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【随筆/まくらのそうし】 沢蟹

 雨上がりの小道を歩けば、あちこちカニの横歩き。

 無論、こちらが雨上がりを歩くので、雨上がりには、となるのであって、雨もカニは気にすまい。右に左にちょこちょこと、歩く姿は面白い。

 往復すれば、十や二十は見かけるもので、普段はどこへ隠れたものか、不思議に思うくらいである。

 人が近づけば、はさみを上げて、掛かって来いやと言わんばかり、いえいえどうぞお通りください、消しゴムほどの大きさならば、こちらも余裕があるというもの、ゆっくり跨いで通り過ぎる。

 もっとも、徒歩の際ならそれでもいいが、車というのが困りもの。

 雨の日、車が出た後は、カニせんべいの大安売りで、あまり大きな声では言えないが、買い手は数多、数日の経った後は、すっかり綺麗になっている。

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