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現代俳句 作品集 48 〜とんぼ〜


「 とんぼ 」
~現代俳句〜

ちいささよ夜ぞらあかるむ望の月


ねんねんにあかるくみえて名月よ


山やまをぐるりとうつすつゆの玉


大仏のむねのたかさをとんぼとぶ


五重の塔かげそのものの十六夜よ


仰ぐみなうしろすがたの十六夜よ


よその家のはしらにもたれ寝待月


しんしんとせまりくる絵よ美術展


ビルの影また富士の影あきのくれ


東京よ夜のはしばしにむしのこえ

まっしろにかがやく露の仁和寺よ


日をのせて東寺の塔よあきのくれ


鑑真の目にまんげつのあかるさよ


さおさして舟も一葉か散るやなぎ


両岸のやなぎ散る日よふねのうえ


さいげつがゆたかにしだれ散る柳


あしもとよときおり秋のつむじ風


長良川千々のひかりのとんぼとぶ


跳びとんであの瀬この瀬に落鮎よ


ただなかにたたずんでこそ星月夜

ゆく秋を味わいつつよコーヒー店


まちじゅうに紙垂のしろさよ秋祭


空でふと思案しながらとんぼとぶ


なんどでもほろぶ地球の露けさよ


ゆく人ようしろすがたは秋のくれ


暮れ残るもののひとつよ蜻蛉とぶ


あかとんぼ西の空ごと暮れゆくか


なみおとが暮れのこったか秋の浜


鳴きないて今がうつくしのこる虫


こおろぎよふるさとという夜の闇


10月01日〜10月13日


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