見出し画像

YELL FORデザインよもやま話〜併走・コミュニティ編〜

鳥取県でデザイン・アート×教育・支援・対話を軸に活動しているクラタです。YELL FORというプロジェクトに参画してから約1年が経ちました。WEBサイトのリニューアルに併せて、1年間デザイン併走した軌跡を数回に渡って綴っていきます。
第2回は、併走・コミュニティ編です。(その他の記事は、記事末の「YELL FORについて&関連記事」よりご覧ください。)

プロジェクト併走すること

私はYELL FOR以外にもアートや福祉、教育などの分野で複数のチーム・プロジェクトの併走をこの1年続けていました。前職の鳥取大学附属芸術文化センターで2年間文化庁事業連携コーディネーターとして働き、アートマネジメントという領域を実践しながら修得したことが今の動き方に大きく影響しています。また学生時代からワークショップやインタラクションといったデザイン領域を学んでいたことや複数のチーム制作が常日頃から動いていたというのも原点なのかもしれません。

それぞれの関わりの中で求められる役割は違いますが、いずれも自分が今まで培ってきたものやそれぞれで生まれたものを繋ぎ合わせて展開するか還元するか、が鍵となっているように考えています。

YELL FORでの併走は、自分自身の2つの経験を組み合わせながら取り組んでいきました。1つは、私が今までデザインを学んだり、IT企業や制作会社で働いた中で身についた「制作」に関する経験。もう1つは、大学勤務や非常勤講師、研究チームとの関わりを通して生まれた「教育」についての経験です。私は大学卒業後に就職し社会人となり10年が経ち、良いことも悪いことも含めて、さまざまな経験があったように思います。「働く」が鍵となるYELL FORにおいて、自分の経験をメンバーに伝えたり自分自身もより考えて共に前へ進みたい、と考え一緒に取り組んでいくこととなります。

デザイン講座で何を伝えるか

「YELL FORメンバーのためにデザイン講座をやって欲しい」という依頼は併走当初からのものでした。デザインチームとして制作を担当するメンバーもいれば、制作は担当しないもののデザインについて学びたいメンバーもいて、そもそもデザインとは?というメンバーもいるような状態。講座の回数は3回、限られた回数の中でメンバー全方位に向けたものを実施するのは難しいため、それぞれ参加対象者を絞り、メンバーが増加して徐々に仕事に慣れてきた8-9月に開催しました。

第1回は「対象者:メンバー全員」としてメンバーであれば誰でも参加可能・後日記録動画視聴というような条件で実施しました。私が昨年度、学校法人鶏鳴学園あすなろ高等専修学校で高校1年生に向けた美術1の授業を実施していたこともあり、高校生たちへデザインを伝えるために作ったスライドも織り交ぜていきました。

「デザイン」の過程を知ろう|第1回スライドより

デザインは造形や表現、成果物などを指すものではなく、①設計したことに基づいて実際にモノを形にしていくこと、②目的を達成するための思考の枠組み、コンセプトの設計、といったことを指し、目的のための計画・工程そのものがデザインといえます。最終的なデザインデータやそのデータの色、形、技術、機能は目的を実現するための手段のひとつです。

そんな過程・概念を伝えた上で、講師である私の経歴や考えを明らかにし、「デザインで大事な心構え」を中心にレクチャーとワークショップの時間を取ることに。「明日から使えるデザインノウハウ」というような思考は当初からなく(デザインでこれをやればOKというものは本来ないはず)、私自身が実践を重ねていく中で感じている心構えを5つほど伝えていきました。その中の要素をワークショップとして体験出来ないかと考え、当時勉強を始めたばかりの「対話型鑑賞」を実施し、絵画作品をみながら各々の意見を伝え、それを聞く、考える、という時間をとり、参加したメンバーにデザインへの意識構えをしてもらえるような講座としました。(この講座をきっかけに「対話型鑑賞」は実践していくのみだなと感じ実践を重ねていきました。もしご興味ある方はこちらへ。)

第2回は「対象者:デザインチームメンバー」として各々がこれまで担当した制作物についてフィードバックをするという時間としました。こちらについては、後ほどの「デザインチームのあり方とコミュニケーション」という項目で詳しく触れたいと思います。

