Kuru-Setsu

車のデザインも街の風景の一部です。車のデザイン語らせてくださいな。皆様の車を見る目線が…

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車のデザインも街の風景の一部です。車のデザイン語らせてくださいな。皆様の車を見る目線がちょっと変化して、ちょっとあたたかくなってくれたら嬉しい自動車設計者です。ペンを操るカーデザイナーになれなかったけれど、物理や数学を操る方のデザイナーになったのです。自動車に愛を込めて。

最近の記事

ホンダフィットのデザイン解析#1 〜それは全てを包む◯(マル)〜

目次 歴代ホンダフィットのデザイン ベストセラー20年超! マルを描くのはとっても難しい 歴代ホンダフィットのデザイン  ホンダフィットは初代から一貫してコンパクトなのに広い、走りがいい。といったコンパクトなのに○○という、相反する魅力を数々実現させて今のブランド力が培われました。  一目でフィットとわかる印象的なデザインです。また使ってみると分かる高い性能に納得してより一層デザインの意図を、説得力を持って認識させられる好循環を生みます。それはユーザーにとって所有する意味

    • SUVのデザイン解析#3 〜SUVは成熟の証?それとも原点?

      もくじ CX-3はケイトモス!? SUVは成熟の証?原理に立ち返った姿? 後記 CX-3はケイトモス!? 前回はSUVの持つ『大きさ』が目撃者の視線を制限して、見せたい姿の表現に一役を買っていると表現しました。またその手法はスーパーモデルの長い手足と背丈とも重ねて考えることができるともまとめました。 モデルの長い手足と身長は関節間の距離を十分確保します。従ってデザインの特徴や遊びを難なく収めることを可能にしています。腕が短いと肘と手首と手先の動きが近く。例えば、袖の皺と袖の

      • SUVのデザイン解析#2 〜SUVはスーパーモデル!?〜

        もくじ SUVはなぜ“大きい”? 見せたい思惑と見えてしまう事実 見せ方を制限 SUVはスーパーモデル? SUVはなぜ“大きい”?  前回は3面図が見せる車のかたち。それは実物の記憶との違いについてお話ししました。過去の記事にも書きましたが、車は絶対的に人よりも大きく、故に一目でそのものの形を捉えるのは困難です。目についた断続する情報をつなぎ合わせて頭の中で再構築を図るのですが、それは見たいものと目に入ってくるものに支配されています。すなわち一目でその全容が分かる手元の図

        • SUVのデザイン解析#1 〜3面図は免許証の写真!?〜

           いくつか流行りのSUV車の3面図を見ると、エンジンとキャビンの2個の素直な四角い箱の繋がりが透けて見えてきます。3面図とは対象物を直角に正面(後ろ)、横と上空からの画角でみた状態で、多くが外寸を記入するために起こす図面になります。カタログの仕様諸元の下に小さく載せられていることがあります。ものづくりでは3面を見ればそのものの寸法をほぼカバーでき、そこから具体的な記述を足していきます。自動車の場合は運転席と助手席の間を分つ様に中心線が引けて左右対称です。したがって側面図は1面

        ホンダフィットのデザイン解析#1 〜それは全てを包む◯(マル)〜

          トヨタシエンタのデザイン解析#3〜あの歌舞伎顔にはとんでもない計算がある!?〜

          目次 はじめに 後ろ姿はデザインの総まとめ!? 後ろにもあるあのガーニッシュ 車の構造が発信する“強さ”とは? シエンタデザインの技③:あの隈取りメイクの驚くべき効果!? シエンタのデザインの技④:前後ガーニッシュのスーパーコンボ お疲れ様でした。あなたは偉大です。 はじめに  トヨタシエンタについてのデザイン。前回からだいぶ時間が経ってしまいましたが今回が最終章。今回もシエンタの魅力をデザインから解いていきます。愛を込めて。ややこしいことに、シリーズ記事の途中でシエンタは

