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まくらのそうし

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日々の風景、周りの自然などを綴ったエッセイです。毎日更新。1話は原稿用紙1枚ほどです。田舎暮らしの風景をお届けします。
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#随筆

【エッセイ】 宇宙のいきもの

 土間の片隅に、ザトウムシを見つける。  平べったい豆のような胴体に、その十倍以上はあろ…

【随筆/まくらのそうし】 狸

 タヌキには、肉が臭いのと、臭くないのがあって、それを見分けることは不可能、捌いてみて初…

【随筆/まくらのそうし】 沢蟹

 雨上がりの小道を歩けば、あちこちカニの横歩き。  無論、こちらが雨上がりを歩くので、雨…

【随筆/まくらのそうし】 蓬餅

 何もかも取っ払って簡単に言えば、その子の家は金持ちだった。  庭付きの大きな家、当時は…

【随筆/まくらのそうし】 羊歯

 様々なシダが生えている。  春に芽を摘む、ゼンマイ、ワラビ、コゴミなどもシダであるが、…

【随筆/まくらのそうし】 榎

 エノキダケが見れば、狂喜乱舞するだろうというような、立派なエノキが生えている。  枝で…

【随筆/まくらのそうし】 舟

 卯の花くたしとなるのだろうか、ほの暗い空から雨の落つ。  谷の向こうの山は霞み、消えゆき、ここはぽっかりと浮かぶ天の舟、錨もなしにふらふら行けば、雨の終わり、晴れるとき、その身を寄せる港はあるか。  かつて、この島国には、舟を家とし、海を行く、そんな人々がいたという。  そもそも昔は水上交通、陸路というのは困難で、危険を伴うものだった。  だから、木を運ぶにも、食糧、その他を運ぶにも、川や海が最適で、舟は至極身近な存在、そこで暮らしを営む人も、大勢いたというわけだ。

【随筆/まくらのそうし】 南

 海風が、南の峠にぶつかって、そこで雨が降るのである。  台風なども南から、温い風がびゅ…

【随筆/まくらのそうし】 コオロギ

 コオロギというものは、とかく気持ちの悪いものである。  ゴキブリかコオロギかと言われれ…

【随筆/まくらのそうし】 カタバミ

 カタバミの種が、パチパチ弾けるのが好きである。  土のない砂利にもコンクリートにも、よ…

【随筆/まくらのそうし】 蛙酒

 干して、焼酎に漬け込むと、美味いカエルがあるのだという。  蜂やヘビを漬け込む酒という…

【随筆/まくらのそうし】 一本松

 鳥も、歌が上手いのと下手のがあって、上手いのは人が聞いても分かるもの。  いまは動画や…

【随筆/まくらのそうし】 グミ、その後

 グミが鈴なりになるので、食べに行く。  茂る葉の中、その赤が目に飛び込んでくるのは、人…

【随筆/まくらのそうし】 鵺

 夜の山に鵺の鳴く。  フィー、ヒョーと、振り子のような一定の間で、物悲しげに鳴いている。  この鵺というのは、トラツグミの別名で、古くは平安の時代、万葉集にも、幾つか鵺の歌がある。  寂しい、悲しい、そんな思いを、先人は鵺のこの声に乗せたのだ。  ところがこの鵺、平安の後、平家物語では、恐ろしい怪物として描かれる。  顔はサル、体はタヌキ、トラの手足に、尾はヘビで、薄気味悪い声で鳴く、源の某が退治した鵺は、トラツグミとは似ても似つかぬものである。  貴族の世から