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入学式スーツと、多様性と、さとり世代。

ちょっとプライベートな話になりますが、くらしアトリエのスタッフ2名には、同い年の子どもがいます。

あわせて3人(双子1組+1人)、それこそ赤ちゃんの頃から一緒に遊び、成長し、今は高校生。

その3人は(うまくいけば)来年から大学生。たまたま別のスタッフと「卒業するといろいろ物入りだよね」という話をしていた時、入学式のスーツの話になりました。

なんでも、最近は大学の入学式にはスーツを着ていくものだそうで、ムスメたちいわく「みんな黒のスーツだよ」とのこと。卒業後、3月末の離任式に先輩たちがスーツを着て学校に来るそうで、「黒以外は見たことない」と言うのです。

「私が大学に入学したときはスモーキーピンクのロングフレアースカートと短丈のジャケットだったけど(当時の流行、ちなみにソバージュヘア)」と言ったら、「そんな恥ずかしい格好誰もしてない」とムスメたち。嘘でしょ~、と画像検索したら、見事にみんな、どこの大学も、私立も国公立も分け隔てなく、ぜーんぶ黒!真っ黒のリクルートスーツ!たまに紺色があるかな、ごくまれに濃いグレーかな、という感じで、全体的にくらーい雰囲気なのです(ぜひ、画像検索を!)。

なんで入学式という晴れがましい場所なのに、みんな黒いスーツを着てるのか本当に不思議で、いろいろ調べてみると、「目立ちたくない」「みんなと一緒がいい」という意識のあらわれ、も理由のひとつのよう。一応、ブラウスの色や襟のかたちで個性を出しているみたいなのですが…。


中には「色のついたスーツを着ていくと保護者と間違われるので避けましょう」と書いてあるサイトも…まじで?

もっとみんな思い思いにかわいい色や形の服を着ていけばいいのになあ、ワンピースを着たり上下違う色のセットアップでもいいし、そのほうが普段にも着れていいのに!と思ったら、スーツは3年生から始まる就職活動のために用意しておくのだとも書いてありました。

うーんでも、3年経てば体型も変わるしスーツの型の流行もあるだろうし、本当にみんな入学式に着たのをそのまま就活にも着てるのでしょうか。


ムスメたちに「せめてスカートをプリーツスカートにするとか、薄いグレーにするとかしてもいいんじゃない?」と言うと、「そんなこと、考えるのがめんどくさい」という返事。

他人と違う格好がしたい、目立ちたい、という思いがないのに加えて、そういう事をいろいろ思い悩む時間がもったいない、面倒だというのです。それならみんなと同じ格好で行ったほうが楽だし、合理的だと。反旗を翻す、という労力自体が「合理的ではない」ということなのかもしれません。

なるほど、情報にあふれた世の中に生まれ(デジタルネイティブ、と呼ばれますね)、その膨大な情報の中から選び取ることをある意味義務付けられた彼女たちの世代は、その労力を減らすために「人が選んだものでいい」「別にそれで損もしないし」という「さとり」の思考になるのも何となく理解できます。

「選び取る」ことがすなわち「自立」だった自分たちの世代とはまったく考え方が違うのだということを、スーツの一件でつくづく感じたのでした。

親の考えとしては、これだけ「多様性の社会」と叫ばれ、入試制度も画一的ではなくなりつつある今、めでたく合格してその大学に選ばれた第一歩が黒いスーツかぁ、と少し残念な気持ちになります。

でも、もしかしたら「多様性」は「みんな違う格好をする」というようなことではなく、例えば999人が黒いスーツを着ている中で、ひとりだけ青いスーツを着ている人がいたとしても、その人を「いいね!」と認める、ということなのかも。

自分は敢えてその立場にはならないけれど(マイナーな立場になれば行動範囲が狭まり、生きづらくなることをさとっているから)、でもみんな違ってみんないいよね、認めるよ、というのが今の時代なのかなあ、と思います。黒いスーツを「無難でつまらない」と考えるのは、親世代の考え方なのかもしれませんね。

ムスメの世代は「さとり世代」と言われることが多く、堅実で高望みをしない、無駄な努力や衝突を避ける、などの特徴があるそうです。ちなみにその次世代は「つくし世代」という名前がついていて、これは他人に尽くす、サプライズが好き、みんなで楽しむことを好む、などの特徴があるんだとか。

こうして「○○世代」という括り方もそんなに好きではありませんが、確かに今の若者たちは物腰やわらか、何を聞いても「いいね」「おもしろいですね」と返ってくる人が多いように思います。

眼前にあるものすべてを肯定しながら道を進んでいく世代…彼らが10年後、20年後にどんな思考を持つ人間に成長するのか、「地域」というカテゴリで考えるだけでも、とても興味深いです。

んーでもやっぱり、入学式はいろんな色の格好で良くないですか?ワンピースとか。ダメかなあ…。



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