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暮らしているつづき。

夢でみる。草原での風。ちょっとゆるんだ、足首のサテンのリボンを気にしている。アチチュードは完璧で。伸び続ける筋肉、引き上げつづける重心、それを受けたかすかな重みを載せて、爪先だけが接地する感覚が懐かしく快かった。指先と地面と空間が引っ張り合って自由になっているような生の喜びがいっぱいにからだをみたして、はみでて、音楽と結婚していた。ボンマリアージュ。草原で森下洋子もかくや。

 夢から醒めて。じっさいにはリズムになんかうっかりのっちゃったりすると激痛が走るからだ。下肢じゅう全体にみちるのは悪魔の痛み。孫悟空の輪。あれはおしゃかさまによるものだったか。

 でも光の痛みBY吉増剛三(ちがったかな)。光はそれがでているところから一瞬遅れて人が知覚しさらに0コンマ何秒遅れてああ光だ、と隣の誰かに伝える、そのゼロコンマ何秒の断絶。わたしたちは永遠にひとつになれないってかんじ。なんて大げさか。音楽から踊るまでの一瞬の断絶。

でもよく考えればその音楽だって誰かが作って長い間、そこにあるものとして顕現するまでにかかった時間や手間なんかあるわけで。わたしたちはみな断絶と断絶に傷ついて生きている。暮らしている。暮らしているつづき。




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*アチチュードはクラッシクバレエのポーズの一つ。知ってるよという方は読み流してください。

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