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とがった武器は持たずに、オトナと子ども、そして地域と教育を繋いでいく。NPO法人だっぴ事務局長、森分志学

「武器が何にもないんですよ、ぼくには」

武器がナイ?
岡山で生まれ育ち、地元の大学院を出て、大阪の広告代理店に勤め、NPO法人だっぴの事務局長にと乞われて岡山へUターン。現在、立派にだっぴを運営しているあなたに、武器がない?


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NPO法人だっぴ、とは

詳細は上記のHPをご覧ください。

だっぴの活動を簡単に説明すると、地域のオトナと大中高生を繋げるプロジェクト。対話がメインのグループワークを通じて、子どもたち・若者たちに「世の中にはこんなオトナがいる」「こんな考え方がある」「こんな働き方がある」「こんな生き方がある」ことに触れてもらう。

その先で生じる子どもたちへの影響や、最終的な目的などに、結果や分析があるけれど文字数の関係でそこは割愛。それもまた詳細はHPをどぞ。

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私はだっぴの活動が大好きだ。3年前に岡山へ転居した時、どこからともなくだっぴの情報が流れ込んできた。だっぴ主催のイベントに参加し、私が子どもの時にも、こんなふうに先生や親以外のオトナと話す機会があったら、どんなに良かっただろうと感激した。何もかもが一度のグループワークで解決できるわけではないが、親や学校の先生以外のオトナと話せる機会は、子どもが様々な人生観や職業観を知れる貴重な場だ。

子どもは、幼ければ幼いほど視野がせまい。目で見ているものだけではなく、考え方も。高校生は体格はオトナと変わらず、しっかりしているように見えて、どうしようもなく何も見えていない。自分の半径3メートル以内の出来事の後始末もできないのに、いずれは何者かになれるだろうという肥大した自信がある。そのくせ、心はとても不安定。それがアオハル。
不安定だからこそ、たくさんの人と話をしてほしい。単に優しいオトナだけではなく、うるせーオトナ、熱いオトナ、冷たいオトナ、お節介なオトナ、楽しそうなオトナ、機嫌のいいオトナ、機嫌の悪いオトナ。色んな人がいるとわかるだけで、将来への選択肢は広がるだろう。

最終的に自分にとっての解決や正解を出すのは、子ども自身であってほしい。でも前が見えなくなったり、迷ったりしたときは、私たち大人が狭い視野の角度をぐぐぐと広げてあげたい。視界をさえぎるものを取っ払い、まだ知り得ぬ世界をのぞかせてあげたい。

NPOだっぴは、その手助けをしている。


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そして、冒頭の森分志学さん。

NPO法人 だっぴ 事務局長。29歳。
自称「意識高い系ミーハー」。彼からこの言葉をきいた時、私は吹いた。昨今、「意識高い系」の言葉には様々な意味が揶揄されている。それを自分で言った上、さらに「ミーハー」まで添付。イケイケである。

しかし、意識高い系のステレオタイプなのかと思いきや、そうではなかった。大学在学中はマージャンとパチンコ三昧。当然、まわりの友人も同様で、ものすごく怠惰な4年間を送ったらしい。
「大学は東京の私大にと考えていました。でも、高校がものすごく『国公立大学進学者』の数字にこだわっている時で、先生に強くすすめられるまま地元の大学に進んだんです。思い返せば、残念な進路指導ですよね。そんな気持ちで入った大学だったので、何を勉強して良いのかも見当たらず、気が付けば4年生になっていました」

ぼんやり過ごした大学生活。卒論を進めている最中に知ったのがだっぴだった。当時はまだNPO法人化はしておらず、有志数名と、学生ボランティアで細々と運営している組織だった。
すでに今のプログラムと変わらない学生×オトナのワークショップの形ができていて、学生の範囲を大学生から高校生、中学生へと広げている最中だった。

森分さんは「もやもやしている若者×オトナ」のやり取りが興味深く、そのまま大学院修了までだっぴに居つくようになった。


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森分さんはいつも穏やかだ。イベント以外で大きな声を出しているところを見たことがない。相槌は柔らか、そして時に返事は曖昧、たまに「聞いてる?」と思うことさえある。イベントや仕事で何度かやり取りをしているが、この記事を書くにあたり取材をさせてもらった際に、初めて彼の長セリフを聞いた気がした。そして、話が進むうちにものすごく熱いことをさらりと言う。

学校教育と社会教育の橋渡しがしたい。教育を提供する人たち同士がだっぴを介して化学反応を起こしてくれたらいい。教員のはたらく環境に改革をもたらしたい。etc…

だっぴは比較的マネタイズができている団体だ。
各方面からの委託事業もあり、企業や行政、自治体ともパイプができている。だっぴではなく森分さん自身に、教育分野での仕事の依頼もある。

それでも彼は自分に「武器がない」と言う。
まじめ。

「意識高い系というのは、その通りなんです。多勢の中で『こうしたらもっとよくなる』と声をあげるのは全く苦じゃない。企業勤めのときもそうでしたが、声をあげるわりに変に浮くこともなく、うまく立ち回っていた気がします」


それだ。
「どんな状況であれ、うまく立ち回れる」が、森分志学の武器じゃないか。

私が見る限り、だっぴは岡山の教育界の中間支援組織の役割を担っている。子どもとオトナ、地域と教育、そしてそれらを取り巻く異分野のモノ・ひとの橋渡し。そんな組織であるだっぴの運営は、バランス感覚の優れた人間じゃないと無理だろう。人間相手の仕事ゆえ、さらに人見知りをしないミーハーならぴったりだ。


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森分さんは「最近、クール路線の弊害が出てきている」と言う。だっぴに出入りする大学生から、どうやら「怖い」と思われているらしいのだ。
(てか、そのクールっぷりは「路線」だったのか)

休日は何してる? の質問に「主観的には休んでますが、客観的に見るとそれは休みじゃないって言われます」と答えるのはどうなのか。
若い学生たちに、怖いのではなく面倒だと思われているのでは…?と取材を振り返って私は思う。

学生の皆さん、森分さんは怖くない。私見ですが、きっとじっくりゆっくり話を聞いてくれるタイプだ。取材中、話を聞きに行ったはずが気が付けば私が話している場面もしばしば。若いひとからの相談ごとはおそらく大歓迎だ。……と、思いきや。

「あ、だまされましたね。自分のことを話すのが苦手なので、聞くのが好きみたいにしてごまかしているんです」とニヤリと笑う。

さらに
「たくさん人の話を聞いていると、相手の論理で相手の思考を整理しているような感覚になります。きっと、相談されることには向いていると思うんです」と冷静に自分を分析する。

聡明で思慮深くて冷静なオトナに見えるが、人生に迷う学生と同様、彼も紆余曲折してココにいる。
自分のやれることは何かと追求しながら、人と人を繋ぐために日々奔走しているのだ。


あからさまな武器などいらないじゃないか。
森分志学は、今のままで魅力的だ。
武器など持たずに、その柔軟さで、だっぴを、岡山の教育界をけん引していってほしい。


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そんな森分さんですが、来月は内閣府の地域コアリーダープログラムの一環でフィンランドへ派遣渡航。
「英会話、マズイす」とか言ってます。


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