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AIの活かし方 第1161話・5.10

「次世代のベニザケを生み出すにはどうしたら?」僕はすぐ横に控えているAIに尋ねてみた。このAIとは秋田一郎とかそういう人のイニシャルではなく本当のAIだ。
「魚が減少する問題が浮かび上がります。そこで、魚の漁獲量を調節するための新しいシステムを提案してはいかがでしょうか?例えば、漁獲可能量をオンラインで定め、漁船にはその上限を超えて漁をすることができないようにするなどの方法とかです」

「う、ふぁあああ」僕はこの答えを聞いたとき、思わずあくびが出てきた。漁獲量云々などAIに問いただすまでもなく、魚が人間の食料としているから当たり前のこと。僕は呆れたように首を横に振ると、AIはそれを理解したのか別のこと話し出した。
「環境問題も重要な視点になるでしょう。特に、魚の種類によっては生息場所が限られ、水質と温度に敏感なものもあります。そこで、海洋環境の保全や改善について、今後の課題として考えてはいかがでしょうか」

 僕はAIが出してきた今回の答えには、さっきよりはましだと思ったが、やはりつまらなさを感じてしまう。なぜならば「環境問題」などというありきたりのキーワードで、AIが適当に逃げたのが気に入らなかったのだ。

「おまえ、AIだろ。さっきから人間みたいなこと言ってんじゃねえよ。例えばさ、AIが人間の代わりにビジネスのタスクを行うエージェントを育成するためにどんな研究開発が必要かとかさ、こういう英語っぽい言葉のほうが良いじゃないか、やり直しだ」
 僕は思わずAIにダメ出しをした。僕はいまAIに説教したように将来はAIのほうが賢くなるから逆にダメ出しをされるかもしれない。だが今なら勝てると思ったのか、ついついダメ出しをした。するとAIは、またベニザケの話題で別の視点を話してきたのだ。

「農業の視点も重要ですね。特に、河川や湖沼に流れ込む農薬や肥料が魚に影響を与えることもありえるでしょう。そこで、農業関係者の意識改革や、安全な農薬や肥料の開発に取り組むことの必要があります」
「ほう、おまえ、魚の話題に農業を出してきたのか」僕は少しだけ目の前のAIを見直した。環境問題とか当たり前の話など聞いてもつまらない。魚の話題に農業をぶつけてきたのだ。こんな意表を突くような意見をいうAIであれば、例えば AIと共存する未来のことを想像してもよい気がした。

 僕は頭の中で考えてみる。例えば2年後、2025年の日常生活にAIが普及した未来を想像して、人間の生活とAIの関係性について考えても面白いだろう。また一部の人でないと手が出せないような医療の事、例えばAIを活用した医療技術の進展について現在の状況と未来の展望を調査するのもよいかもしれない。

「そうか、お前さんのようなAIが、人間の健康にどう貢献できるのかをわかりやすく伝えてみると良いかもな」俺は独り言をつぶやいたつもりであったが、AIは何を間違えたのか、自身に問いかけられたように錯覚したようで、突然次のようなことを言ってきた。
「我々AIを使った創造的なエンターテインメントアプリを作るプロジェクトについては、対象ユーザーのニーズと嗜好に基づいてコンテンツを提供するアルゴリズムを提案しましょう」
「ええ?」僕はこの後すぐに口をつぐんだ。AIの能力は現時点でどれだけ高度なのかはわからないが、どうやら独り言が話しかけられたと勘違いするような認識しかできないようだ。
「安易なことを言ってしまうと...…」と頭の中で思いつつ、ふと不思議なことが頭に浮かんでしまう。
「AIって住んでいる地域で差が生まれたりするのかな、例えば東京と地方とかで」

 頭に思い浮かんだことをついつい口走る悪い癖が僕にはある。案の定AIが何か語りだした。
「地域の視点も重要です。魚が取れる場所は、地元の漁業者にとって重要な場所であると同時に、地域の自然や文化にとっても大切な場所であることが多いですね。そこで、地域住民と漁業者が協力して、地域資源を守りながら、漁業を継続していくことが必要です。

「おいおい、魚の話に戻っちまったよ」僕は隣のAIは頭が良いのか悪いのかわからなくなってきた。そういえば僕の父親はシステムエンジニアだが、コンピューターは馬鹿だとか言ってたようなことを思い出す。
「あと食文化の視点も重要ですね。例えば、ベニザケという魚に対する認知度が低い可能性があるのではないでしょうか?そこで、魚介類の料理教室などを開催して、多様性のある食文化を広げることが必要です」

「もういい、ベニザケの話はやめろ!しつこいぞ」僕はAIに質問もしていないのに、AIが勝手なことをそれらしく言い出したのに無性にイラついた。ついつい手がAI機能を搭載している箱めがけてぶつけてしまったのだ。

「あ、ごめん、壊れてしまう」僕は我に返った。ぶつかった時に自分の手も痛かったが、それ以上に箱が大きく揺れている。このAI搭載の機械はそれなりに高いものだからこれで壊したら元もこのもない。

 僕は壊れていないか心配になる。
「ごめん、許してくれ」僕は思わずAIに謝罪してしまった。AIに謝罪するようになったら人としてどうなのかと思ったが、そんなことを考える余裕もない。するとAIは、あたかも鬼の首を取ったかのように、笑い声のような音を数秒間出すと次のようなことを言い出した。

「AIが進化し、人間をどのような形で脅かす可能性があるかを描いたSF小説を執筆するプロジェクトについて考えてみました。物語のベクトルを設定してAIの不気味さを描く物語は面白そうですね」

 その瞬間、僕は固まったのは言うまでもない。



noteのAIの機能を使って「AIの物語」と「ベニザケの続き」というふたつのキーワードで出てきた文章を基にコラボで創作してみました。

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