現代俳句 作品集 29 〜雪〜
「 雪 」
~現代俳句〜
目に浮かぶ旅びとひとり芭蕉忌よ
陽の椅子にふかくもたれて十一月
あおぐたび山痩せてゆく木枯しか
じぶんまでばくぜんとして冬霧よ
水鳥は見あげたさきに飛び立つか
この星の変化のなかよ落ち葉焚き
立つけむりゆうぞらになれ落葉焚
大根煮湯気はふはふとあたたまれ
鳴くほどに星またたくかふゆの虫
つぎつぎと死のちんもくよ冬の虫
◇
鉄道員ひとりひとりに降るゆきよ
あおぐ身に咲きつづけてよ雪の花
あおぐ嶺が風吹き下ろす朝焚き火
オートバイ冬夕焼けが染めて野よ
手の餌にくちばしいくつふゆの鳩
えだひろげ空き家の木々よ帰り花
マラソンのいちまんにんの白息よ
死見つめた眼鏡のこして波郷の忌
ゆきだるま本土見つめて立つ浜よ
点々とおおうなばらをイルカ跳ぶ
◇
かがやきに降りだすゆきの金閣よ
しずかさに降りだすゆきの銀閣よ
のぞきこむかおうつるかに龍の玉
さわぎだす路上の落ち葉つむじ風
ふりあおぐ雲のたかさを降る雪よ
市役所よエレベーターのゆかに雪
雪だるまは仮りのすがたか日の光
夜の底を燃え立たせてよ火吹き棒
ひとつずつ名がかがやいて冬の星
おそるべき未知ひろがって冬銀河
11月12日〜11月27日
いつも
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ありがとうございます
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