見出し画像

提出の先に、読む人がいる。待っている人がいる。中学生向けライティング教室【アスエコ 未来教室 SDGs 岡山】

フリーランスにとって、リピートでの仕事のご依頼は飛び上がるほど嬉しいものです。初めての仕事を終えたあと、私は大抵、あれもすれば、これもすれば良かった、いやあれは言わなくてよかったと数日寝込みます(心理的表現)。あの人から、次のお仕事は来るかなあどうかなあと考えつつ、そのような感情は日常にまぎれて小さくなっていき、どうにか自分の中で昇華させている状態です。

一度目が楽し過ぎて、二度目の依頼を心待ちにしていた仕事がこちら。

アスエコってなに?

アスエコは、見て、感じて、気づいて、行動に移すきっかけとなる場を目指しています。
アスエコは、環境の大切さを知るために、子どもから大人まで楽しく学べる環境学習施設です。
地球や地域の環境について、見て、感じて、気づいて行動に移してもらうためのきっかけとなることを目指しています。また、講師の派遣や環境情報の受発信、イベントの実施など、様々な事業を展開しています。

アスエコ ホームページより抜粋

アスエコは「岡山でSDGs学習をやるならまずはアスエコへ」とうたわれるほどの、SDGs学習の先駆者。様々なワークショップや講座を企画し、2020年秋から2021年春にかけて「未来教室」という中学生向けの環境学習教室の第一期を開催しました。第二期は2021年春~夏で開催。しかしコロナ禍ゆえ修了が12月に延びました。

未来教室ってなに?

環境学習センターの講座ですが、未来教室は地球の環境問題だけに特化しているわけではなく、世界情勢から発生する数々の問題点、それらを日本へ、地域へ、そして自分ごとへ引き寄せるには? に焦点を当てたもの。いわゆる、「自分で考えて行動する」ためのレクチャーが目的です。しかし、決して「こうすべき」を押し付ける場ではなく、多様な生き方をするオトナと知り合い、そして様々な話を「聞き、考える経験の場」を提供したい、この講座にはそんな想いが込められています。

伝わる文章とは? 中学生のレポートを、読んで読んで読んで……感じたこと

第一期と同様、第二期も全6回の講座。私の出番は6回目の最終回。しかし、6回目当日まで黙って待っているわけではなく、それまでの教室開催で提出された中学生のレポートを読んでコメント入れて都度返却をしていきます。添削をという依頼でしたが、誤字脱字や文法の誤りなどには一切触れませんでした。そんなものは、ここではさほど問題ではないのです。正解のあるものに関しては、これからの経験の中で彼らは少しずつ身に付けていくでしょう。それよりも、「どうしたら読む人に伝わるのか」に焦点をあてていきたいと考えました。

レポートの設問はいくつかありますが、軸は「感想を言語化する」。参加者の中には積極的参加ではない子どもも当然いて、そのような状態だと、やはりレポートにもやや億劫さが見え隠れし短いコメントになりがちです。それでも、その短い言葉の中に、回ごとの機微が感じ取れます。深く感銘を受けたであろう回は、これまでになかった言葉運びがあるのです。複数回にわたり同一人物の文章を読んでいると、不思議と書き手の人となりがぼんやり見えてきます。

  • ここはもっと詳しく聞きたいです。

  • 何かしたいと思ったんだね。皆と具体的に話せたらいいね

  • この例え話、すごい!

  • この言葉が出るのは、まわりをよく見ているから!

などなど、こんなふうに「もっと聞きたい」というリアクションをメインに少しずつコメントを入れていきました。そうしてふと気が付いたことがあります。決して全員ではありませんが、レポートの中には、目的が「提出」になっているだろうものがありました。書いた本人に確かめるわけにはいかないので、私の憶測でしかありません。しかし、普段から課題提出に追われている最近の中高生なので、こんな傾向があってもおかしくはないのです。
「課題提出だけでも守っていれば『3』はもらえるよ」
学校によっては、このような噂が飛び交っている様子です。なにごとにも「提出」が目的になってしまうのも当然かもしれません。

さて、ここで私が参加する講座の軸は決まりました。提出の先には必ず読む人がいる、待っている人がいる。この場合、彼らのレポート提出を首を長くして待っているのは主催者のアスエコさんです。伝わる文章……というよりは「伝える文章・伝えたい文章」を能動的に書くコツを伝えましょう。アスエコさんが抱く「未来教室は決して『学校』じゃないので子どもたちに文章を自由に書いてほしいんです」という想いにも寄り添える気がします。

書くことは、伝えること

講座当日のおしながき。(イラスト:猫野サラ special thanks!

