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#歴史小説が好き

歴史小説への愛や、好きな作品・作家を語ってください!

人気の記事一覧

冲方丁「光圀伝 下」読書感想文

下巻は、27歳からはじまる。 駆け足気味で、青年から晩年までの光圀像が描かれる。 70歳のときに『大日本史』の草稿が完成する。 ここまでに40年を要している。 後に影響を与えた大書だと十分にわかった読書だった。 巻末の解説は筒井康隆となる。 この『光圀伝』を絶賛している。 冲方丁は、徳川光圀の伝記資料を実によく研究しているとのこと。 伝記資料とは、以下が挙げられている。 『桃源遺事』 『義公行実』 『義公遺事』 『玄桐筆記』 『西山遺聞』 聞いたこともない資料ばかり

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司馬遼太郎「坂の上の雲 1巻」読書感想文

この小説を読むのは真冬がいい。 で、部屋の暖房は消す。 寒いだろうから、毛布を膝に乗せてもいい。 白い息を吐きながら、かじかんだ指でページをめくると、得も知れない熱さを感じる読書ができる。 1巻は『春や昔』という章からはじまる。 明治維新で、260年余り続いた幕藩体制は瓦解。 主人公の1人となる秋山好古は、このとき10歳。 好古は “ よしふる ” と読む。 四国の松山藩の、下級武士の家に生まれた。 やってきた土佐藩の官軍に、松山藩主は降伏。 城下が占領されるのを、

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司馬遼太郎「坂の上の雲 4巻」読書感想文

日本の連合艦隊は、ロシア艦隊を追いかけている。 “ 黄海 ” でのことだった。 これほど滑稽な追跡戦はなかった。 小艦隊のほうが追いかけて、大艦隊のほうが逃げている。 のちに “ 黄海海戦 ” と呼ばれる戦いがはじまっていた。 追う側は悲愴である。 夜になるまでに追いつかなければ、所在がわからなくなる。 が、追いつくのは絶望にちかい距離があった。 一方、逃げる側は勝利に向かっている。 ウラジオストックに向かっているのだった。 どういうことなのか? なんで逃げているのか

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司馬遼太郎「坂の上の雲 2巻」

2巻は、一気にキナ臭くなってくる。 朝鮮を巡る対立からの “ 日清戦争 ” に突入する 。 そこからの “ ロシアの脅威 ” といったところか。 世界史は、いわゆる “ 帝国主義 ” のエネルギーで動いている、と司馬遼太郎は書く。 列強は、植民地獲得に興隆の源泉を見て、たがいに国家的利己心のみで動いている。 人類は多くの不幸を経て、帝国主義的戦争を犯罪として見るにまで進んだ。 が、この当時の価値観は違っている。 それを愛国的栄光の表現とみた。 日本という国は、そう

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【めっちゃ宣伝】歴史小説「六丁の娘」アルファポリス様で連載中!

見ていただいているみなさま、本当にありがとうございます。 以前にnoteで連載させていただき、現在は有料マガジンにまとめさせていただいている拙作「六丁の娘」ですが、 現在は小説サイト「アルファポリス」様にて、一話ずつという形式で連載させていただいております!👇 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/9425093 一話が短くて読みやすい~(夢グループ風) 以前お読みいただいていた方も、もしよろしければ、アルファポリス様

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【歴史小説】流れぬ彗星(1)

この小説について  この小説は、畠山次郎、という一人の若者の運命を描いています。  彼は時の最高権力者、武家管領の嫡男です。  しかし、目の前でその父親が割腹自殺する、という場面から、この小説は始まっています。  彼はその後、師匠の剣豪や、愛する女性、そして終生の宿敵である怪僧・赤沢宗益と巡り合い、絶望的な戦いを続けてゆきます。  敗れても、何度敗れても立ち上がり続けます。  全ては、野心家の魔人・細川政元により不当に貶められた主君・足利義材を救うため。  そして自分自身

