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弱腰駐妻 アメリカでクレーマーになる

わたしはアメリカという国を舐めていた。
例えスーパーの品物がFIFO(First in First out)で並んでいなくても、賞味期限切れの商品が普通に陳列されていても、レジ打ちの人が商品名がわからず客のわたしに「これ何?」と聞いてきても。
日々色んな部分で大らかだなと感じるものの、まだどこかで「ちゃんとしている国だ」という幻想を抱いていたのだ。

今、ひとつ困っていることがある。
SSN(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)が一向に取得出来ないのだ。SSNとは日本でいうマイナンバーのようなもの。渡米したらまず取得しましょうね、でおなじみのやつだ。通常申請から3週間程度で取得できると言われているが、申請してから4か月が経つ。取得の目途はまだ立たない。

すべてはコロナのせい!本当にそう?

4か月に渡るSSO(ソーシャル・セキュリティ・オフィス)とのやりとりを通じて、日本人とアメリカ人の「感覚の違い」がはっきりと見えてきた。
今日はそれを踏まえた決意表明を書いてみようと思う。

■ イレギュラーな郵送申請

わたしがSSNの申請準備を始めたのは、コロナが流行し始めた今年3月下旬。既にSSOは閉鎖されており直接オフィスに出向く通常申請は出来ず、HP上のガイドラインに従って郵送申請をすることに。申請に必要な書類(戸籍謄本等)を日本から取り寄せ、いよいよ申請手続きを開始。

<2020/5 中旬>
✉ 申請書類一式を最寄りのSSOへ郵送。

<2020/5 下旬>
✉ 申請から2週間後、パスポートと戸籍謄本が返送される。

<2020/6 上旬>
✉ さらに1週間後、SSOからImportant Informationというレターが届く。申請を受理したこと、身元の審査後、SSNカードが届くまでおよそ4週間かかること等が書いてあった。

■ 二転三転する問い合わせ対応

<2020/7 下旬>
☎ 8週間待っても来ないのでSSOに問い合わせ
氏名、生年月日、先日届いたレターのレファレンス番号を伝えるが、申請履歴をサーバー上で検索してもヒットしない。調べて折り返すと言われるが折返しは来ず。

<2020/7 下旬>
 2日待っても折り返し電話が無いのでSSOに再度電話
前回の経緯を伝え、再度検索してもらう。やはりヒットはしないが、暫く粘ってもらうとどうにか申請情報が見つかった様子(頑張ったら見つかるのが謎すぎるけれども)。上司なのか面接官なのかに電話を代わり、そのまま軽く電話面接をしてくれた。通常は最寄りのSSOに直接出向いて面接するが、コロナ禍のためオフィス訪問の必要はないと確認。1~2週間経ってもSSNカードが届かなければ再度かけ直せと言われる。

<2020/8 中旬>
☎️ もちろんカードは届かない。またもやSSOに状況問い合わせ
この時もわたしの申請情報は検索結果に出てこないが、前回は見つかったんだからと粘って粘って探してもらう。そして粘ると何故か見つかる。
どうやらDepartment of Homeland Security(DHS)で手続き保留となっているらしい。(※DHS=国土安全保障省。出入国管理をしている行政機関。)

コロナの影響で全国的にSSNの新規発行が滞っており、Job offerがない人は手続きを後回しにしているという。
提出書類に不備はなく、追加の面接等も不要。ただ待つしかないと。
「ちなみにどのくらいかかりそうですか?」の問いには「パンデミックが終わったら」と返される。「1、2週間後にかけ直します」と言うと面倒くさそうに「1か月後にしろ」と言われる。

初めて状況らしい状況を教えてくれた。が、前回の1、2週間程度で届きそうという話は何だったんだ?パンデミックが終わったらって何!?

<2020/9 上旬>
☎ SSOにその後の進捗状況を問い合わせ
いつものごとく検索結果には出てこない。電話の相手は、自分ではわからないからとMs. Friday(仮名)という別の担当者に電話を転送してくれたが繋がらない。留守電を残して折り返しを待つ。

Ms. Fridayに話は通しておくからと言ってたが、折り返しは来ず。
この後何度かけても留守電に…。

<2020/9 中旬>
☎ 上記の電話から1週間後、やっとMs. Fridayから電話。
ここで急展開。パンデミック中は新規申請は行っていない。SSOに直接出向き面接まで進めるのはJob offerを持つ労働者のみ。職がないならそもそも今は申請出来ない。パンデミックが終わるまで待て。

いやいやいや!!!
郵送申請の方法HPに載ってるし!
申請受理されたレター届いてるし!
電話面接も済んでるし!!!!
前回の電話の相手はDHSで手続き保留になってるって言ってたし!!!!!

