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好きと言い訳


言い訳をしている


その時点で

自分の中の答えは出ているのに。



あいつと居たら、すぐ衝突するから。

あいつは、わがままだから。

あいつとは、すれ違う運命だから。


あいつは、あいつは、あいつは。



あいつは、意外と兄貴肌で


面倒見が良くて、

たまにびっくりするくらい優しくて

実は将来のことを真剣に考えていて

誰より熱くて、

濁りのない目で「好きだ」と伝えてくれて。





だけど、その真っ直ぐさに

向き合えなかったのは私で。


なのに、永遠に言い訳を続ける。


あいつは、私の手の届かないところにいるはずの人だったのに

安安と降りてこないでよ。


ずっとずっと、手の届かない人でいてよ。


一緒に過ごした記憶なんか欲しくなかったのに。


一緒に過ごした60日間が、


甘くて切なくてどうしようもなくて。



異国の地に戻ってきた今、私のことを苦しめる。



あいつの横で、ずっと朗らかに過ごす未来は思い描けなくて。



思い描くことが怖くて。

努力をする前に


逃げてきてしまった。

異国の地に逃げてしまったのは私なのに、

何度も

何度逃げても、

会いたくなることはわかっていたのに、



会いたくて会いたくて、たまらないのに。



あいつの声が聴きたくて

あいつのほっぺたに触れたくて

あいつの唇の温度が思い出せなくなってきて


また今日も、

素直になれない。


素直になんかなってやらない。



時差を言い訳にして、LINEの送信ボタンは押さないのだ。


異国の地で

異国の酒で

少し飲みすぎてしまった日だけ、素直に送信ボタンを押すのだ。


“また、酔ってんのかよ。”


文面があいつの声で脳内再生されて

自虐の笑いが自分から漏れて


同時に、切なさが目からこぼれ落ちても

これは自分の弱さの印。


私はこの地で

あいつのことを思わないフリをして

生きていくのだ。



強く生きるフリをするのだ。


そんな私を

“くだらない”って、鼻で笑ってほしい。


笑い飛ばして、抱きしめてほしい。


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