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休日のすごし方 第1088話・1.24

「全く異なる展開になっているかな」目を覚まして起き上がった。時計を見る。時刻以上に気になったのは曜日。「本当だ戻っている」今でも不思議なことだが、24時間前にタイプトリップしていた。これは1日だけの休日が2日になったのと同じこと。

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 24時間前を思い出す。あの時起きて窓を見た。雪が降っている。だが今日はせっかくの休日だからどこか遊びに出かける予定だ。
「行かないわけにはな」と思い準備をしようとしたら。「やめておけ」と突然声がする。
「誰?」ひとり暮らしなのに、なぜ声がするのだ?空耳かと思ったが、あまりにも鮮明に聞こえる声。声は隣の部屋から聞こえた。隣の部屋に入ってみると、思わず全身から鳥肌が立つ。「な、なぜ...…」そこにいるのは赤い色をしたタコだ。そのうえ8本足のうちの2本を起用に使ってラーメンを喰っているではないか!

「ゆ、ゆめ、夢だよな」と、即、そう信じる。信じたいが意識が鮮明だし、指で手をつねっても痛い。どう考えても現実にある光景のように感じてならないのだ。「よいか、夢かどうかはこの際どうでもよい。今日は出かけない方が良いということだ」タコが口を開く。
「な、なぜタコが...…」腰を抜かしたかもしれない。すぐには体が動けなくなっている。「この雪だからだ。寒いし、滑るぞ」そう言ってご機嫌にラーメンをすする赤いタコ。すべてにおいて不思議な光景がそこにある。

 だが、あまりもの恐怖心は思わぬ行動に出た。当初はそのタコを退治しようと考えてみる。だがタコは意外に大きい。しっかり測ったわけではないが、1メートル近くの大きさはありそうだ。「あの足で攻撃されたら」と思い、あっさりとタコへの攻撃を諦める。
 それでもどうにかして立ち上がり、タコの様子を見ながらあとずさり。タコはそれ以降は何も言わない。淡々とラーメンを食べている。それも旨そうな音を出しながら...…。

「逃げよう、怖い」先ほどの部屋に戻り、慌てて服を着て出かける準備をした。もう一度、隣の部屋にいるタコの様子を見ようかと思ったが、とても見られない。見ようと思った瞬間に全身に電気のようなものが走る。「とにかく逃げよう。この場所から」

 こうして外に出てきた。外は吹雪いているが、雪はまだ積もっていない。厳密に言えば人が歩いていないところはうっすらと積もっている。だから歩けるが、とにかく正面から風が強い。「傘を持ってくればよかった」あっという間に髪が白くなっていく。
「予定通りは無理だな」途中であきらめた。と言っても謎のタコがいるから家には帰りたくない。「どこに行こうか?」コンビニという選択肢も考えたが、もっと時間が過ごせる場所ということで、少し無理してショッピングセンターに向かった。片道30分の距離を歩く。途中で後悔しつつもどうにかショッピングセンターにたどり着く。「ふう、温かい」建物の中に入った直後の感想だ。

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「お、とっとと」ショッピングセンターで時間をつぶし、暗くなってから帰る。雪は止んでいたが路面が凍っていた。油断するとすぐに滑る。ゆっくりと帰るがここであることに気づく。「しまった。帰りも30分、いや、これ1時間かかるぞ」

暗い中、足元を気にしながらの帰り道。さらに嫌なことが続く、また雪が降ってきた。傘もないのにまた雪を頭にかぶりながらの帰り道。「ちょっとでも滑らないとすれば、あそこかな」と思って、雪の積もっている端っこを歩く。だがこれはより悲惨な目に、雪が靴の中に入り靴下を濡らす結果となってしまう。
「ひ、ひいいいい、凍えるよ」体をこわばらせながらの帰り道。せっかくの休日と思って出かけたが、吹雪の前に当初の予定を諦める。だけど謎のタコから逃げたかったのでショッピングセンターで無意味に時間を過ごした。そのうえ帰り道は凍えながら1時間近くさまようように歩く。まさしくバッドな休日だ。

「い、いるかな」どうにかして家にたどり着いたので、恐る恐る隣の部屋をのぞいてみる。だが真っ暗だ。何も音が聞こえない。「いないのか」電気をつける。何もいなかった。では朝のあのタコは幻なのだろうか?もうわからない。

「今日は散々な目に遭った。早く寝よう」こうして家で風呂に入ってすぐに寝た。
すると夢にあの赤いタコが現れる。「うぅうあああああ!」思わず大声を出すが、タコが消えることは無い。ただ今度はラーメンを食べていないようだ。「驚くな、言っただろう。雪の日だから出かけるなと」「あ、あああ、はい!」恐怖におびえながら答える。
「わかったら、良い。もう一度チャンスをやろう。休日を家で過ごしなさい。じゃあな」そう言ってタコは消えた。

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「不思議すぎる。いったい何がなんやら」もう一度時計を見るやはり1日戻っている。窓を見た。やっぱり雪が降っている。
「そうか、今日は休日だけど出かけるのやめておこう」同じ過ちを犯したくない。このとき恐る恐る隣の部屋に行ってみた。だが奴・タコはいない。いないが、そこには赤いタコのイラストが描いてあるカップ麺が見えた。



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