第3回は「対象者:デザインチームメンバー」として前半:グラフィックデザインに関する基礎レクチャー/後半:デザインチーム会議を実施。前半部分については、YELL FORメンバー全員が後日記録動画視聴可能なように開放しました。(前職でオンライン講座運営をしていたので、後日対応も難なく...🙏)

デザインチームメンバーはグラフィックデザインを体系的に学んだことのない学生や社会人がほとんどだったことやインターネットで情報源を引っ張ってくるよりもまとまった内容で学習した方が望ましいと考え、鳥取県内の各市町村で借りることが可能なデザイン書籍を参考としたレクチャーを実施。デザインの概念的な話からレイアウトや配色のような表現のためのポイントを抑えた内容とし、「この考えをベースに、これから身につけていく」という捉え方をメンバーに促しました。レクチャーする内容を「この時間で絶対に身につけないといけない!」という考えは学習状況として不健全ですし、私自身高校生の頃から独学でデザインの勉強を始めて15年以上経ちますが、たくさん失敗をして「デザイナーやっていくの無理」という経験もして、今の「デザインを軸にいろいろやっていきたいんだ」という自分があるように思います。デザインは誰かの知識・経験を学びながら、自分がどう身につけていくか、という分野だと私は考えており、私からのレクチャーをメンバーそれぞれの血肉にするためには、実践のみと改めて伝えました。

デザインチームのあり方とコミュニケーション

先ほどの「デザイン講座で何を伝えるか」で触れましたが、YELL FORのデザインチームメンバーはグラフィックデザインを体系的に学んだことのない学生や社会人がほとんどでした。さらに担当毎に制作が進むため、デザインチームとしてメンバー同士のコミュニケーションはとれておらず、藤吉さんとの面談の中で不満をこぼすメンバーも。

YELL FOR自体が実践を通して改善し前へ進むプロジェクトなので、当時は確立されたものを提供出来る状態ではなかったと言えます。そういった状況を改善するため、デザイン講座第2回でのフィードバック会を皮切りにデザイン定例会という場を持ち、メンバー間でのコミュニケーションを促進することにしていく方針に。また、デザインチームとして集まっているため、デザインに関しての知識や経験を増やす機会となって欲しいという考えを込めて、私も含めたメンバー同士で学び合えるような時間としていきました。

フィードバック会で使用した情報共有シート①

このシートは、事前に制作担当者が情報を記入し、会の中で各々が担当している制作に関してメンバーに共有するためのものです。制作データは完成した状態のものもあれば、途中経過のものもあり、各々の進捗状況によりけり。①案件について(依頼内容)と②制作意図(自分の考え)は、担当者自身の言葉でまとめ、発表してもらいました。意図としては、担当している制作物について咀嚼が出来ているか(情報の理解や要件と相違がないか)、自分の制作物を他者へ伝えられるか(アピール出来るか、困りごとを打ち明けられるか)など、といったところ。文字で伝えるのが不得手であれば発表の場のしゃべりで補うも良し、その逆も良しです。言われたことを鵜呑みにせず、今自分がしていることへの理解と発展をこの皇帝を通して身につけて欲しいというねらいでした。

フィードバック会で使用した情報共有シート②

このシートは、会の中で使用したものです。「制作データをみて、考えたことや気になるところ、疑問に思ったこと、なんでも発言していきましょう」という「対話型鑑賞」での進行を土台として、それぞれから意見を出し合い、聞いていくという時間を持ちました。藤吉さんと私からは制作の経緯の補足や要件を踏まえた意見であったり、デザインチームメンバーからは各々の考えを発言していただきました。

「対話型鑑賞」の進行役として経験を積んでいる私にとっては、この場は自分のファシリテーションを高めるためにも貴重な時間でしたし、参加者したメンバーも会を重ねる毎に発言量が増えていき、それぞれの視点が多角的になったり洗練されているように感じました。「対話型鑑賞」でいわれているような効果は会議の場面でも適応するのだな、と認識出来たように考えています。