電話面接済なこともDHSで保留になっている件も全然把握出来ていない様子なので、何とかもう一度詳しく調べてとお願いするが、検索をかけてもヒットしないの一点張り。その上まだ話し途中なのに「別の電話が入ったから」と突然電話を切られた。

え、人がまだ話してる途中に切る!?!?!?
失礼すぎない???

■ 日本人とアメリカ人の考え方の違い

現在、SSOの職員はスーパーバイザー1人を除いて全員在宅勤務で電話対応をしている。そのため同じ電話番号にかけても毎回違う担当者が出る。
毎回同じことを聞かれ、毎回申請履歴を検索してもヒットせず、毎回粘ってもらうとどういうわけか見つかる。そして前回とは全く異なる回答が飛び出す。電話を切る度にぐったりする。

【彼らの回答推移】
①面接完了。カード届くまで1〜2週間待ってね。
②DHSで手続き保留になっている。パンデミックが終わるまで待ってね。
③今は申請出来ない。パンデミックが終わるまで待ってね。←今ここ

電話の相手によって回答が変わってしまうのは何故だろう。過去の問い合わせ履歴は管理していないのか。申請状況の把握も出来ていなければ、理由をを問えば「パンデミック」の一言で片づけ、それ以上追求する気すらない。本気で仕事をする気はあるのだろうか…。

出来る限り正しい答えを探そうとするのは当たり前。
答えがわからないならわかる人に問い合わせするのが当たり前。
窓口なんだから誠意ある対応をするのは当たり前。

彼らの場当たり的な対応に苛立ち、傷つき、1人もやもやしているところで、こんな記事を見つけた。

アメリカ人は
◆反省(問題の原因分析)をしない(=そういう教育を受けていない。)
◆原因より結果を重視する(=過去より将来に視点を置く)。
◆謝らない(=謝ったら自分が追い込まれる文化的背景がある)。

目から鱗だった。
そしてすとんと腑に落ちた。

なるほど日本人とアメリカ人では、根っこの価値観が根本的に違うのか。

言語、歴史、教育、文化。確かに育ってきた環境にほとんど共通点はない。
わたしの中の「当たり前」が彼らにとって「当たり前」ではないこと。
それこそ「当たり前」ではないか。

どちらが良い悪いという話ではない。(日本人に欠けていてアメリカ人が持っている素晴らしい部分も沢山ある。)
彼らが自分とは全く異なる価値観に基づいて考え、行動するということを理解しなければいけなかったのだ。

わたしは気づかないうちに自分の尺度で相手を測り、1人で勝手にイライラしていたのか…何ともおこがましい(ここで反省するところが日本人的思考なのだろう。)

■ 郷に入っては郷に従え

いくら日本が恋しくてもここはアメリカだ。
環境は変えられない。自分を変えるしかない。

SSN申請に話を戻すと、こちらが申請状況の正確な現状把握、保留なら保留の詳しい理由、そして合理的に予測される今後の対応が知りたいのに対して、SSO職員は「パンデミック中は申請は進まない」という結論だけを伝えてくる。話は噛み合わない訳だ。
加えて検索しても申請履歴が出てこないのは自分の責任ではない( システム上のエラーか、初回担当者の入力ミスか…)から決して謝らない、という理屈のようだ。

彼らもきっといじわるしている訳ではない。そもそも原因を探ること、詳細を伝えること自体を重要だと思っていないのだ。

次回からは「わたしは詳細と原因が知りたい」という点を強調しよう。そして曖昧な結論だけ言われて泣き寝入りするのではなく、こちらから具体的に質問して詳細を聞き出そう。

メンタル面でも注意が必要だ。

「何度もすみません」「何だか申し訳ない」

まずは無意識に抱いてしまうこの感情を手放そう。
「謝る=謝った人が悪い」と捉えられるならば、不用意に謝ると相手にネガティブな印象を与えかねない。電話中に相手の言っていることが聞き取れなくても謝るのはやめよう。アメリカ流に言えば聞き取れないわたしが悪いのではなくてそもそも電波が悪いのだから。

何だかクレーマーになったようですごく気分が落ち込む。けれど郷に入っては郷に従えだ。

アメリカ人の考え方のくせを想像しながら、駆け出しクレーマーは今日も電話をかけ続ける。



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