見出し画像

歴史小説が好き 第1075話・1.11

「うかうかしていられない」夢野みみずくは、小説を書くのを趣味としている。これまで主にファンタジーの小説を書いていたが、そろそろ限界が来たようだ。どうも最近筆が進まなくなっていた。
「オロチさんのような歴史小説を書こうかな?」同じ小説仲間のオロチヤマタノスケは歴史小説をよく書いている。
「読んで感想をくれ」といわれて、定期的に書下ろしの小説を送ってきた。本来歴史はあまり興味のないみみずくだが、読まないと「感想をくれ」とうるさい。「もう、自分の作品書きたいのに」感想をよこさないとしつこく連絡が来るから読む。読むがいきなり躓く。何しろ歴史ものだから、独特の言い回し、あるいは知らない土地などが出てくる。いったい何が良いのかわからないのだ。

「『良かった』だけじゃ嫌がられるし」みみずくは困ったが、ここで一計を案じた。「そうだ、一度見よう見まねで歴史小説を書いてみよう」つまり歴史小説の感想をしっかりと言えるように自ら歴史小説を書けば詳しくなるし、もしかしたら歴史好きになるだろう。みみずくはそう考えたのだ。
「ちょうどファンタジーにも限界が来たし」みみずくはファンタジー小説に対する壁をぶち破るためにも歴史小説に着手した。だがいったいどこから始めたらよいのか全くわからない。

「まずどの時代がいいかだな」みみずくは考えた。歴史ひとつとっても旧石器時代から昭和・平成時代まで幅広い。
「一番古い方がいいかな」と、みみずくは考えてみる。だが旧石器時代の前の超古代史というのもあるが、それだとファンタジーの世界と変わらない。
「じゃあ新しい方」となれば昭和、もしくは平成だ。昭和は微妙だが平成はリアルに知っている。だから平成時代の歴史小説を書けばと考えた。

「だけど、平成の歴史小説って...…」みみずくは戸惑いだす。ファンタジーの場合は架空の世界を想像で書く。歴史小説もある程度わかった歴史があるが、特定の時代を書く場合は、ある程度歴史書で調べている。だがよくよく考えればそのほとんどが作者の頭の中の空想世界。「だよな。タイムトリップしなきゃわかんないもん」
 それに対して平成時代は知っている。少なくともみみずくとその周辺の話についてはそうだ。だとしても平成の歴史小説を自分の知っている記憶だけの世界で書いても「それってどうなの?」となってしまった。

「ダメだ、やめよう。どうしようどの時代がいいのかな」みみずくはいきなり躓いてしまう。「仕方がない、ヤマタノスケさんに聞いてみるか」

 こうしてみみずくは、ヤマタノスケにどうやったら歴史小説が書けるのか連絡をした。30分もしないうちに返事が来る。
「旅をしたらどうだ」と提案してきた。ヤマタノスケ曰く、旅先でみつけたもの、興味のあるものを見つけて、そこで歴史を探るのだという。
「旅かあ」みみずくは普段、脳内旅行で誰も知らない空想世界を旅し、それをやはり脳内で整理して、文章としてアウトプットしてこの世に誕生するファンタジーの空想世界しか知らない。
 歴史小説は実際にあった話を基にするから、その元になる場所に行った方が良いと、ヤマタノスケはいう。

「最初だし、それがきっかけで歴史小説が書ければいいかな」みみずくはあっけなくオロチノスケの提案を理解する。だがすぐに次の問題が発生した。どこに行くかだ。「どこ行こう、パスポート持ってないし」この時点で日本国外は無くなった。みみずくはこれまでヨーロッパや中東、アフリカといった国々に実際にはいかず、本やらネットやらでどんな所か調べたうえで、それらの世界観を元に独自の世界を作り上げている。
 こうして今までいろんなファンタジー小説を書いたわけだが、実際には入ったことが無い、だが行けばまた違うものが見えるだろう。

「それではファンタジーの世界をリアルに知るだけで、歴史小説なのかどうかよくわからないな」ただお金が無く、パスポートが無く、ましてや異国の世界に行く勇気の無いみみずくに、この選択肢はなかった。ただ言い訳をしているに過ぎない。

「だったら手始めは国内、国内」こうしてみみずくはより現実的な方法としてその気になれば明日からでも行ける国内旅行を選択した。「よし、まずはどこかに出かけよう」こうしてみみずくは地図を見る。
 都内某所に住んでいるみみずくは、最初は北海道や沖縄といった遠方を考えた。だけどあまり飛行機に乗ったことが無いから、それよりも鉄道やバスで気軽に行けるところを選択。

「やっぱり最初は日帰りかな」さらに範囲が狭まった。日帰りとなれば、手段はあるが、どうしても限られる。この時点でほぼ関東地方の範囲になったようだ。
「うーん、だったら」みみずくは地図を見ながらうなる。
「あ、そうだ意外にここ行ったことないな」みみずくはせっかくだから今まで行ったことのない県に行くことを考えた。
 東京以外だと、神奈川の場合は横浜に何度か行ったことあるし、箱根にも行ったことがある。千葉はディズニーランドに行った。茨城は水戸の偕楽園、群馬は草津温泉、栃木は日光に行ったぞ。となると...…」こうしてみみずくは、地図に書いてある埼玉県という文字を指さすのだった。


https://www.amazon.co.jp/s?i=digital-text&rh=p_27%3A%E6%97%85%E9%87%8E%E3%81%9D%E3%82%88%E3%81%8B%E3%81%9C

------------------
シリーズ 日々掌編短編小説 1075/1000
#小説
#掌編
#短編
#短編小説
#掌編小説
#ショートショート
#スキしてみて
#歴史小説が好き
#夢野みみずく
#オロチヤマタノスケ

この記事が参加している募集

#スキしてみて

525,302件

#歴史小説が好き

1,212件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?