。だから教えなさい」
「今すぐに」
 どうして彼女は命令口調なのだろうか。仕事中に送られてくるメールに、机が揺れる。
 おそらく、無理難題だという事を承知の上での

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03.微ホラーなゲーム

 最近彼女はスマホの長編テキストファンタジーゲームがお気に入りのようだ。
「料理上手で旅慣れてる、ドロシーの保護者な30代前半のオズが好きです」
 先ほど玄関先で見送ってくれた直後に届いたメール。
「おじさん呼ばわりされてショックを受けているオズが可愛いです。なので今すぐやりなさい」
 少なくとも僕は同性にも年上にも興味がない。
「さあ、今すぐダウンロードするのです。包丁を標準装備しているカカシも

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04.女性の日

「月の日になりましたので、記入をお願いします」
 僕は何故か女性の日を記入するスマホ用のアプリをダウンロードさせられ、記入している。
 けれど先日携帯会社を変えて林檎社からドロイド君に変更したばかりで、アプリをダウンロードしていなかった。
「今までのデータは引き継ぎできるのかな? ルナマスター」
「知るわけがなかろう」
 ルナマスターはアプリをマスターしていないらしい。
「引き継ぎ出来ないなら面倒

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05.荷物

「仕事で使う本をネットで買ったからね」
 そう伝えたのは何日前だったろうか。
 先程、商品が返品されたとメールが届いた。
「どういう事だろうか」
 問いただしたってバチは当たらないだろう。受け取ってくれと頼んであったのだから。
「郵便局の不在通知来てたよ」
「連絡したの?」
「不在通知何処にやったと?」
 彼女は掃除が非常に苦手で、床に物を置く癖がある。何度注意しても治らないこの癖のおかげで、紛失

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06.ダイエット

 お世辞にもスレンダーとはいえない彼女は、それでも付き合い始めた頃はそれなりに痩せていた。だが三年間で二十キログラムは増えている。
 日頃から"痩せろ"だとか"肉が……"だとか冗談半分で言い続けているため、多少なりとも気にはしているらしい。
 ベッドに横になっていると、リビングからバタバタとわざと足音を立てながら向かってきた。
「みゃ。みゃ。みゃ。みゃ」
「何の音?」
「足音だよ」
 彼女の足音は

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07.ガーゴイルの

「え、ガーゴイルの姫?」
 ゲームをしている時に話しかけられたせいで、聞き間違いをした。
 明らかに聞き間違いなのだが、一応言葉に出しておく。たまに聞き間違いでは無い事もあるからだ。
「え、なにそれ。気になる」
 どうやら違ったらしいが、何故か目を輝かせる。
「それはあれか? どういう事だ?」
 本当にどういう事だろう。何が言いたいのか今一分からない。
「ガーゴイルが守っている姫なのか、姫がガーゴ

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08.食べたいの?

「フィキディンディア」
 見覚えのない単語が携帯の画面に表示される。
「え?」
「フィキディンディアだよ」
 返信すると、再度同じ単語が表示された。仕方なくスマホのインターネットで調べてみる。休憩中で良かった。
 どうやらフィキディンディアとは、南イタリアで食べられているサボテンの実のようだ。
 中は真っ赤で種が沢山あり、その種ごと飲み込むのだそうだ。近頃は日本でも流通されているらしい。
「南イタ

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09.白いケーブル

 スマホを変えたため、ケーブルを新しく買わなければならなくなった。というのも、新しく買ったスマホの箱には充電スタンドは入っていたものの、ケーブルがなかったのだ。
「白くて良ければあるよ? 白いけど」
 何故か白を強調しながらケーブルを渡してきた。
「何のケーブル?」
「充電」
 それはそうでしょうとも。
「片側USBだけど、前のやつ変換だったよね? コンセントの」
 なんとなく言いたいことは分かっ

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10.充電

 借りたケーブルで早速充電した翌朝、スマホの充電残量は五十八%しかなかった。
 その日の夜、今度は自分が使ってみる。と言い、今まで使っていたケーブルを貸してくれた。
 朝、家を出た直後に届いたメールには、スクリーンショットの画像なのであろう。電子歌姫の壁紙が表示された。
「充電が!!」
 画像の下には短く文字が連なっている。
「やっぱりケーブル買わなきゃね」
 そう返信すると、全く関係のない文章が

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11.火傷

「指が痛い。ちょっと色変わってる」
 それは昨日フライパンの持ち手の根元、鉄の部分を握って火傷をした彼女からのメールだった。
 けれど恐らくそれだけの意味合いでは無いだろう。
「そうか。大丈夫?」
 心配をする言葉は必須だ。でなければ、何度でも同じ文章が送られてくる。用件はそのあとで良い。
「今日の夕飯は?」
「なうぃ」
 "ナウい"ではなく、"ない"の意味だ。想像はついていたので、コンビニに寄っ

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12.愛の為に

「オズが、君が望むなら全力で逃がしてやる。って!!」
 今日の夕飯を買ってドアを開けると、玄関まで出迎えた彼女がそう口走った。
「普段は飄々としているのに本気を出すと怖いんだぞ!! さらりとウインクしちゃうモテ男だぞ!!」
 以前から散々勧められては断り続けているゲームの話らしい。近頃この話ばかりしているので、そのゲームの事をこっそりと『ニート製造機』と呼んでいる。
「大人の余裕で守ってくれるぜ!

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13.貸して

「新しく買ったケーブルでも充電できないよ」
 最近充電ケーブルの調子が悪い。色々とケーブルを変えて試してみたのだがうまくいかず、先日新しく購入したケーブルも結局駄目だった。
「コンセントのやつが駄目なんじゃないかい?」
 自分のスマホから目を離さずに彼女が呟く。
「熱持ってるしね。これ、夜中に燃えたら怖いからやめておこうか」
「それが良いね。燃えたら困るね」
 困るどころの話ではないのだけど。
 

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