取締役要件にESGを掲げる企業(1): AES Corporation
アメリカでは100社を超える企業が自社の取締役会の正当性をスキルマトリックスを用いて説明しています。しかしその多くはESGのうち、Gのみを取締役の要件としており、ESGを掲げる企業にはそれぞれドラマがあります。これから何回かに渡って企業がESGを取締役要件にするに至った背景を探り、日本企業のスキルマトリックス採用のきっかけとしたいと思います。
第1回はAES Corporationです。同社は1981年創業の電力会社で、2018年の株主総会招集通知からスキルマトリックスを公表しています。2017年は電力業界経験、財務経験、国際市場経験、多国籍企業における経験を取締役要件とし、該当する取締役候補の人数のみを公表していました。2018年は先述の要件を含む13の要件を掲げ、その中の1つが「環境・サステナビリティ」です。
スキルマトリックス公表の背景には株主提案がありそうです。2016年の株主総会から3回連続で、気候変動に関するパリ協定で規定されている「2度上昇シナリオ」に伴うリスク分析を提案されています。同社の発電ポートフォリオの74%が化石燃料由来であり、「2度上昇シナリオ」への対応に伴うコストが巨額になるのではと、一部の株主が懸念したためです。2016年、2017年の株主総会では同議案への賛成票が36%、37%に上ったため、同社の取締役会は株主に誠実な対応を示す必要を認識したものと推察されます。発電ポートフォリオの26%、33%がそれぞれ再生可能エネルギー、天然ガス由来であることを含め様々な事実を挙げるとともに、「環境・サステナビリティ」要件を含めたスキルマトリックスを公表し、取締役会が必要な人材を備えていることをアピールしたものとみられます。
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