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ゲームの作り方 第1080話・1.16

「これがゲームだと?」 心の中で相手に向かって叫んだ。その後はもう会話もなかったが、確かに最後に相手は言った「それはゲームである」そして俺は思わず教室の窓を見た。「意外なところにゲームがあるんだ」と。

 俺は現役の高校生だが、あの日から俺は自らの手でゲームを作る夢を持ち始めた。普通にゲームが作りたい人であれば元々ゲーム好きが高じてとなるだろう。だが俺はそんな理由ではない。
 そんな理由でゲームなど作れるとは思えないからだ。俺はゲームではなくもしかしたら神のような存在になりたいのかもしれない。ゲームの世界にとってゲームを作る側というのは世界をつくる想像主、つまり神もしくは仏のような卓越した存在であるから、そんな存在にになりたい気がしている。

「プレーヤーがあっと言わせるゲームを作ってやるんだ」これはあの日からつづく俺の口癖。口癖と言っても口には出さず心の中で呟いているだけだ。
 ところで俺はプログラマーでもなければプログラムは全く作れない。デザインセンスもなければストーリーを考える力が無い。特にプログラムの場合、プログラムで登場するアルファベットの羅列などを見たら、恐らくジンマシンが起こるほど、そういうものが苦手である。

 だったらゲームなんて作れるはずがないと思うだろう。
 俺も最初はそう思っていた。「俺はゲームとは無縁の世界に生きている」と。だが先日のある人物、それは別のクラスの同級生だが、彼とのやり取りを繰り返した結果、全く無縁とは思えなくなった。
 その同級生は俺がゲームと全く思っていなかった、日々の生活で行っていることそのものがゲームだというのだ。
 それは俺の家が代々行っていたこと、あらゆる企業への投資であるが、それがゲームのようなものだと言い切った。

 俺の家は明治時代から続く代々の投資家で、コツコツと投資を成功させているうちに資産家になったそうだ。俺の家は父も祖父も有能な投資家だから、一度投資をすればお金はいくらでも入るという自信がある。
 こんな俺も、中学生のころから投資家として密かに活動しているのだ。物心ついたときから父に投資について徹底的に鍛えられた。
「お前はこの家を継ぐもの。この家の後継者ならば投資に生きなければならない」と何度も言われている。
 だから中学生から高校生で家に帰れば投資を行っていた。子供の時からの英才教育が功を奏しているのか、俺もわずかながら投資で稼げているのは事実だ。
 で、実際に俺がやっている投資の方法を説明しよう。俺は素人の投資家のような無茶なことはしない。ハイリスクハイリターンを狙っている素人投資家は俺に言わせれば、火遊びのようなゲームを楽しんでいるようにしか見えないからだ。

 確実に利益を得る方法、ローリスクミドルリターンを繰り返しながら、代々財を積み重ねた。それが俺が生きている一族のやり方だ。
 俺ももう4・5年やっているが、あまりにも地味な方法を用いるからとてもゲーム感覚ではない。むしろベルトコンベアーに乗った部品を組み立てるとか、検品をするとかそんなことに近いのかもしれない気がする。ただし俺はそんな仕事はやったことが無いので勝手に想像してみた。

 少し話が脱線したが、そんな俺は投資とは別に、新たにゲーム作りをするのも広い意味では投資かもしれない。ゲーム作成にかかる費用はそれなりに膨大だ。 
 だがそのゲームがヒットすればそれをはるかに上回るリターンが入る。となれば投資の成功、同級生に言わせればゲームの勝利となるだろう。それもハイリスクハイリターンではなく、ローリスクミドルリターンを目指すゲームだ。
 具体的には今の流行りものや有名なキャラクターを使わない。そんなものでゲームを作ったのならば莫大な資金が必要だろう。それこそハイリスク以外の何物でもない。

 俺はゲームを作るうえでどうすればわずかな投資でそこそこの利益が稼げるのか考えた。まずゲームの世界観を作る人、次に大まかなキャラクターを考案する人、イラストなど全体のデザインを考える人、そして最後はプログラムを作る人を探すことだ。
 俺はこれらの人材を手に入れて彼らに投資する。彼らが作った成果物を販売し利益を得ようということだ。
「これらの人材をいかに安く活用できるかがポイントだ」ひとつの手段として会社を設立して俺が社長となり、社員を雇う、もしくは会社ではなく個人として外注に頼むかのどちらかだ。

 俺は心の中である程度決めていた。「俺は大学に行けば会社を作る。代々続いていて、俺が後継者になる投資会社の子会社がいいだろう」俺の夢は膨らんでいる。そして人材を雇うのかそれとも外注にするか、これは投資でもありある意味ゲームなのだろう。
 もしかしたら俺はゲームを作ろうとしていながら、実はゲームプレイヤーなのかもしれない。


「また語ってしまった」俺は時計を見た。そろそろ勉強をしなければならない。投資は得意だが勉強は苦手だ。確かに俺のスキルであれば高卒でもいいのかもしれないが、父も祖父も含め代々の当主は全員大学を出ていた。父は何も言わないが、暗にプレッシャーをかけてくる。
「勉強を投資と見るかゲームと見るかで変わるのかもしれないな」俺はそう考えると、教科書を取り出し、しばし勉強をすることにした。


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