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司馬遼太郎「坂の上の雲 6巻」読書感想文

個性派の面々が、次から次へと登場する。 明石元二郎の活躍もある。 けっこうページが割かれている。 ロシア駐在の武官だった明石は、国交断絶の直後には中立国のスウェーデンに移る。 そこを拠点に、ロシア国内の革命運動を支援。 帝政を不安定にさせる。 これも日本の勝利の遠因となっている。 “ 諜報 ” の重要さもわからせる。 小村寿太郎だって熱い。 外務大臣としてアメリカで講和工作をして、ロシアとのポーツマス条約を締結する様子にも、けっこうページが割かれている。 ここに司

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司馬遼太郎「坂の上の雲 5巻」読書感想文

「この本はおすすめです」と、書くのはむずかしい。 なかなかできない。 ベストセラーという本でも、人生必読の書といわれていても、日本中が感動したという本でも、やっぱ “ 合う合わない ” がある。 上記の本が “ 合わない ” と感じることが多々ある自分がいう「おすすめです」は、他人からすれば「おすすめではない」かもしれない。 そこまで自分に自信家じゃない。 それに、そこは趣味の問題。 自分の趣味を「おすすめ」はしたくない。 だから司馬遼太郎だって「おすすめ」はしない

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【感謝】1,000フォロワー様&10,000スキ突破記念!歴史小説の有料マガジン値下げキャンペーン【めっちゃ宣伝】

見ていただいているみなさま、本当にありがとうございます。 大純はるは、この度、【1,000フォロワー様&10,000スキ】を達成させていただきました! 小説の投稿を始めたのが昨年11月ですので、実質四ヶ月ほどでの到達になります。 ひとえに、訪問していただき、見ていただき、読んでいただいているみなさまひとりひとりのおかげ様です。 心の底から、ありがとうございます! これを記念いたしまして、私のメインコンテンツである「歴史小説マガジン」を、通常500円→300円へ値下げさせ

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司馬遼太郎「坂の上の雲 3巻」読書感想文

3巻は泣ける。 作中の登場人物だって泣く。 首相の伊藤博文は、泣きはらして叫ぶ。 陸軍の参謀本部の児玉源太郎が涙を流して訴える。 財界人の渋沢栄一も泣いて決意する。 東郷平八郎が出撃命令を伝えたとき、整列していた将兵の50名だって涙がこぼれて仕方がない。 緒戦の際にも、日本領事館の外交官も泣くばかりである。 なんで泣くのか? 日本がロシアの植民地になる、日本が滅びてしまう、戦うのは今しかない、日本は負けるかもしれない、なんとかしなければならない、と泣く。 んなこと

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大事なことは言葉にできない

いちばんたいせつなことは、目に見えない、とキツネが言いましたが伝えたい真心も目に見えません。 誰かの口になる、耳になる、目になる、伝える。 大それたおごったことと思われがちですが、それは哀しく美しく難しいものです。暴れん坊将軍で有名な徳川吉宗の嫡男、徳川家重のお話です。 まいまいつぶろ 村木嵐 テレビドラマでの家重は、顔面麻痺で肢体不自由でときに狂気として描かれていることがありましたが、その口である兵庫の出番はなかったのではと思います。 兵庫は、耳がよく鳥の声も聴き

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爽秋の京都旅「宝が池通、野生の鹿と遭遇!?」

NHK大河ドラマ"光る君へ"が始まったので、ずっと本棚に積んでいた源氏物語を取り出しました。第二話もSNS大盛況。私の読書熱も同時に湧き上がっているのですが、如何せん現代文と古文の中間に位置する与謝野晶子翻訳版なので読むのにかなり苦労しています。桐壺から全然先に進めません。探せばもっと平易な翻訳版があるのでしょうけれど、原文に近いほうが当時の機微を感じられるのでもうちょっとがんばってみようと思います。 では旅の続きに戻りますね。 宝が池公園の菖蒲園エリアに着きました。美し

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外国人が感じた源氏物語

以前、源氏物語についてこんな記事を書かせていただきました。 そこに仲良くさせていただいているcoucouさんから、とても興味深いコメントで記事ネタのヒントをいただきました。 なるほど確かに気になります。 私も結局は読了できなかった「源氏物語」を他国の人が読了した事だけでもすごいですが、この日本人でも理解しがたい平安時代の世界をちゃんとくみ取れたのだろうかと、にわかに気になってきましたので、ちょっと調べてみました。 coucouさんの最新記事です↓↓↓ その前に「源氏物

