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まとめ 和田誠 『お楽しみはこれからだ 映画の名セリフ』 全7巻 国書刊行会


本シリーズは「PART 7」で完結、らしい。「愛蔵版」ということで、今時珍しいグラシン紙のカバーをかけてケースに収められているのだが、そこまでするほどの内容か、と思わないわけでもない。そういうアンバランスも遊びのうちなのだろう。映画というものに特段の関心が無い私のような者でも楽しく読み終えることができたのは、やはり和田誠という人の文章の力なのだろう。

日本語の吹き替えや字幕の付いた作品をもとに語られている所為とは言いながらも、国や言語を超えて物語が人の心を動かすことに改めて驚いた。外国で制作されて日本で上映されるようなものは、そもそもそれなりの出来なのだろうから、驚くようなことではないのかもしれないが、それでも言語とか文化とか国境を超えて物語が何かを伝えることがすごいと思う。

いわゆる「クリエイター」の中には、自分の作品が広く世間に影響を与える世界を夢見て日々精進している人たちもいるのだろう。ゲージュツ作品とは違うが、今ある世界的な大企業の中には、個人宅のガレージで作ったものを売るところから始まった会社もあるし、創業者が健在し陣頭指揮を執っている会社もある。何がどう転ぶかわからないのが世の中の面白いところだ。生きていれば、そんな面白いことに遭遇するかもしれない。

社会の慣習としてはトラック・レコードなるものが云々され、しょーもない人生を重ねてきた圧倒的大多数はしょーもないままでこの世から去っていくのだろうが、生きている限りは運命の気まぐれの恩恵だか災厄だかに巡り合う可能性が確かにある。そういう自分自身の現実の人生はどんな映画よりもたぶん面白いと思うのである。何もなければないで、あればあったで。なぜなら、私自身が観察者であると同時に当事者であるからだ。どんなに贔屓目に見てもこれまでは何もなかったのだが、腹の底から「お楽しみはこれからだ」と思っている。

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