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短歌ヨミタイ

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ここ数年、「短歌」を詠む人も、読む人も増えているのを、うっすらと感じていた。あれ? 短歌って五七五七七がルールじゃないの? 俳句と違って季語もいらないの? こんなに自由なの? だ…
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短歌を詠めば今日から「歌人」!? 素人4人の五七五七七、その出来栄えは?

初めての「吟行会」で、短歌を詠むこととなった4人の短歌素人たち。お題の「和菓子」をいただきながら、四者四様のスタイルで1首ずつ完成させていく。揃ったところで、これまた初めての「選評」だ。 果たして優勝賞品の「57577Tシャツ」をゲットするのは誰か!? なにより、短歌の出来映えやいかに? 持ち時間は20分、各々どんな短歌ができあがる?短歌の鑑賞法、作り方、先生について……短時間でいろいろと吸収をしてきて、いよいよ自分たちが短歌を詠むターンとなった短歌素人の大人4人。この日、

いい短歌を詠むために必要なのはテクニック? いいえ「かっこ悪いところをさらけ出せるか」です!

前回、佐佐木頼綱先生から初心者向けの「短歌とは?」の手ほどきを受け、「それでは短歌を詠んでみましょう」となった素人4人組。どうやら短歌界には「吟行」という歌の作り方があるらしく、その方法にトライしてみることに。 というわけで、今回の記事はいよいよ「短歌を詠みました!」となるはずが……軽い気持ちで聞いてみた頼綱先生の「これまで」も興味深すぎて、すっかり寄り道。五七五七七は、はたしていつ作れるのか……⁉ 気になって仕方ないので、先生について深堀りしてみた頼綱先生の巧みなリードに

親子五代で歌人!? すごい歌人さんに短歌の「いろは」から教えてもらった!

文学フリマで詠み手と読み手が交差する短歌熱を実感し、ムクムクと湧き上がってきたのが「自分でも短歌をつくってみたい」という気持ち。とはいえ、記憶の糸をたぐっていっても、最後に「五、七、五、七、七」と指折り数えたのは、たぶん中学生のとき。つまり30年以上は短歌とはご無沙汰で、「そもそも短歌って何?」というレベル。 これはちょっと、取材を口実に先生から教わりたい! と思っていたら、「親子五代で歌人」という超名家の歌人さんの協力を得ることに成功。 こちら、ド素人ですけど、大丈夫かな?

「短歌」、想像以上に流行っていた! 文学フリマ東京の熱気にあてられる

ここ数年、「短歌」を詠む人も、読む人も増えているのを、うっすらと感じていた。 大型書店の一角で、なんだか素敵な装丁の歌集がたくさん面陳されているな……。 そういえば、テレビの情報番組で短歌の特集やっていたな……。 SNSで、誰かの書いた短歌に、そこから受けた心情を歌で返す「返歌」のやりとりを見かけたこともあったな……。でも、短歌だよ。はるか昔、小中学生時代に国語の教材の端っこに載っていた、この感じだよ。 本当に流行っているの? 誰が新たに詠んでいるの? 短歌。そんな疑問の答

「カフェの聖地」で好きなコーヒーを再確認する

 人形町から清澄白河に引越したのは3年前のことだ。両国橋から新大橋、清洲橋など連なる橋に魅せられて散歩を繰り返すうちに、隅田川を渡った土地に日に日に興味を覚え、吸い寄せられるように転居を決めたのだった。  そこは木場公園の脇、仙台堀川のほとりに建つ賃貸マンションの8階で、南向きのベランダからは公園の南北をつなぐ大きな吊橋が見える。はるか向こうの空に分刻みで羽田空港を飛び立つ飛行機が小さく見えて、それを眺めながら飲む酒が美味い。  東京都現代美術館まで徒歩3分という距離もあ

6月の全短歌①濡れてもいいシャツ

1 心まで染み込んでいく雨粒で濡れてもいいシャツ着ている六月 2 手裏剣にアイラブユーと書くようなラブレターを静かに燃やす 3 窓のない部屋をリフォームしてからは俯いてても明るくなった 4 凪いでいる風に漂うアメンボが軽いオールで海原をゆく 5 好きな色知ったときから世界中その色になる恋の魔法で 6 永遠はないけどずっと浸かってる幸せなる温度の中に 7 野の花と虫の音たちのさよならであのような色、夕張メロン 8 坂道を転がるたびに削られて今は優しい光の原石 9

