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現代俳句 作品集 16 〜登山杖〜


「 登山杖 」
~現代俳句〜

ひとの世よいつからとなく花の宴

帰郷してじかんたっぷり花種蒔く

雪残る嶺々のひとつよいしづち山

たがやすか夕日のなかに影ひとつ

ぜっぺきよしぶきをそらに春の滝

うららかよどこあるいても草千里

春の靴行くあてもなくあるきだす

菜の花よ海ともどもにあかるい日

通天閣どこから見てもうららかよ

屋じょうをはなれはなれて雲に鳥

アパートよ窓ひとつずつ四月の灯

せんそうがせんそうを呼び落ち椿

屋上よなおたかく吹くしゃぼん玉

ゴールデンウィークと紅茶一杯と

沖よりもとおくに雲よ夏はじまる

山頂よどこから見てもこいのぼり

あおぐたび影きらめかす夏つばめ

新樹光野のはらに立ついっぽんが

瀬戸のかぜ満帆にしてヨット行く

真夜なかがちかづいてくる遠雷よ

たかだかとわきあがってよ楠若葉

うしろ手をつけば富士見え風薫る

そのうえにゆうひをのせて噴水よ

ちぎる穂の果てのはてまで麦の秋

世も人も変わりかわらず夏まつり

帆おろしてならぶ帆ばしら大夕焼

戦争よとおのいてゆくせみしぐれ

げんだいを白黒にしてサングラス

登山杖かつかつと行くおおぞらよ

珈琲よ朝いちばんのキャンプの火


4月26日〜5月10日


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