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She isのとっておきBOX

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WEBメディア「She is」の関連のもの、集めました。応募した原稿と、各月の特集まとめ記事をお届け。
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#小説

あるおひめさまのおはなし

あるおひめさまのおはなし

※こちらはWEBマガジン「She is」公募用に書いた小説です。テーマは「それぞれのヘルシー」。投稿は13回目。

むかしむかし、あるところにうつくしいおひめさまがいました。

ばらいろのほお、きんいろのかみ、しろいはだ。
とてもあかるく、みんなにあいされていました。

すくすくとせいちょうし、おひめさまが15さいになったとき。

おうさまがいいました。

「これからは、おうじょらしくふるまわない

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遥かなわたしたち

遥かなわたしたち

※こちらはWEBマガジン「She is」公募用に書いた小説です。テーマは「モテってなんだ?」。投稿は12回目。遂にひとまわり。

日曜日、実家の自分の部屋を整理していたら、学生時代のものがいろいろ見つかった。修学旅行のしおり、使っていたノート、返しそびれた本。もちろんその他もいっぱい。

その中に、1枚の手紙があった。

晴子はぺたんと床に座り封を開ける。

「佐竹先輩へ 」

そこから始まる文は

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いつまであなたと

いつまであなたと

「おかえりなさいませ。おじょうさま」
彼女の姿を認識して、玄関まで歩く。

「ただいまヨウル。ああー!疲れたー」
バッグを置いてすぐにその場に崩れ落ちた主人こと、時任ナツコ。
今日で3153回。私が出迎えた回数だ。

彼女の誕生日プレゼントとしてこの私、ヨウルことYWL-2016が時任家に来たのは12年前。それ以来、ずっと仕えている。
「見た目は可愛いぬいぐるみ☆だけど、家事労働もこなすしっかりも

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9兄弟の願い

9兄弟の願い

※こちらはWEBマガジン「She is」公募エッセイ用に書いた小説です。テーマは「お金と幸せの話」。投稿は10回目。

わたしたちは消えることを望まれている。
 そう知ったのはいつだっただろう。

多分、そんなにむかしのことではない。

長子が威厳のある口調で言った。「我々は今は生きながらえているけど、他の国の仲間はどんどん消えているらしいぞ」

第2子が高い声で驚く。「ええ!必要なくなっちゃ

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隣国にて

隣国にて

※こちらはWEBマガジン「She is」公募用に書いた小説です。

「マイヤ、今度出張ね!」

ボスにそう言われてから1か月後の水曜日、彼女は真新しくだだっ広い空港にいた。ゲートを出たところ—ここはもう隣国だ—に所在なく立ち、iphoneの画面をチェックする。とにかく今は、先方の担当者を待つしかない。
5分くらいして、背の高い男性がマイヤに向かって「Ms.カイラですか?」と聞いてきた。慌てて頷く。

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