現代俳句 作品集 ４０ 〜噴水〜

「 噴水 」
～現代俳句〜

風のおとあたまにのせて麦わら帽

降り立って黄色い島よなつみかん

なつしおのうず巻きやまず海に穴

航跡のせとないかいよなつの暮れ

はしりだすひとかたまりの船虫よ

繁華街灯したたらせて梅雨に入る

飲みくだす喉のちからよ黒ビール

生き死にの音ひびかせて蠅たたく

鳴りひびくおと見えるかに風鈴よ

百年でみなわすれられほたるの夜

◇

山みちは雲のただなかさみだれよ

日の光りさしこんで谷ほととぎす

いただきに堂おいて山したたるか

頂じょうへそしてふもとへ登山杖

飛びたってときながれだす白鷺よ

そらにまでこころひろがる大夏野

吹きおこるかぜからかぜへ揚羽蝶

観音の手にはじけつつさみだれよ

またひとりひらく日傘よ晶子の忌

実かかげてパイナップルよ畑に空

◇

広島とせかいのそらにふんすいよ

あしもとの鳩はばたいて涼しさよ

紫陽花に雨はげしいぞコーヒー店

うれしさをざくざくくずすかき氷

おとこ手に紺清しくてハンカチよ

ざわめいて木もれ日のまど夏料理

咲き群れて同じ背丈よかきつばた

もわもわとあたま現せかたつむり

晩年のじぶんにひびくくさぶえよ

列車とははしるあかりよ梅雨の夜

０５月２７日〜０６月１１日

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