後ほどの「オンラインで育まれるコミュニティ」という項目でYELL FORが使用したツールについて詳しく触れていきますが、デザインチームではチャット上のコミュニケーションよりも、フィードバック会のような定例会や3人、時には1on1で集まって話すといった対話でのコミュニケーションを重視していきました。文字でのコミュニケーションでは、言葉が強くなってしまったり相手の表情が読めず「この発言で大丈夫だろうか」と疑問に思う場面が多々あるように思います。例えば、スタンプでの意思表示はあるものの、デザインのやりとりの場合、言葉で考えを伝えるということが多くを締めるため、文字だけでのコミュニケーションは取りこぼすものが多いのではないでしょうか。そういった状況を解決出来ないかと、対話の時間をとったのです。運用を重ねる中で、言葉を伝え合い認識を擦り合わせることで前へ進んでいく場面が何度もありました。デザインを担当したメンバーそれぞれが、仕事を通して前へ進む、ということを実践していていったように感じています。

オンラインで育まれるコミュニティ

講座やデザインチームのことを綴っていきましたが、YELL FORのコミュニケーションがどこで行われているかというと、オンラインです。前回のnoteで、そもそものYELL FOR原点は、新型コロナウイルス感染症の影響、ということを書かせていただきました。そういった状況下でも在宅で出来るリモートワークとしてYELL FORが存在しています。学業や子育てによる時間制約があったとしても、スキマ時間を活かしながら働くことが出来たり、対面上の不得手を気にすること無く就業することができる。加えて、IT基本動作/リモートワーク/業務改善のスキルを学べるのです。リモートワーク未経験のメンバーがほとんどでしたが、YELL FORが用意する基礎とフォロー、それぞれの研修を通して、メンバー全員が滞りなくオンライン上でコミュニケーションをしている状況だと言えます。

YELL FORに取り組む様子(イラスト:YELL FORメンバーサエキさん)

YELL FORでは、Slackを用いたチャットでのコミュニケーションとzoomを用いた対話でのコミュニケーションが行われています。メンバーが少なかった頃は、担当する仕事間でのやりとりしかない状況でしたが、メンバーが増え始めてから「モーニングルーティン」というメンバー主体の催しが定期開催されるようになりました。

この取り組みは、おおよそ朝10時から開催される場なので「モーニングルーティン」と題されています。メンバーそれぞれの近況共有や、テーマを設けた雑談を行い、それぞれが担当している仕事は一度忘れ、ゆるやかな場として成り立っているのです。私も何度か参加し、デザインチーム以外のメンバーと関わる機会は滅多にないので、会話を通してそれぞれの考えをお聞きしたり楽しんでいました。

YELL FORメンバーサエキさんがデザインした卒業証書(2021年度上半期ver)

また、YELL FORはその一部がキャッシュフォーワークという助成を受けて実施しているプロジェクトという性質があり、多くのメンバーが6ヶ月で卒業していくシステムです。そのため、半期に1度、卒業式を開催しプロジェクトからの巣立ちの儀式を行います。卒業式も「モーニングルーティン」同様に卒業生企画。企画、卒業証書制作、当日イベント進行などは全てメンバーが実施。2021年度に2度行われた卒業式では、「空港」というコンセプトでYELL FOR卒業後の行き先であったり、これからの人生も旅をし、また何か縁があれば巡り会えるのだ、ということを表現するような素敵な時間となりました。

私は講座やチーム運営といったプロジェクト運営の立場で関わっており、メンバーと異なった視点や考えでYELL FORに関わる身です。ただ、メンバーの自主的な取り組みや動き、YELL FORに抱くそれぞれの考えに刺激をいただいており「素敵な人たちが集まっているYELL FORが今後もよりよくあるように自分が出来る関わり方で一緒に育てていきたいな」と育まれるコミュニティをみて、改めて思うのでした。

YELL FORについて&関連記事

YELL FORは、「仕事がめぐる、前へすすむ」をサービスコンセプトに、企業の広報・事務などの業務をアウトソーシング出来るサービスです。子育て中の女性をはじめ鳥取県を中心としたメンバーで「リモートチーム」を組み、離れていても近くにいるかのような絶妙な距離感で、お客様の事業・組織の前進をサポートしています。代行業務の99%をリモートで対応することで、仕事のやり取りを通して社内のデジタル化が着実に進んでいきます。

2022年3月31日にサービスサイトをリニューアルしましたので、下記URLより是非ご覧ください。

この取り組みをもっと知りたい方は、サービスサイトや関連記事を是非ご覧ください。


いただいたサポートで本を買ったり、新しい体験をするための積み重ねにしていこうと思います。