#7 ホスト万葉集/ホスト歌会がまもなく始まるよーん

こちらの本は見かけたことがあるだろうか、、、 そう、こちらは見てお分かりの通りホスト万葉集だ 我々スマッパグループのホストが読んだホストに関する短歌、いわゆる「ホスト短歌」を 短歌研究社、講談社さんが歌集に。 そして選者にはあの、かの有名な俵万智さんも! 我々スマッパグループはこんなところにも身を乗り出しているのである。すごいっ これは数年前からの活動であるが、毎月歌会を開催し、そこに向けて歌を集めた上 出来の良いものが本に載る、という運びである。 ん⁇歌会とはな

「事実短歌」2024年5月6日の日記

・今日は ・なんもないので、ない。 ・短歌の本を読んでいた。

【作者解説】短歌20首連作「ぺらぺらなおでん」

本記事を書くことにした経緯はこちら→ 柴田葵(私)の歌集『母の愛、僕のラブ』(書肆侃侃房 2019年)の冒頭に収録されているのが、短歌20首連作「ぺらぺらなおでん」だ。Amazonの試し読みから20首すべて読める。 これは第2回石井僚一短歌賞に応募し、次席(2位)になったものだ。なお、第1回石井僚一短歌賞に応募したのが、同歌集に収録されている別の連作「より良い世界」である。第1回石井賞は「20首以下」というめずらしい規定だったため、一首とでもどうとでも解釈できる「うん」だ

短歌はポケットに入るし教えてくれる

雨降りの土曜日。読みおわった本を本棚に戻すとき、笹井宏之の短歌を思い出す。 そうだ。だから何度でも読みたい本しか本棚に置きたくないんだった。待たれている意識。私のことを待っているだれか。 ……雨の日にだれかを待つのっていやだろうな。 また読むからねと思う。 喉を潤すためにコップに水を注ぐ。その瞬間にも笹井宏之の歌がやって来た。 実際に水を注ぎながらこの歌を口ずさむと、時系列がぐらりと揺らいで一瞬とまどう。無意識で行えるはずのわけもない日常の動作に、余計なノイズが入る

ところで、愛ってなんですか? [第4回]

日曜日は、空が明るくなり始めたらBARを開けることにしている。朝はいい。姿の見えない鳥が鳴いていたり、昨日の続きを酔っている人がいたりする。人と世界、人と人との距離が、少しだけ離れている感じ。魂もまた、躰からちょっと遠くに行ってしまっているみたいだ。そんなとき、猫も人間も伸びをする。遊離した魂を元の場所に詰め直すみたいな静かな作業だ。 薄いひかりが積もったカウンターを眺めていると、からんとベルを鳴らしながら扉が開いた。濃紺のスーツの女性が淡い太陽を背に短く会釈をする。真新し

書評|『詩と散策』(ハン・ジョンウォン著/橋本智保訳)(書肆侃侃房)

〈散策が詩になるとき〉 冬の真っ白い雪と幻想的な光、果物を乗せたトラックと猫、寡黙な川――散策とは、このような散らばりのなかにある存在を拾い集めることかもしれない。それが詩人によるものであれば、散策もまた詩になる。『詩と散策』は、散歩を愛した詩人ハン・ジョンウォンの散文をまとめたエッセイ集だ。 「私が冬を愛した理由は百個ほどあるのだが」とはじまるこのエッセイ集は、散策を通じて、その日常に散らばる「詩の欠片」を拾い集めていくさまを描く。たとえば、冬の雪景から、笑い声が聞こえる

限界OLクソ短歌(2023/10)

森田千春評 リカルド・アドルフォ『死んでから俺にはいろんなことがあった』(木下眞穂訳、書肆侃侃房)

疎外感を抱えて生きる移民家族の、切なくもユーモラスな珍道中――世界共通の深淵なテーマを読者に問いかけてくるような作品 森田千春 死んでから俺にはいろんなことがあった リカルド・アドルフォ 著、木下眞穂 訳 書肆侃侃房 ■主人公の男は母国で郵便配達の仕事に就いていたが、ある事件を起こし、妻と幼児と三人で外国に逃亡。現在は不法滞在の身で求職中。掃除婦として生活を支える妻の気晴らしにと家族で散歩に出かけた日曜日、帰路に乗った地下鉄の車両故障をきっかけに坂道を転がるように状況が急