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教育イノベーションの成功術は宇宙移民に学べ

物語の設定

宇宙人が未開の星に移住するという設定で、架空の星に経済と環境の両立を実現する理想社会をつくってみました。
その星に住む移住者たちは、環境問題だけでなく、いま我々が有効な解決策が見つからず困っている様々な課題の克服も試みています。
ここでは、移住者たちがどのようにして難題を解決したのかを続き物で紹介していきます。
ガイド役は、理想社会の創造に携わった移住者が務めます。
では、お楽しみ下さい。

前回の話

前回は、宇宙移民が考えたワークシェアリングの成功術を紹介しました。
その内容はこちらです。
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目次はこちら
理想社会の設計方法について

今回の話

今回は、宇宙移民が考えた教育イノベーションの成功術を紹介します。

さて、いま私たちは、地球温暖化など環境問題で大きな危機に直面しています。
しかし、持続可能な世界を実現するには、表裏一体の関係にある「経済成長と環境の両立」を成功させなければならず、容易に克服できるものではありません。

また、AI化の進展で機械にかわる仕事が増えれば、人間の行う仕事は高度な頭脳労働に移っていくと予見されています。

大人も含めた教育イノベーションを行わなければ、時代の変化に対応していくことはできないでしょう。

どのようにして宇宙移民がこれらの課題を克服する教育イノベーションを実現できたか、その成功術を明らかにしていきます。

質問教育イノベーション

成人教育が必要な理由

「勉強は子供がするもの」という固定観念があります。
故郷の星もそうでした。

しかし私たちの星では「勉強に卒業はなし」と考え、大人も勉強に励んでいます。
そこで、大人にも勉強が必要だと私たちが考える理由をいくつか挙げてみます。

■知識と技能のアップデートが必要
時代の変化が激しいと、知識や技能はすぐに時代遅れになってしまいます。
新しいテクノロジーが生まれても、それを使いこなせなければ、その恩恵を受けることはできません。仕事でも時流に乗ることができず、チャンスを逃してしまうことになります。

例えば、優れたソフトウエアがあっても、そのソフトウェアやパソコンの使い方がわからなければ、宝の持ち腐れになってしまいますし、それを使いこなせるライバルに仕事を奪われてしまいます。

時代遅れの知識と技能のままでは、時代を先取りしたアイデアを思いつくのも難しくなります。

また、変化に対応できない住民だらけの社会では、最先端テクノロジーの効果を十分に発揮するのが難しくなり、解決できるはずの問題が解決できなくなってしまいます。それが環境問題であれば悲劇です。

自分自身のためにも社会のためにも、知識と技能のアップデートは必要なのです。

■学ぶ量が増えている
文明や学問が進化すれば、必然的に学ぶ量は増えていきます。
にもかかわらず、就学年数が従来のままでは、子どもたちの負担は増えていく一方ですし、質より量の教育になってしまいます。

学ぶ量

無理な詰め込み教育にしないためには、成人教育を一般化する仕組みに改めるしかありません。

■持続可能な社会を実現するため
非常に難易度の高い「経済成長と環境の両立」を実現するには、イノベーションと問題解決の能力を高めなければなりません。

しかし、革新的なイノベーションをするには、とても高い学力を必要します。

たとえば、夜でも発電できる太陽光発電や、窓ガラスに貼り付けて発電する透明な太陽電池などは、深い専門知識がなければ発明できません。

こうした学力は、仕事をしているだけで身につくものではありません。
また、社会人になるまえの勉強だけで足りるものでもありません。
勉強の継続なしには、知識を深めることはできないのです。

■AI化に対応するため
AI化が進むと、機械に置き換えられる仕事が増えていきます。
AIのほうが生産性に優れ、仕事に間違いがなく、人件費も低減できるとなれば、この流れを止めるのは不可能です。

機械に置き換えられるのは、機械類の操作や文字入力、資料整理などの定型業務だけではありません。
医者や弁護士など高度な知識を必要とする仕事も、置き換えが可能になる部分が増えます。
AIは、膨大な量の学習データーをインプットでき、さらに自己学習もできるので、人間よりもスピーディーに精度の高い判断を下すことができるからです。

医者仕事

そうなると、人間に求められる仕事は、AIではできない複雑な仕事やクリエイティブな仕事になります。
つまり「答えのある問い」に対して迅速に正解を出す仕事はAIの担当になり、「答えのない問い」に対して答えを出す仕事は人間の担当になるのです。

以上の理由から、AI化時代には、人間は知性を鍛える勉強をしなければならなくなるのです。

■学問の進化を止めないため
少子化が進むと、学問の進化は難しくなります。
学徒数が減るので、教育産業が衰退してしまうからです。

教育産業の衰退を防ぐには、成人教育を活性化して学徒数を増やすのが最も効果的です。

■衆愚政治にならないため
民主主義は人民が主権をもつので、人民が正しく判断できる能力をもたないと、衆愚政治になってしまいます。

正しく判断できる能力をもつには、勉強を継続し、教養を高める必要があります。

■脳力を維持するため
脳も肉体の一部なので、筋力と同じで鍛えないと衰えます。
また、勉強をやめてしまうと、苦労して学んだことも忘れてしまいます。

現代は様々なテクノロジーが進化したことで、頭を使わなくても困らない便利な暮らしになっています。
なので、意識的に脳を鍛える努力をしないと脳の衰えが激しくなり、認知症のリスクを高めてしまいます。

