【随筆/まくらのそうし】 榎

 エノキダケが見れば、狂喜乱舞するだろうというような、立派なエノキが生えている。

 枝でももらって、種菌を植えようかと思いながら見るうちに、もはやその枝でさえ、適した太さではなくなった。

 手入れもなかった植林の、元は杉の山であり、しかしその杉を切ってみれば、意外とこのエノキのような、広葉樹の木が残る。

 暗く、夏には黴臭いような山に日が差して、ようやく眠りから覚めたよう、生き生きと植物たちが葉を伸ばす。

 土には日差しが必要だ、土となる落葉が必要だ、そして山の動物らには、落ちる木の実が必要だ。

 無知な人が作った山は、山でなく、時にはその木を切ることが、良い山を作るということである。

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