おいしいお店 第1167話・5.25
「だけど」私は食後に部屋に戻ってつぶやいた。「すしが食べたい！」思わず私は部屋でつぶやく。私は大の寿司だからだ。今日は寿司とは無縁のものを食べたから思わず私はつぶやいた。いつもそうだ。私は寿司以外のものを食べると満腹してもこの言葉が出る。それほどまでに寿司が好き。
私にとって今でも忘れられないようなおいしいお店はいくつかある。その中の大多数は寿司屋であった。もちろん、天ぷらも洋食もフレンチ、イタリアンもそして中華も何でも食べるし、食べることそのものが好きだ。
だけど私にとって最もおいしいと思うのが寿司。毎日寿司を食べても飽きないほどの自信がある。
とはいえ寿司にもいろんな寿司があり、私が好きなのは江戸前握り一択であった。巻きずしや稲荷寿司、あるいは押しずしとかいろんな寿司の名前が付くものがあるけど、他のものは私にとっては二の次、あくまで握り寿司が好きでたまらない。
「ああ、あの時の思い出が」また私の脳裏にはおいしい寿司屋で、至高の寿司を食べたときの記憶がよみがえった。
最近では主にふたつのおいしいお店の記憶がよみがえる。ひとつはそれなりに高い寿司屋さん。板前が複数いて、客との会話をしながら順番に寿司を出していくような店。こういうお店はめったに行けないけど、行けるときは最高にハッピー。確か旅先で食べたそういうお店でのひと時は今でも忘れられない。
地元のお酒を飲みながら食べる寿司は最高で、最初は旬の魚造りとかを食べてからいただくの。もうこの話をしただけでまた私は寿司が食べたくなった。
もうひとつは意外と思うかもしれないけど、回転すしのお店。こんなに握り寿司の高級店が好きだと言っているのに、回転すしとは驚くかもしれない。だけど私は寿司は好きだけど高級な寿司とは言ってないわ。極端な話をすればスーパーで売っている寿司でも、握り寿司であれば私にとっては好物なの。
今までいろんな回転すし店に行ったけど、私の好きなお店は海の近くにあるお店だった。つまりそこの海で採れた魚を寿司にしてくれるから魚の鮮度が素晴らしい。それだけではないわ。一般的な寿司ネタとは違う寿司ネタを出すの。その地域でしか取れずに、わざわざ旅をしてまでその地域に行くような寿司ネタが食べられる。それは造りにしても焼いてもおいしいけど、私はやはり握り寿司にしてくれるのが一番。
回転すしのお店だから地元の人も含めて人気で、私が行った時も行列ができていたの。私は行列はあまり好きではないけど、寿司屋の場合は別。そうそう昔、卸売り市場でも寿司を食べに行った事がある。本当は市場で働く人向けのお店なんだろうけど、まあ市場に行けば新鮮な魚があり、そのネタで握った寿司は格別ね。それに客が市場関係者なら舌が肥えているからまずい寿司なんで出すわけはない。そこで食べた寿司もおいしかった。
「あ、いつの間にか話がそれたわ」私が言いたかったのは市場の寿司ではなく回転すし屋。30分くらい待ってようやく席についたら、当然寿司が回転しているわ。
思わず手に取りたいけどここは我慢して、注文できるから好きなネタを注文すると、それを持ってきてくれる。この方法で地元でしか食べられない魚とかその時の旬の魚や貝を教えてもらってそればかり食べた。それから途中で食べるガリもたまらないし、赤だしも必要ね。気が向けば茶わん蒸しを注文するときもあるけど、やはり寿司が優先。だから茶碗蒸しは食べない時もある。
でもね、回転すし屋って考えさせられるのは皿のデザイン。デザインによって値段が違うから、安いデザインだと安心するけど、だれがどう見ても高そうなさらに乗ったネタだと一瞬躊躇する。けど一瞬だけですぐに私はそれを注文した。だって寿司が好きなものにとって、一期一会かもしれないネタとの出会いは大切にしたいから。
そして十分すぎるほど食べて、「もう限界」という段階になってから飲むあがりのホットな緑茶も最高ね。
こうして回転すしを食べた後、他の寿司もそうだけど私にとって至福の余韻が過ぎるの。そしてまた行こうと心に誓うわ。
「だめ、あ、まだ食える。よし、行く」こんなことばかり考えていたせいか、ついに私は我慢できなくなった。たとえ一貫でもいいから寿司が食べたくなったの。だから食事を終えたばかりなのに、寿司屋に向かった。
また太ってしまうことを覚悟の上。でもそこはテイクアウト専用の寿司屋だから買って帰って少しだけ時間をおいて食べるかもしれないけど。
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