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【体育授業の微細技術】跳び箱運動の基礎感覚づくり

こんにちは。
今回は「跳び箱運動」における基礎感覚づくりの運動についてお話していきます。
跳び箱運動で広げていきたい感覚と、そのための運動について、少しでもお読みのみなさんのお役に立てられたらとまとめました。使えそうなものはぜひどんどん使ってください。


1.跳び箱運動で育てたい感覚

マット運動で育てたい感覚については、以下の記事にまとめました。

跳び箱運動も基本的には同じです。そこに加えて、「フワッ」という遊びの感覚を味わわせていくことがとても重要になります。(カイヨワの言う「遊び」の中では「眩暈」の遊びになります。)この「フワッ」という感覚は、いわば、ジェットコースターが落ちる時のアレと同じです。理由を説明することは難しいですが、人が本能的に「怖いけど楽しい」と思ってしまう感覚だと思います。跳び箱運動は、マットや鉄棒に比べて、それが簡単に味わえる。そこに最大の魅力があると思っています。

2.跳び箱運動での基礎感覚づくりの運動

では、具体的な感覚づくりの運動を紹介していきます。今回は、3年生での実践をもとにお伝えしますが、他の学年でも基本的にはあまり変わらずに使えると思います。

①カエル倒立(支持する感覚)

はじめは「カエル倒立」です。

参考:JapaneseClass.jp

これは、単純に支持する感覚を育てるために行います。手のひらに体重が乗るってこういう感じなんだなぁというのを、比較的安全に味わうことができます。跳び箱の不安要素の一つは「手で支えられないかも」ですので、その不安を、これによって少しでも軽減させていきます。

②馬跳び(切り返しの感覚)

次は馬跳びです。コロナ禍においてずっと行われてこなかった馬跳び。コロナ以前のイメージとは比べ物にならないくらい、子どもたちはこの運動が苦手です。ずっと経験していないって、ここまでなのかという驚きを私は受けました。この運動は、跳ぶ側にとっては、ジャンプし、手で支えながら、下に向いた体を上に起こしていくという切り返し系の動かし方の経験を味わうことができますし、馬にとっては、背中にかかる重さを体全体で上手に支えるという経験を味わうこともできます。他者の身体がどのように移動していっているのかというイメージもつかむことができ、とても良い運動だと思っています。
馬跳びは、ペアでの練習タイムを少しとったあと、「よーい、はじめ!」で5連続跳んだら交代するという跳び方をさせます。跳んだらすぐ振り向いてまた跳ぶ。これが大切な動きになっていきます。

③踏み越し跳び(フワッと感、着地のとめる感覚)

次は踏み越し跳びです。

参考:みんなの教育技術 小2体育「跳び箱を使った運動遊び」指導アイデア

この運動は「フワッと感」簡単にたっぷり味わうことができるだけでなく、着地の安心感を得られるようになるとても大事な運動です。「着地ができる」というのは、「けがをしない」という安心感につながります。跳び箱運動は、跳び箱という障害物のおかげで、スタート時に着地地点が見えません。だから怖いのです。この運動をたっぷり経験させることで、その怖さを軽減させていきます。慣れてきたら「空中で何回手をたたける?」や「空中で星(大の字)になれる?」などの動きを入れていくと、さらに高まります。

④キョンシージャンプ(踏切りの感覚)

次は「キョンシージャンプ」です。適当な図がないので言葉で説明します。跳び箱は横2段。助走し、通常と同じように両足で踏み切り板に入って踏み切ります。その踏み切るときにキョンシーのようなポーズをとり、その姿勢のまま2段の跳び箱の上に着地するという動きです。これは、助走から踏切板に入っていく感覚と、膝を伸ばして反発を得る踏切の感覚を味わうことができる運動です。跳び箱が苦手な児童の一つのパターンに「スムーズに踏切に入れない」というのがあります。そんな児童が踏み切ったあとに手もついて体をこうやって動かして着地もして…なんてやるのは難しすぎることはイメージできると思います。だからこそ、まずはここで踏切までの流れをたっぷり経験させていきます。もし可能であれば、踏切板の前に20cm~30cm程度のマット状のものを敷けると、所謂「第1踏切」と「第2踏切」を身に着けることができるようになります。

⑤腰上げ(踏切りの感覚)

次は跳び箱を4段縦にして腰上げを行います。

参考:みんなの教育技術 小6体育「器械運動(跳び箱運動)」指導アイデア

このような姿勢をとってから、5回連続でトランポリンを跳ぶようにジャンプします。コツは「膝を伸ばす」「肩より腰を上げる」「強く短い音が鳴る」です。思いっきりやると、そのまま台上前転ができてしまう子もいます。台上前転の入り方の感覚ともつながります。

⑥跳び上がり跳び下り

次は跳び上がり跳び下りです。

参考:みんなの教育技術 小2体育「跳び箱を使った運動遊び」指導アイデア

この運動は、跳び箱運動で必要な「流れ」の感覚をつかむことができるとっても大事な運動です。跳び乗ったときには、肩より腰が高い状態になりますので、踏み切って着手するときの理想の形を味わうことができます。そのまま跳び下りますので、スタート地点から見えない着地点に、流れの中で着地する感覚を味わうこともできます。これもたっぷり味わっておきたい運動です。

おわりに

以上が、跳び箱運動で私がいつも行っている基礎感覚づくりの運動です。子どもたちの実態に応じて、他の運動も取り入れることももちろんあります。
ここまで読むと「これいったい何分かかるの?主運動の時間大丈夫?」と思う方もいらっしゃると思います。そうなんです。これ、ここまでたっぷりやると時間がかかります。でも、そこまで時間をかける価値のあるものだと思っています。この基礎感覚づくりをたっぷりやらずに主運動の動きの練習をたっぷりやっても、できない子はいつまでもできません。それよりも、この運動を丁寧に味わわせていくことで、主運動の運動がすんなりできることも多くあります。単元最初は、これだけで終わりにするくらい丁寧に私は指導していきます。(単元後半になると10分程度で終わるようになります。)
「自在に動く身体」を目指す体育ですので、こういった「感覚づくり」こそ、体育では大切にしていきたいと思っています。

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