試される大地の優しさに触れた北海道10日間の旅 / 根室から帯広へ
旅の始まりの時に通ったルートに再び向かう日がやって来ました。
前回の記事はこちら
今日の目的地は室蘭が、今回の記事では帯広までの列車旅をお届けします。
始発に乗るため夜明け前に根室駅へ。根室から室蘭まで532.1km。壮大な列車旅の始まりです。
「532.1km」 この距離は、大阪からだと山口県 下関までと同じぐらい。本州だと、大阪、兵庫、岡山、広島、山口と4県をまたぐ大移動になるのですね。
このように置き換えると、北海道はやっぱり広い。さらにここは、日本でいちばん早くに日の出を迎える場所。記念に一枚撮っておかないとね。
柔らかい色彩を放つ朝焼けの中、根室駅ホームに列車がやって来ました。
こちらの写真、花咲線公式インスタグラムにリポストしていただきました。嬉しい。ありとうございます。公式サイトでは、たくさんの方々の花咲線沿線で撮影された素敵な写真が紹介されています。
北海道を旅した者として、私もこの瞬間を目で見て、さらに写真に残すことができたのは最高の思い出になっています。
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日本一早く空が薄明かりに染まるとはいえ、まだあたりは静けさに包まれています。
いつもの私なら眠い目をこすりながら迎える早朝も、ここでは穏やかな心で出発の時を待っていました。こじんまりした駅構内であっても小さな発見はたくさんあり、北海道の鉄道は人の手で繋がっていることを、ここでも見つけることができました。
さぁ、駅の出札が始まりました。間もなく出発の時です。夜明けと共に走る花咲線の車窓を一緒に楽しみましょう。
これから見る車窓は早起きした人に贈られるプレゼントだ。
だけど乗車する季節は気をつけて。それは、根室の夏至の日の出は3時37分。空が明るくなりだすのは、2時51分頃から。この時期は始発の5時31分発でも太陽が昇っていることと思います。
行きも見た景色に再び目を奪われる。
列車は遅れているけど、そんなことどうでもいい気持ちにさせてくれる景色が
ずっと続いている。
北海道の列車に乗っていると、どんどん心の器が広く深くなっていくみたい。
尾幌駅の駅舎は、もとは線路の上を走っていた貨物列車。車輪を外して駅舎にしています。かわいいから見逃さないでね。
運転士さんが、特急にお乗り換えの方はおられますか?と車内に声をかけにきました。列車には私以外にも数組の方が、特急おおぞらに乗るみたい。列車は遅れを戻すかのようにディーゼル音を唸らせながら走っていきます。
根室発の花咲線は最終列車以外、釧路駅で特急おおぞらと接続を取れるようにダイヤが組まれています。
おおぞら乗れるかな?
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釧路駅に到着すると、発車時刻が過ぎていたけど、接続待ちをしてくれていました。駅員さんが、『お乗り換えの方、お急ぎ下さーい!』と案内をしていて、早足に乗り込みます。私達の乗車を確認したおおぞらの扉はすぐに閉まり、慌ただしく釧路駅を出発。
帯広を目指します。
特急おおぞらが走る釧路から帯広の区間は北海道をまるごと詰め込んだような車窓を見ることができます。
この時の自分がどんな思いで列車に乗っていたのかあまり覚えていません。
車窓から、次々に広がるたくさんの風景に自分自身も溶け込んでしまっていたのかもしれません。
湿原を抜けると太平洋が広がります。
その次は、少し海から離れ、黄金色のじゅうたんの先に水平線を望みます。
そして、再び真っ直ぐに伸びる水平線と並行するように特急おおぞらは北海道の大地を駆け抜ける。
そのあとに見えてくるのは、雄大な十勝平野に広がる綺麗に整備された畑。
相変わらず山の名前があやふやです(汗)
そして、列車は池田駅に停車。ごく普通の駅名が逆に新鮮に思えちゃう。北海道マジックにかかったみたい。
普通の名前とあなどるなかれ、この池田駅には有名な駅弁があります。その名も 「十勝ワイン漬けステーキ弁当」
予約制のようですが、乗車している列車まで持ってきてくれるのだそうです。
お店は池田駅前。店頭受け取りもできるみたい。
利用したい時は、お店に確認の電話をしてみて下さいね。
池田牛とワインの町を出発すると、特急おおぞらは十勝川を渡ります。
十勝川を過ぎると、さらに猿別川、札内川と、いづれも十勝川水系の川を渡り帯広駅に到着します。
帯広駅に到着です!
