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ワークシェアリングの成功術は宇宙移民に学べ

物語の設定

宇宙人が未開の星に移住するという設定で、架空の星に経済と環境の両立を実現する理想社会をつくってみました。
その星に住む移住者たちは、環境問題だけでなく、いま我々が有効な解決策が見つからず困っている様々な課題の克服も試みています。
ここでは、移住者たちがどのようにして難題を解決したのかを続き物で紹介していきます。
ガイド役は、理想社会の創造に携わった移住者が務めます。
では、お楽しみ下さい。

前回の話

前回は宇宙移民が考えたベーシックインカムの成功術を紹介しました。
その内容はこちらです。
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目次はこちら
理想社会の設計方法について

今回の話

今回のテーマはワークシェアリングです。
ワークシェアリングのデメリットは生産性の低下ですが、宇宙移民たちはワークシェアリングの導入でむしろ生産性が向上しました。
また、ワークシェアリングのお陰で、適職に就きやすくなったり、納得のゆく報酬を得られるようになったり、ハラスメントが発生しにくい職場になったりするなど、働く喜びが得られる環境になりました。
ワークシェアリングに秘められたパワーを引き出す方法を紹介します。

質問ワークシェアリング

ワークシェアリングを導入した目的

私たちがワークシェアリングを導入した目的は、2つあります。
ひとつは、生産性を向上するため。
もうひとつは、働く喜びを分かち合えるようにするためです。

ワークシェアリング

生産性の向上を目指す理由は、持続可能な社会の実現にあります。

持続可能な社会を実現するには、環境と資源の利用許容量を超えない規模に経済をスリム化しなければなりません。
生産性の向上は、経済のスリム化にとても有効です。
それは、性能の向上で小型化が可能になるのと同じ原理です。
なので、私たちは生産性の向上を追求するのです。

しかし生産性を極めると、労働投入量が大きく減ってしまいます。
つまり失業の激増と労働収入の激減を招いてしまうのです。

その問題の解決策になるのが、ベーシックインカムです。

しかしベーシックインカムが解決できるのは、生活費の問題までです。
失業問題が改善されなければ、働く喜びを得たい人を満足させることはできません。
失業率が高すぎることは、人的資源をムダにすることにもなります。
景気を良くするためにも、労働報酬でゆとりがもてる人を増やすのが得策です。

そこで役に立つのが、ワークシェアリングです。
労働時間を短縮することで雇用を分かち合えるワークシェアリングを使えば、より多くの人が仕事に就くことが可能になるからです。

ワークシェアリング分配図

だから私たちは、ワークシェアリングの導入が必要だと考えたのです。

故郷の星でワークシェアリングが嫌われる理由

故郷の星では、ワークシェアリングの必要性は認められていたものの、積極的に導入しようという機運にはなりませんでした。
故郷の星がベーシックインカムのない、つまり労働収入のみで生活するのを基本にする資本主義社会であったことが原因です。

ワークシェアリングのデメリットは、労働収入が減ることです。
雇用の分かち合いで労働時間が短縮されれば、労働収入も減ってしまうからです。
ベーシックインカムのない社会では、それは受け入れがたい問題です。

ワーキングシェアデメリット

また、生産性が低くてリストラされた人やリストラ対象の社員と仕事を分かち合うことになるので、生産性が低下するリスクが高まります。

この他、従業員の数が増えると、交通費、備品費、保険料、教育費などで人件費がかさむデメリットもあります。

それにより経営が悪化すれば、さらに労働収入が減少し、結局は失業者の増加が再発する事態を引き寄せてしまいます。

このような結果が予測されることから、故郷の星はワークシェアリングの導入に積極的になれなかったのでした。

ワークシェアリングで完全雇用を目指すと持続可能な社会は実現しない

私たちは持続可能な社会を実現する手段として、ワークシェアリングを導入しました。
しかし故郷の星はワークシェアリングを導入しても、持続可能な社会は実現できないでしょう。

ワークシェアリングを導入する目的が、経済のスリム化を図るためでなく、完全雇用を達成することになってしまうからです。
つまり、ワークシェアリングを活用して、フルタイムでは困難になった完全雇用の達成を目指すことになるということです。

これが、生産性を極めた状態でワークシェアリングを行う私たちとの相違点です。

完全雇用ワークシェア

完全雇用が達成された状態は、生産性が高い状態とはいえません。
生産性の向上よりも、失業率を下げることを目的にしているからです。
その上、ワークシェアリングを行えば、さらに労働投入量が増加し、生産性が低下してしまいます。

これでは、経営が苦しくなるし、まともな給料を払えなくなります。
フルタイム並みの給与水準に引き上げようとすれば、仮に一人分の雇用を2人で分け合ったとすると、生産性を倍にしなければなりません。

しかしそれは無理です。
生産性を2倍にしても、それに連動して需要が2倍になるわけではないからです。

過剰生産の増大は、生産性の更なる低下を招くとともに、環境負荷をより一層高めてしまうことになり、持続可能な社会の実現を遠ざけてしまいます。

ワークシェアリングは、ベーシックインカムとのセットが必須なのです。
ベーシックインカムがなければ、完全雇用の呪縛から解放されず、生産性を極めることができなくなります。

働く喜びを創造するのに必要な3要素

私たちは雇用システムを構築するにあたって、働く喜びを与えられる仕組みにすることを重視しました。

苦役のような労働だと、「ベーシックインカムがあるのだから、無理して働かなくてもいいや」と考える人が増えてしまうからです。
それでは、ベーシックインカムの財源をつくれませんし、ワークシェアリングに必要な人員も確保できません。

また、働く喜びの分かち合いにならなければ、ワークシェアリングで生産性をあげるのは難しくなります。
働く喜びがあるから、仕事に意欲的になり、生産性も自ずと向上していくからです。

働く喜び

私たちは働く喜びを創造するのに必要な要素を、次の3つに絞りました。
・適度な労働時間
・適切な報酬
・適性にあった仕事

このなかで一番難しかったのは、適性にあった仕事の実現です。
適度な労働時間はワークシェアリングで実現できますし、適切な報酬を与える仕組みの構築は、適性にあった仕事につける雇用システムを創造した後の仕事だからです。

まずは適性にあった仕事につける仕組みをどうやってつくったらいいか、私たちは大いに苦しみました。

故郷の星を反面教師に適性にあった仕事につけない原因を探る

私たちは適性にあった仕事につける雇用システムをつくるにあたって、故郷の星を反面教師にしました。
故郷の星には、適性にあわない仕事に苦しんでいる人がとてもたくさんいたからです。
なので、ミスマッチが起きやすい理由がわかれば、雇用システムの創造に役立てられると考えたのです。

究明
成功の秘策を見つけたぞ

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