【アパレル業界の話③】来たるべき恐慌は、業界の崩壊につながってしまう。

今回は、肌で感じる「アパレル業界の今」についてお話します。よければ駄文にお付き合いください。

「コロナ禍の話はもうたくさんだし、暗い話は耳にしたくないし、不安に思ってもしかたないし、とにかく明るく元気に生きていくしかない。」

よほどの資産家で無い限りそう思いざるを得ない状況の中でみんな生活しているのではないでしょうか。

欧米や日本では、緊急事態宣言が解除されて、人の行き交う街や店や電車の中これまでのような平穏な日常と同じ光景を目にして、ある意味ほっとしている人も少なくないでしょう。

まったくとは言わないまでも以前と同じような生活に戻りつつあることにひとまず安心していると思います。

しかし、飲食、宿泊、アパレル業界の現実はどんどん過酷な状況になっています。

中規模アパレルの知り合いからも希望退職や解雇の言葉を耳にするようになりました。年齢やキャリアがある人ほど厳しい状況だそうです。その中には最近まで堅調だったブランドもあります。解除後の売上においても回復するには、程遠いらしく万が一第二波がきて自粛となった場合は「もうもたないのでは」と感じて不安になっている人もいます。

個人的には、今のアパレル業界については悲観的です。最悪のシナリオも考えておかなければならないでしょう。短期的にはファッションビジネスそのものが成立しない恐れもあると思っています。一部の富裕層や公務員を除く会社員の平均収入は想定以上に下がってしまう可能性が高いでしょう。洋服などを購入する金銭的余裕、精神的欲求はしぼんでいくことになるのではないでしょうか。

アパレル業界においては、過剰生産や百貨店依存、ファッションテックの取り組みなどの課題を先延ばしにしたツケがまわって、コロナ禍で生き延びることができないところまで追い込まれているので、半分以下になることは当然なのかもしれません。

そうなると多くのお店が閉鎖の憂き目にあい、そこで働く人の職も奪われます。アパレル販売員の人はつぶしが効かない職業でもあるので急に転職することになった時には苦労するのは間違いありません。また、倒産の連鎖などで社会が混乱してしまうことになった場合は、失業期間も長くなってしまいます。そこは辛いですが、現実に向き合い、様々なシナリオを想定して備えておく必要があることは覚悟しておかなければならないでしょう。

自分が今の仕事を失った時、どのようにするのか前もって考えておくことがとても大事だと思います。

ではどのように考えたらよいのか。

以前ファッションとは、洋服だけでなくライフスタイルそのものだという記事を投稿しました。

【洋服屋の未来④】ファッションと言えば洋服と考えているならば業界に未来はない。|クスオのフクオ @kusuonofukuo #note https://note.com/kusuofukuo/n/n86fe9e0666a3

アパレル人は、コロナ禍をきっかけに、洋服だけでなく、生活する場所、建物、食事といったことにまで関心を広げて、自分が本当に携わりたい仕事を再考するべきではないかと思います。

自分にとってふさわしい生活や日常は、「What? Where? Who?」
世の中の体裁や評価は抜きに自分の理想がどこにあるのか確認しなければなりません。あなたなりのファッショナブルな生活は一体どんなものなのかを。

多くの知識人が歴史に学ぶ必要があることを語っていて、特にスペイン風邪の実例に沿って今後の備えをするように警鐘を鳴らしています。実例とは、つまりスペイン風邪は第ニ波のダメージのほうが大きかったこと。さらに、その後に恐慌が起き、地震が起きて世界が混乱した歴史があるということです。煽っているようにも感じなくはないですが、現実的に考えると色々な備えをするに越したことはないと思います。

アパレル業界全体にその緊張感はあるでしょうか?現実的に生き残るためには、店舗の閉鎖だけでなく吸収合併、M&Aなどを早急にしなければ、キャッシュがもたないと思います。また、製造や物流が悪化し今秋冬からどんどん店頭商品が少なくなるので、セカンドハンド展開をすることすら考えないとまずい状況になるでしょう。果たして保守的、自己中心的な既存アパレル企業ができるでしょうか?

私自身、恐慌なんて来るはずがないとどこかでは思いたい自分がいます。コロナ禍以前のように食べることだけでなく、ファッションという文化を満喫し続けたいし、多くの人と共有して楽しみたいですがここ数年はそんな日常が簡単に続けられない可能性が高まっていることに危機感を感じてならない今日この頃です。

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