と、喜びも束の間、ここで悲しいお知らせがあります。帯広といえば、十勝スイーツが有名。六花亭本店があるのも帯広。そしてなんと言っても豚丼。
最初の予定では、ここで3時間ほど滞在して豚丼を食べて、六花亭本店の喫茶室でデザートを食べて~帯広のフルコース~を満喫しようと思っていました。
が、しかし…。
駅直結の商業施設は1ヶ月に一度の定休日、駅近に長崎屋があったのだけれど、つい最近閉店してしまったみたいで営業していない。
さらに、追い討ちをかけるように六花亭喫茶室が定休日᠁。
そんな帯広に降り立ったのは水曜日でした。
みなさん、帯広に行かれる際は、“水曜日” にお気をつけください(苦笑)
旅をしていると駅の商業施設の定休日によくあたるんです。東北一周旅では、JR長岡駅(新潟県)の商業施設も一年に一度のメンテナンスの為、定休日でした…。
くろしお᠁こうゆう引きの強さも持ち合わせております。いろんな意味で、強運の持ち主です(笑)
駅から歩いてでも行けそうな豚丼のお店はあったのですが、なんせ帯広に到着したのが9時50分。路面に店を構える豚丼屋さんは11時以降から開店のところがほとんどで、待ってそこから食事してては、ちょっと工程的にもったいない᠁ってことで諦めました。
ま、これも旅。いい思い出です。
このマンホールは帯広で行われている、ばんえい競馬のマスコットキャラクター リッキーくん。
このばんえい競馬を見ることができるのは世界中で、ここ帯広だけ。
ここで走る馬は 「ばん馬」 といわれ、重さは約1トン。サラブレッドの約2倍の大きさもあるのだそう。一般的な競馬は速さを競いますが、このばんえい競馬は、どの馬がいちばん力持ちかを競うレースなんだそうですよ。
ちょっと今から話しが逸れます(←事前告知(笑))
くろしお、賭け事は全くしないのですが、このばんえい競馬は見てみたいなと思ったので調べてみました。
ここで走る馬たちは、農耕用に改良された馬なんですね。昔は北海道の広大な大地で、おいしい農作物を作るために、この馬たちに畑を耕してもらっていました。しかし今では馬を使って耕すことはしなくなりました。そんな馬たちの活躍の場として、そして北海道の開拓文化を残し伝える役目として、このばんえい競馬はあるのだそうです。
開催当初は帯広だけではなく旭川、北見、岩見沢でも行われていたのだそう。しかしバブル崩壊後、赤字に転落してしまい、今では帯広に残るのみになってしまいました。
このばんえい競馬が無くなると、ばん馬に残された道は食肉に加工されること。
こうして言葉にすると残酷ですが、私たちは常日頃から、命あるものをいただいているという現実を忘れてはいけません。
だけど残せる命は残してもらいたいと思うし、応援したいですよね。
そんな、ばんえい競馬。今また少しづつ注目を浴びているみたいで、帯広市はこの伝統を残そうと頑張っているそうです。
成り立ちを知ると見てみたくなりました。旅先で、人生初の馬券を買うのも記念になるかもしれませんね。
みなさんも、帯広に行かれた際は、観光ルートに “ばんえい競馬” いかがでしょうか?
さて、くろしおの脱線癖はこれぐらいにして駅に戻りましょう!
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こちらは、帯広駅1905年新規敷設記念レール。
帯広駅は現在、高架になっていますが昔は地上駅でした。このレールはその時のものだそうです。釧路から走ってきた列車はこのレール上に停車していたのですね。
新しくなった駅構内には幸福駅に似せた観光情報センターや、豚丼の駅弁販売所などがあります。
少し話を戻し、幸福駅について触れておきましょう。
「幸福駅」 とは国鉄時代、帯広駅から広尾線という路線があって、その途中駅のひとつです。さらに当時は愛国駅もあって 「愛の国から幸福へ」 のキャッチフレーズで有名になった場所です。
せっかくなので、こちらも少しお話ししておきます。
上の写真左側にある北太平洋側にも2021年まで苫小牧から日高本線が様似まで伸びていましたが、廃線になってしまいました。両側の路線が無くなった今、北海道でいちばんアクセスが大変な場所は襟裳岬になるのではないでしょうか?
路線網が縮小される一方で、帯広駅は綺麗に姿を変え、鉄道の駅として活躍しています。ほかの主要駅と比べるとコンパクトで、こじんまりした印象ですが、北海道の伝統や、歴史を色濃く残していこうと、様々な形で頑張っているのが伝わってくるところでした。
広大な十勝平野のほぼ中央に位置する帯広。もしかすると、そんな帯広自体が寛大な心の持ち主であるのかもしれない。
北海道の駅は、ほんとうに個性豊かで楽しませてくれます。ありがとう、帯広。
そんな帯広で豚丼とスイーツを買って、室蘭を目指します。
その話しは次回。
くろしお
お店が開いてなくても、十勝を味わえます。おいしいので、ぜひ!
次の旅はこちら。
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