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小説・「アキラの呪い」

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「俺にはろくでなしの姉が一人いる。姉は俺の呪いであり、俺は姉の呪いになりたい」 姉の自殺未遂をきっかけに変化する義理の姉と弟の危うく奇妙な関係を描く。
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#過去

連続小説・「アキラの呪い」(7)

連続小説・「アキラの呪い」(7)

前話はこちら。

 ところで校内での晶との交流は、俺の対人関係にも変化を与えた。平凡な奴に「ヤバい奴とやり合えるすごい奴」というステータスが追加されたのだ。だからなのか、幼なじみの拓人とこんな会話をしたりもした。
 「お前、噂になってんぞ」
 ある帰り道、拓人がひそひそと話しかけてきて、俺は怪訝に片眉を上げた。
 「はあ?」
 「お前の姉貴の…何だっけ名前…異名はすぐ思い出せるんだけど」
 口を歪

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連続小説・「アキラの呪い」(6)

連続小説・「アキラの呪い」(6)

前話はこちら。

***

 中学生になると、俺は「あの」水無瀬晶の弟として扱われた。中高一貫校だったから余計にそういう目で見られた。小学校でもそんな感じだったからむしろ俺としては懐かしさすらあった。そもそもその程度のことで動揺してちゃ、あれの弟は務まらない。なので入学してから一ヶ月ほどは、周囲に水無瀬歩がいかに平凡な奴かを知らせることに注力した。まあ、実際俺は平凡な人間に過ぎないのでありのままで

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