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【CIID Summer School】問いをつくるためのPeople Centered Researchとは?

デンマークのデザインスクールCIIDのサマースクールで、People Centered Research, PCRを学びました。具体的にどんなことを学んだかをこれから書いていきたいと思います。
今回はPCRのそもそもの部分を、具体例やマインドセットとともに説明していきます。

そもそもPCR/People Centered Researchって?


投稿初日までPeople centered designだと思い込んでいたものの、参加してみるとそのデザインプロセスの中でも重要な「問い」を立てる部分でした。
簡単に言ってしまうとPCRはデザインプロセスを行う以前に、今までの前提を書き換えるような、課題を明らかにするための定性調査とその分析だと私は認識してます。
下にちょっと難しい言葉での説明も書いておきます。

デザインの対象となる人のニーズや行動、態度を理解し、デザインプロセスに活かすための調査手法。
検討課題の定義、インスピレーション、協創、プロトタイピングや効果検証などデザインプロセスにおけるさまざまなステージに関わる人を対象とします。この手法を使う大きな理由は、人の真の意図や言動、ニーズを反映し、ユーザーにとって価値のある解決案を導くためです。

デザインシンキングでよくみるダブルダイヤモンドの中でも1つめのダイヤに当てはまるんじゃないかと思います。

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似たようなワードでUser Centered Researchがありますが、
ユーザーという言葉で考えに入れるべき実際の利用者が限られてしまうとも言えます。
ユーザーである前に、人だということを念頭に入れてPCRは行われます。
熱烈なファンから、非利用者まで製品やサービスのデザインが対象になる誰も巻き込む必要があります。

なぜPCRが必要か?

How might we...?から始まる問いを最初から設定しようとしても、人は固定概念に基づいた前提に大きく偏ってしまいます...
ユーザーの潜在的な欲求に答えるような製品の役割/Jobsを持たせるには、ユーザーが苦痛/painを感じるところの根っこにはなにがあるのかを明らかにする必要があります。

WE ALL HAVE MANY JOBS TO BE DONE IN OUR LIVES. WE HIRE PRODUCTS TO DO THOSE JOBS FOR US. CLAYTON CHRISTENSE

有名な話ではこんなものがありますよね。
穴を空けるドリルじゃなくて、穴自体がユーザーが真に欲してるものなんだという話。
さらに言えば、穴が欲しい目的を明らかにしていくことが重要です。

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例えば、壁に絵がかかっていてほしいということなら、穴そのものもなくていいですよね?
だって今では液晶を壁に設置することだってできるんですから。

PCRに必要なマインドセット

PCRでは”人”に焦点を当てます!

人に焦点を当てた観察やインタビューでまだ具体化されていない潜在ニーズと、それに繋がる新しい着眼点、インサイトを明らかにしていきます。

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特に非言語コミュニケーション(目、手の動き)に焦点を当てると、言葉では表せていない困難や苦痛を感じ取ることができます。

ほとんどのユーザーは無意識に製品やサービスを利用しているため、実際の発言とは異なる複雑な心理を汲み取る必要があります。そのためには、すでに持っている価値観に捉われず、視点をオープンにしましょう。
そして、観察の過程では目の前の人を、ありのままに受け止めることが重要です。

PCRの4ステップ

PCRはおおまかに4つのステップからなります。
それぞれの概要はこんな感じ

Scope:取り組む課題の範囲を決める
Approach:どんなメソッド、ツールを使うのか、どこの誰に参加してもらうのかを決める
Engage:実際の人々の発言、行動から情報を集める
Analyse:集めた情報を、デザインプロセスに必要なインサイトに変化させる

一番初めのステップ、Scopeでは観察やインタビューといった手法を通じてなにを得たいのか具体的にします。これによって、次のステップ、Approachでやり方の部分を決めることができるだけでなく、観察やインタビューの対象者のリアルな言動を受け止めるためにはどんなことを事前に知っておくべきかが明らかになります。
特定の分野の知識がないと、なにをいっているのかわからん!リアルにその人の立場とか不安とかが感じられない...なんてことあるでしょうから!

Approachで検討する手法をざっと書き出してみるとこんなものがあります。

<シャドウイング>
実際にその製品やサービスを利用している誰かの動きや態度を観察します。
どうやって目的していたこと(お出かけなら目的地のチケットを買えたとか?)達成できたのか尋ねます。
まずは不審者にならない程度にストーカーっぽく観察して、インタビューで確認してみます。

<デプスインタビュー>
1対1で、時間を限ってインタビューを行います。可能な限り、相手の考えを深く掘り下げるような質問をして、なにが本質的に重要なのかを明らかにしていきます。

<専門家へのインタビュー>
ユーザーやシステム、市場などに対する専門家の知見を得ます。

<ゲリラインタビュー/インターセプトインタビュー>
人に突然話しかけて、簡単なインタビューを行います。いろいろな視点からの物事に対しての知見が得られるので、本格的なインタビューを行う前に必要な要素を検討したり、なにに焦点をあてていくのかを決める追加の情報が得られます。

次回のnoteでは実際のフィールドワークでどんな観察、インタビューをおこなったのかをご紹介したいと思います!

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