          トヨタシエンタのデザイン解析#3〜あの歌舞伎顔にはとんでもない計算がある!?〜

          トヨタシエンタのデザイン解析#2〜歌舞伎の隈取り風フェイスの意図とは?〜

          目次 箱じゃないパズルの様なデザイン 覚悟の隈取りフェイス シエンタデザインの技②:見え隠れ!!どっしり感の印象操作 嫌いも好きの一部 箱じゃないパズルの様なデザイン  前回現行シエンタのデザイン上の特徴の一つである、ブラックアウトされたAピラーとルーフの関係を解きました。今回も引き続きシエンタのデザインの特徴を一つずつ紐解いていきたいと思います。デザイン上の“技”を順次記述していくのですが、改めて見るシエンタのデザインはパズルの様です。塊をガツンと表現するVWのミニバンの

          トヨタシエンタのデザイン解析#2〜歌舞伎の隈取り風フェイスの意図とは?〜

          トヨタシエンタのデザイン解析#1〜シエンタのアレはスポーツカーのそれ!?〜

          もくじ 誇るべきジャパニーズデザイン ふさわしい重量感 シエンタのデザインの技①:シエンタのアレはスポーツカーのそれ!? 誇るべきジャパニーズデザイン  トヨタシエンタをネットで検索すると結構辛辣な言葉を見かけることがあります。それはデザインに対することが大半です。ちょっとシエンタに同情してしまいます。多くの方は、シエンタは家族向けの車だと思うでしょう。誰か個人ではなく家族といった集合した状態の何かを運ぶ車がシエンタです。  車の印象を決めるとき、実は個人が運転したいか、お

          トヨタシエンタのデザイン解析#1〜シエンタのアレはスポーツカーのそれ!?〜

          [番外編]トヨタシエンタはキムカーダシアン

          もくじ キムとシエンタ キムカーダシアン159㎝ シエンタ1.5L キムとシエンタのきょうだい キムとシエンタ  キムカーダシアンという人物を皆さんご存知ですか。知らない方はまずグーグルで検索してください。アメリカのセレブ女性です。おそらく数多くのカラフルなゴシップ記事が、ハイブランドの広告を引き連れて画面に現れるはずです。  一方でトヨタシエンタの方は知っている人は多いと思います。けれど数少ない私の記事の読者はどちらもそれほど興味が無い可能性があります。それでもどうか読み

          [番外編]トヨタシエンタはキムカーダシアン

          ボルボ850エステートのデザイン解析#3〜あの巨大なテールランプのメッセージは何??

          目次 そびえたつ大鳥居の様なテールランプ ライトは構造ではなく構成物 クライマックスで大どんでん返し そびえたつ大鳥居の様なテールランプ  皆さんボルボと聞けば縦型のテールランプを思い起こす人は多いでしょう。今回でボルボ850の記事は最終回になりますが、満を持してその印象的なデザインに触れます。 広大な荷室のドアを両脇から支える様にそそり立つそれは、さながら艶のある朱色に染められた神社の鳥居のよう。後続に付けばその存在感は常に意識されます。よくよく考えればこんなに巨大である

          ボルボ850エステートのデザイン解析#3〜あの巨大なテールランプのメッセージは何??

          ボルボ850エステートのデザイン解析#2〜タランティーノが作ったワゴン??

          目次 持ちつ持たれつなデザイン ドイツワゴン群とボルボの違い 黒く塗り忘れたドアピラー?いやいや。。 持ちつ持たれつなデザイン  前回まで、失礼ながらボルボ850のデザイン上で『チグハグ』な点を挙げてきました。ここで誤解してもらいたくないのはそれでボルボ850がデザイン上ダメとは言うつもりは無いです。デザインオタクを自認しつつも、とりわけ意識はしていなかったその存在は目にしていて、ボルボ史の中でマイルストーンになっていることは知っていました。ただ遠巻きに見えていた佇まいや雰

          ボルボ850エステートのデザイン解析#2〜タランティーノが作ったワゴン??