健康のためにウォーキングの習慣を取り入れるように、あえて文明の利器に頼らずに頭を使う習慣を取り入れることは、脳の健康の維持にとても重要です。

成人教育に力を入れなかった故郷の星

故郷の星では、「勉強は子供の仕事」とされ、大人になっても勉強を続ける人はわずかでした。
ある調査結果によると、故郷の星の社会人の勉強時間は平均1日6分と、ほとんどやっていないに等しい状態です。
月に1冊の本を読まない人も珍しくなく、大人の勉強量は圧倒的に不足していました。

学問

その勉強も、会社から強制されて仕方なくやるものが多いので、義務を果たせば終わりという、あまり身にならない勉強です。
売れている本を見ても、楽をして成果をあげる方法や自己啓発など、学術書とはいえないものばかりでしたので、学力の向上や学問の進化に結びつく勉強をしていると考えにくい状況でした。

社会人向けの教育も充実していませんでした。
本格的に学問を学ぶには大学などに社会人入学するのがいちばんですが、誰でもできるものではありません。
eラーニングは気軽に始められますが、本格的に学問を学ぶ場としては、満足のいくレベルにはなっていませんでした。

その大学でさえも、学問の多様性が奪われる事態になっていました。
利益を生まない学問は無駄な投資になると、研究費を削られる傾向が強まっていたからです。
そのせいで研究者の処遇も悪くなり、研究を続けるのを諦めてしまう人が増えてしまいました。

産業の役に立つ学問ばかりを選択と集中すると、本当の財産である環境を破壊してしまいます。
環境を修復するには、金儲けの犠牲になった自然や動植物のことをよく知らなければなりません。
持続可能な社会を実現するには、商品化に結びつく学問ばかりを贔屓にしてはいけないのです。

成人教育に力を入れなかった結果起こったこと

故郷の星が成人教育に力を入れなかった結果、どのような問題が発生したか、いくつか挙げてみます。

■貧困問題の深刻化
AI化の進展で機械に仕事を奪われ、貧困に苦しむ人が増えました。
また、機械がライバルになり時給が低くなったせいで、労働時間を増やさなければ生活ができなくなりました。

その結果、余計に勉強する余裕がなくなり、高度な知性を必要とする頭脳労働に就くのが難しくなる悪循環に陥ってしまいました。

■持続可能な社会の実現に失敗
勉強は時間の浪費とし、利益を追い求める仕事ばかりに時間を費やした結果、イノベーションと問題解決の能力を高めることができず、経済成長と環境を両立する発明を温暖化のタイムリミットに間に合わせることができませんでした。

■平均寿命の低下
平均寿命が低下した原因は、高齢者の貧困にあります。
故郷の星は、高齢者の9割が貧困になるほど深刻な事態になりました。

このような事態になった最大の原因は、少子高齢化です。
それにより年金制度の維持が難しくなり、年金の支給額がどんどん減らされ、最低限の生活も送れない金額になってしまったのです。

労働収入で不足を補おうとしても、省人化を進めるAI社会では、生産性の低い高齢者は相手にされません。

子どもを頼りにしても、AI化で労働収入が減り、親の面倒をみる余裕はありません。

これでは栄養失調になってしまいますし、病気になっても医療機関に行きづらくなります。
このような状況におかれる高齢者が激増し、平均寿命が低下したのです。

少子高齢化

知力を高めるのに積み重ねの勉強が有効ならば、歳を重ねることは決して不利ではありません。
高齢者になっても労働収入を得られるようにするためにも、成人教育は必要だったのです。

■学問の衰退
少子化を食い止められず、成人教育を普及する働きかけもしなかったので、教育産業の衰退とともに学問も衰退していきました。

本も売れないので出版業界は倒産が相次ぎ、学術書を入手するのが困難な事態になってしまいました。

研究者も自由に研究ができる場が減ったせいで、研究者数も論文数も激減し、優れた研究成果があがらなくなってしまいました。

■衆愚政治の暴走
自分で考えて正しく判断する能力を養う成人教育を普及しなかったせいで、政治家に丸投げし、誰かの流した情報を鵜呑みにして騒ぐだけの民主主義から脱せられず、正しい方向に軌道修正をすることができませんでした。

教育イノベーションの実現に故郷の星を反面教師にする

私たちは成人教育の普及を実現するために、故郷の星を反面教師にしました。
故郷の星で成人教育が広がらない理由がわかれば、教育イノベーションの実現に役立つと考えたからです。

その結果、次の2つの問題が成人教育の普及を妨げる大きな原因になっていることがわかりました。

究明
成功の秘策を見つけたぞ

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