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【歴史小説・中編】北風の賦(9)

この小説について  この小説は、現在の神戸港に当たる、兵庫津を舞台にしています。  その地には、南北朝時代以来、「北風家」という商家がありました。  明治維新に至って、その財力で大いに尊攘の志士を助けたものの、ついには身代を傾け、倒産・絶家してしまったといいます。  しかし初めから商人だったわけではなく、そもそも武士として立身し、それに挫折したことで、やむなく商売を始めた、ということのようです。  室町時代の半ばに、北風家は二流に分かれました。  一方は「嫡家」、もう一方

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【読書日記】 同志少女よ、敵を撃て

先日の記事で、私は直木賞や本屋大賞系の小説を好んで読む、ということを書いた。 それは事実であるが、それしか読まないということでは決してない。受賞歴に関係なく好きな作家さんはたくさんいる。 ただ、読んだことのない作家さんに興味をもつのが「◯◯賞ノミネート!」などとメディアに取り上げられることがきっかけであることも多く、自然とそのような方向性になるようだ。 第11回アガサ・クリスティー賞。 選考委員全員が満点をつけ、大賞受賞。 この賞始まって以来の快挙に、誰だ? どんな小

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英雄のいない摂津 〜「歴史小説・北風の賦」あとがきにかえて+参考文献

 どんな土地にも、郷土の英雄、というものがあるかと思います。  中部地方の三英傑を筆頭に、薩長には維新の三傑が、土佐には坂本龍馬が、甲信越にも武田信玄や上杉謙信がいます。  もう少し全国的な知名度を下げても、徳島には三好氏が、栃木には足利氏が、山口には大内氏が、岩手には奥州藤原氏が、江戸には太田道灌、和歌山には雑賀孫一、……などなど、名の知れた歴史上の有名人がいるものです。 (県民意識と違っていたらごめんなさい)  しかし、古代から長らく先進地帯だったはずの摂津国、今の大阪

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力を与える代償に人間の精神を支配する石

「地上の全ての民が」聖なるものに近づくことができる、救いを得ることができると教えられているユダヤ教ですが、その教えの中で神は、アブラハムの子からイサクだけを、イサクの子からはヤコブだけを選んだとされ、やがてその末裔たちは選ばれし民として知られるようになります。 しかし、神に選ばれた民たちのはずが、神の使いとして選ばれた民によって裁かれた歴史もありました。 そして、使徒パウロの言うようにユダヤ人がイエス・キリストを裁いたのなら、それは彼らユダヤ人の誤算だったのではないかと思い

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コングラボードいただきました✨ いつもスキをありがとうございます😊 連載小説「小五郎は逃げない」が最終回を迎え、虚無を感じるこの頃。 皆さんの感想コメントが励みになり、最後まで駆け抜けることができました。 今後はショートエッセイを中心に掲載していく予定です。お楽しみに😌

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清正公の城 その1

 加藤清正の築いた肥後熊本城は海内一の名城である。五層の大櫓が三つ、花岡山を後ろに、屹然として聳え立ち、南には三太郎峠、北には植木、木葉の天険を控え、「一夫これに拠る時は万卒も抜き難し」とある。  この城を築く時、清正は三つの櫓に添って銀杏の樹を植えた。 「この樹はこの城と共に繁れ、銀杏が高々と伸びるにつれて、熊本城主も栄えるであろう。とは言え、物の盛りには自ずから限りがある。もし、銀杏の樹が伸び尽くして大櫓の屋の棟と同じ高さになったら、この城にも命数が来たものと思うがよ

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平凡だからこそわが世になっちゃった強さとおもしろさ

NHK大河ドラマの立身出世、下剋上的なもの好きなんだけど天下をとっちゃったあとは、あまりおもしろくない。 栄華はバブルのようでせつないし、権力を手に入れた変わる。いい意味でも悪い意味でも。家康さんの青春時代、純粋だったし。 まだ何者でもない、何かになろうとしている、もがいている、だからこそ若さが美しいのかもしれない。 NHK大河ドラマ「光る君へ」の藤原道長を柄本祐さんがのんびりおっとりと演じていますが、柄本道長も権力を手に入れたらどうなるのか楽しみです。 傲慢な歌と解

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