          ボルボ850エステートのデザイン解析#1〜これってパルプ・フィクション!??〜

          目次 車をなぜ好きになる? 働く車 ステーションワゴン車はやっぱり魅力的?? ボルボ850は『パルプ・フィクション』!? 計算?『チグハグなデザイン』#1 計算?『チグハグなデザイン』#2 車をなぜ好きになる?  皆さんが車を好きになったきっかけは何でしょう。大半の方は幼少期に既に好きだった。記憶する前から車を好んでいたことを聞いていた。など、詳細は大雑把に本能としているのではないでしょうか。私は結構はっきり覚えています。田舎に住んでいるのにも関わらず家に父の車一台しか無か

          ボルボ850エステートのデザイン解析#1〜これってパルプ・フィクション!??〜

          マツダ3のデザイン解析#4  〜隠れた”バンプライン”の効果〜

          目次 バンプライン=陰デザイン バンプラインの機能:小さく低く 光の轍 台形シルエットは絶対に譲れない!! バンプライン=陰デザイン  今回は前回の陽デザインに対する陰デザインについてです。文字通り隠れて見えない外観要素を指すことになりますが、それはマツダ3のルーフとサイドドアの間にひっそり流れるように備わっています。図を見てもらうとわかりますが、底の浅い半円の凹みが緩やかにリアに向かって流れています。サイドウインドーの壁面のすぐ上に、ルーフの頂点(全高)から若干低い位置に

          マツダ3のデザイン解析#4  〜隠れた”バンプライン”の効果〜

          マツダ3のデザイン解析#3  〜あのカッコイイは人間の危機回避能力に関係する?〜

          もくじ Mazda3はなんで”カッコイイ”? 社会自動車デザイン論における“陽デザイン” 人間の危機回避のための情報発信(デザイン) Mazda3はなんで”カッコイイ”?  質問ですが、あの大胆だけれども説得力のあるスタイリングを実現させている要は何だと思いますか。 多くの人が、サイドドア下部を大きくえぐる様に凹ませた個所が、ボデー全体を引き締めて個性を演出していると回答するでしょう。それが魂動デザインの真骨頂。そのえぐりが引き立てるのは、リアタイヤの膨らみを滑らかにつな

          マツダ3のデザイン解析#3  〜あのカッコイイは人間の危機回避能力に関係する?〜

          マツダ3のデザイン解析#2 中間管理職(マツダ3)はつらいよ

          もくじ 中間管理職はつらいよ マツダデザインの人事革新 中間管理職はつらいよ  前回で述べたように、マツダ3が属するcクラスのカテゴリーのハッチバックデザインというのは、薄く伸びた鼻先に対して実用性を持たせた膨らんだキャビンのバランスを取るのが難しいと思われます。特にセダンと骨格や構成を共有する車種のそれは顕著で、斜め前から見た場合、バッサリ切り落とされたリアから醸し出される寸詰まり感。従って比較して大きく見えてしまうフロントの重さ。もしくはそれを過剰に対策(デザイン)され

          マツダ3のデザイン解析#2 中間管理職(マツダ3)はつらいよ

          マツダ3のデザイン解析#1

          フェンダーの概念を消したマツダ3  現行マツダ3が市販された際に、モーターショーと全く同じ装いで登場したのはびっくりしました。市場にはそれなりのデザインの秩序が存在しており、大抵の車は自制するかのように調整が図られて登場するものですが、マツダ3に関してはその関所を突き破って私たちにその姿を見せてくれました。  リアタイヤの踏ん張りを、キャビン後ろ全部のマスを使って表現されているようなデザイン。通常よく見るフェンダー部分の膨らみだけでなく、マツダ3の場合はボディー後半のすべ

          マツダ3のデザイン解析#1

          【トヨタのセダンのデザイン】クラウンについて#2 〜ピンクのクラウンアスリート(後編)〜

          もくじ セダン・カタチ・じろじろ 3つの箱のピタゴラス クラウンの冒険心?いや、理性による緻密な計算だった クラウンの今後 セダン・カタチ・じろじろ  『プロポーションがいいもの』はそれだけで魅力であり、ひらめきを持って喜びを与えてくれます。一目でその全容が掴めるものは、存在の目的がはっきり潔い所が魅力です。一方で捉えにくいものも、視点を変えては変化する装いにそれ独自の規則を持った関係を発見さえすれば、機械の存在を超えた愛着を覚える事でしょう。  セダンの高さは大体が150

          【トヨタのセダンのデザイン】クラウンについて#2 〜ピンクのクラウンアスリート(後編)〜