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セロトニンについて

セロトニンやオキシトシンは幸せホルモンと呼ばれることがあります。

―厚生労働省、eヘルスネットより引用―
 脳内の神経伝達物質のひとつで、ドパミン・ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きをします。
 必須アミノ酸トリプトファンから生合成される脳内の神経伝達物質のひとつです。視床下部や大脳基底核・延髄の縫線核などに高濃度に分布しています。
 他の神経伝達物質であるドパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)などの情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあります。
 セロトニンが低下すると、これら2つのコントロールが不安定になりバランスを崩すことで、攻撃性が高まったり、不安やうつ・パニック障害などの精神症状を引き起こすといわれています。
 近年、セロトニンの低下の原因に、女性ホルモンの分泌の減少が関係していることが判明し、更年期障害と関わりがあることが知られるようになりました。

①【睡眠・覚醒状態とセロトニン】
集中力や目覚めの程度には、少なくとも以下の5つが関わっています。
 ノルアドレナリン
 ヒスタミン
 アセチルコリン
 オレキシン
★セロトニン(5-HT)
 ほぼすべての脳内セロトニン作動性ニューロンは延髄および橋領域の網様体に位置する縫線核にある。
 縫線核から、視床下部・視床・大脳基底核・海馬・大脳皮質といった多くの脳部位に投射している。
 縫線核を刺激すると、歩行や大脳皮質の覚醒が起こる。セロトニン合成阻害薬であるPCPAを使用することで大脳皮質の覚醒を低下させることが報告されています。
・セロトニン作動性ニューロンの役割の1つ
 歩行や咀嚼、毛づくろいなどの連続的な自動運動を促すこと。
 新しい刺激に対して反応する際セロトニンニューロンの活動は低下する。
 このことから、セロトニンは現在生じている活動を促進させ、感覚情報を抑制し、現在の活動を中断させることを防いでいると考えられます。


②【怒り・攻撃・衝動とセロトニン】
・情動に関するセロトニンの役割
 セロトニン作動性ニューロンが人の攻撃を抑制するとの研究があります。
セロトニン放出の抑制は攻撃やほかの型の反社会的行動(暴行・放火・殺人・虐待)に関連する。(Lidber et al., 1984, 1985; Virkkunen et al.,1989)
 Coccaroらの研究:衝動性や攻撃の病歴を有する人格障害の男性を対象に行った研究では、セロトニン作動系の活動が最も低い者には近親者に似たような問題を有している可能性が高いことが示されている。
 また、セロトニン作動薬であるフルオキセチンは心理テストで計測される怒りや攻撃性を低下することも示されている。
 前頭前野の活動減少も反社会的行動と関連しているが、前頭前野はセロトニン作動性線維の主要な投射領域であり、セロトニンの減少により前頭前野の活動が低下することで反社会的行動が生じてしまうと考えられる。
 前頭前野の活動が上昇することで扁桃体の活動が抑制され、攻撃行動が抑制されることになる。(Mannら1996)
  (Crocketteら2010) は高濃度のセロトニン薬を投与することで道徳的葛藤を含むシナリオで危害を加えるような判断を下す確率が下がることを見出した。
 また、Newら(2002)の研究では、フルオキセチンを12週間投与することで前頭前野の活動が上昇し、攻撃性を抑えることが報告されている。

※以上のように、セロトニンは怒りを抑えることにも関与している。
詳しく言うと、セロトニンの増加により前頭前野の活動が増加することによって不適切な感情やそれに対する行動を抑えることができ、落ち着いた行動がとれると考えられる。


③【食欲とセロトニン】
 セロトニン作動薬のいくつかは、摂食を抑制する。原料目的で使われていたフェンフルラミンやシブトラミンは心臓発作や脳卒中、肺高血圧症や心臓弁の損傷など、重篤な副作用が生じることから市場から撤退している。(Blundell and Halford 1998)(Li and Cheung,2011)
 中脳腹側被蓋野ドパミン神経に対する抑制作用:
快の回路である腹側被蓋野A10ドパミン神経が側坐核に投射する経路がある。
この神経系は薬物依存症や過食症などとの関与も示唆されている。
縫線核セロトニン神経は不快なストレスによる反応だけではなく、快の情動に基づく行動にも調整作用をしているものと考えられる。
(セロトニン欠乏脳-キレる脳・鬱の脳を鍛え直す-有田 秀穂)

④【セロトニンと潜在記憶】
 セロトニン1A受容体は海馬や外側中隔などの辺縁系や大脳皮質のシナプス後膜において高密度に発現していることが報告されている。
 セロトニンの投与を行うと、シナプス短期・長期促通が生じる。短期記憶から長期記憶への移行はセロトニン上昇に伴うcAMPの長期的な上昇に依存する。
 セロトニンによるシナプス前促通は数分間も続き、繰り返しショックを与えるとシナプス活動を数日間にわたり増強することが可能である。
 海馬などの辺縁系において抗うつ薬の慢性投与はセロトニン1A受容体を介したシナプス伝達の促通が生じることが報告されており、抗うつ作用におけるシナプス後膜のセロトニン1A受容体の関与が重要であることを示唆している
 セロトニン1A受容体は不安やうつ症状、体温調節、コルチコステロン分泌、学習と記憶に関与していると考えられている。

⑤【セロトニンと痛み】
セロトニン作動性の延髄にある縫線核は脊髄の後角に投射しており、疼痛を抑制する。
動物では足を引っ込める行動がなくなる。セロトニンの拮抗薬を投与すると、疼痛の抑制が阻害される。セロトニンは片頭痛や慢性疼痛に効果を示す。

【参考文献】
・厚生労働省、eヘルスネット
・セロトニン欠乏脳-キレる脳・鬱の脳を鍛え直す-有田 秀穂
・カールソン神経科学テキスト
・カンデル神経科学
・脳神経ペディア
・脳の機能解剖と画像診断

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