自己紹介のあと、①に入る前に私が最近気に入っている言葉をひとつご紹介。池澤夏樹さんの言葉です。

テーマについてお話する前に…と前置きをして

動画で撮れば残るじゃん!なんて。
動画撮影が手軽な時代ですが、それはさておき。

書き起こそうとするそのとき、誰でも頭の中で編集作業を行っています。SNSでの投稿ひとつ取っても、「何を伝えようか」ときっと皆さんは思考しています。そう考えると、文章を書くことは難しいことではないし、もっと楽しいことになるかもしれません。そして、「書き残しておく」のはなぜでしょうか。身近な誰かに、もしくは世の中に、後世に、伝えたいからです。
「書き残す」「文章を書く」
それがどんな形であれ、書きたい、書こうとする姿勢か尊敬に値するものだと私は考えています。

ちょっと気取ってこんな話を。
普段、学校で「感想文」や「作文」など、もっと学習的な「書き物」に頭を悩ませているであろう年代の子どもたちです。私の考えが届いたかどうかはわかりません。けど、これから講座で話す内容は、すべてこの話が根底にあると最初に知ってもらいたかったのです。

さて、講座開始。

会場は、北長瀬ブランチ。新しくてきれいなワークスペース。

久々にオフラインでの仕事でした。直に子どもたちと会えるのはとても嬉しいですね。ただ、直に会うとマスク着用必須で、表情がわからないという高いハードル。口元が見えないと面白がっているのか、退屈なのかが表情から読み取れません。声が出るほど大笑いさせられる話術が私にあればそれが一番なのですが、少しずつ挟んだ私のボケやジョークはどこで昇天したのかが全くつかみ取れず(お察しください……
それでも、熱心にメモを取ったり、突然の私の指名に迷いながらも一生懸命答えてくれたりする子供たちの姿に、私も元気をもらいました。

未来教室第二期はこの日で最後でした。私の一通りの話のあと、個々の総まとめ発表のために言葉をひねり出す子どもたち。こういうのどう伝えたらいいですか? どうしたらいいかわかんない! もう書けました! 子どもたちの言動は様々。同じ時間に同じ場所で同じ講座を受けてきた同志ですが、「まとめ文」に出てくる言葉は違います。当たり前のことですが、それはとても素晴らしいくて愛おしいです。

まとめ文作成の最中、「言いたいことはたくさんあるのにまとまらない。どうしたらいいの?」と助けを求めてきた子がいました。
たくさんある!なんて素晴らしい!じゃあさ、未来教室を終えて帰宅したとき、どんなことを考えたか覚えてる? と投げると、少し考えてからその子が出したのは「家族に未来教室のことを話したかった…かな?」
ナイス。家族に伝えたいことが増えた、それを切り口に行こう!と話すと、嬉しそうにシャープペンを走らせていました。この素直さと熱心さ。書く仕事をする者として、感激したり反省したり。

伝えること、思考すること、そして書くこと
今回の私の話で、これらが全て繋がっていると伝えられたでしょうか。文章を書くときに、「そういえば、あのライターがこんなこと言っていたっけ」と思い出してくれたらいいなあと思いながら、会を終えました。

後記

そして、包み隠さずお伝えすると…
私、写真では格好つけて余裕の表情で話していますが、失敗もたくさんありました。スライド資料の不備や、話したいことが止まらなくなったための時間オーバーなどなど…アスエコスタッフの皆様にご迷惑をたくさんおかけしました。こういった場は何度か経験していますが、プレゼンは本当に難しい。第1期よりもさらに充実した時間にしたい! というやる気が空回りし、当日予定になかった小さな話が出てくる出てくる……。2022年は、プレゼン上達が目標のひとつになりました。

新しい仕事を引き受けると、新しい目標が見つかります。フリーランス仕事人は、こうやって一生こまねずみのように生きていくのかもしれません。それでも、貴重で素敵な時間をいただけたことに大変感謝しております。アスエコの皆さん、本当にありがとうございました。

未来教室第三期開催の計画も進んでいるようです。様々な仕事を持った大人、個性的な大学生の皆さんと充実した時間が過ごせること間違いありません。近隣にお住まいの中学生の皆様、興味があったらぜひお問い合わせください。

これまでの未来教室の詳細は、こちらのアスエコnoteに。第二期は、大学生ライターのありづかそらさんがまとめてくださっています。









最後まで読んでいただきありがとうございます。面白いと感じたら、スキのハートは会員じゃなくてもポチっとできますのでぜひ。励みになります♪