豚になってしまう? 第812話・4.15

「は、はあ、ゆ、ゆめか!」私は悪夢にうなされて起きたところは、とある別荘。窓からは標高の高そうで、やや薄い青色したな山が奥に、緑がはっきりと見える低い山が手前に見える。慣れないところで眠ったからか、今朝は普段見ない夢を見た。
「それにしても嫌な夢だったわ。私が豚にされてしまうなんて...…」

 私はベッドから起き上がると身支度を整えた。私がここに来たのは全く意外な事からである。それは1か月前に、私に来たお見合いの話がきっかけだ。相手の人は、私の父親が経営している会社の取引先で、資産家の息子ということ。会ってみたら悪くなかった。外見はいわゆるイケメンだとかハンサムではない普通だけど、趣味や話題が合うから違和感がない。相手も私のことに対して良い印象を持っているようで、このままいけば結婚という話も現実味がある気がしている。

 そんな彼に誘われたのが、彼の家族が所有している別荘であった。彼の運転で連れてこられたのは山の中にある広大な敷地。重厚な門の中は、深い森の中になっている。そこからやがて見えてきたのは、ヨーロッパの古城のように見える大きな洋館。
「やっぱり資産家は違うわ」私はそう思いながら洋館を眺めた。今日は週末で、お互い夕方まで仕事。だから待ち合わせ後夕食を済ませた後に、彼の運転する車で走ること2時間、別荘に来たのはすでに夜の22時を回っていた。

「まだ君もなれないところで緊張するだろうから、今日はひとりでゆっくりと休んでね。明日ゆっくりと別荘を案内するから」
 ということで、到着して早々にひとつの部屋を案内されると、いったん彼と離れた。そんなこともあるのだろうか?この洋館が少し不気味に感じたのは確か。「だからあんな変な夢を見たのね。でもここからはお日様も出て気持ちいいわ」

 私は彼と別荘で食べる朝食の約束時間よりも30分も早く身支度を整えた。「こういう場所ならドレスとかあればいいのだけど、持ってないしね」
 私はすべての準備を整えるのが早かったのか、ふと部屋の外を見たくなった。「夜の時は薄暗かったけど、朝だから明るいのかな」
 私が静かにドアを開ける。確かに朝は雰囲気が違い、明るい気がした。ところが私の足元に何かが触れる。
「な、何?」そこには一匹の豚が入ってきた。「え、ぶ、豚がなぜ」このとき私は昨夜の悪夢が記憶によみがえる。

ーーーーーーー

「お前を豚にしてやる!」突然現れた謎の声。私は逃げようとしたが体が動かない。突然上からかぶさる何かを感じるとその瞬間、私は立てなくなっていた。手を前にして4足で歩く。さらに鼻のあたりに違和感があり、声も出ず「ブーブー」としか出ない。
 横に鏡があったので見たら、私は豚になっていた。それを見て私は恐怖のあまり声を出す。そのときに目覚めたのだ。

ーーーーーーー

「ま、まさか...…でも」私は嫌な予感がした。夢で見た時の場所が今いる場所にそっくりだからだ。「まさか私も豚にされる...…」
 私はなぜか、彼が私を豚にするために連れてきたのではと警戒した。
「私の家はそんなに貧乏ではないけど、こんな資産家の人と一緒になるとか普通ではない。それにこんな古い城のようなところ。もしかして彼の正体は魔術師かしら」
 そのように考えた私は、一気に怖くなった。「ここから抜け出さなくては」とまず窓を見た。だがここは3階で、下に降りる勇気がない。
「かといって、部屋から外に出るのはあまりにも」すでに日が明けている。彼が起きていなくても召使のようなひとが起きていて、見つかればひとたまりもない。

「や、やるしかないか?」私は窓を開けた。そして何か引っかかるものがないか見る。「あ、あれがいいわ」私は窓の右横に木があるのを見つけた。「あのの木を伝って出てみるか」私は、小さい子供の時は木登りをして遊ぶような子供だったから、できないことはないと思った。そして窓に左足をかける「よ、よし」私は窓枠に両足を載せる。ここから大きく股を開き左足に、足を乗せようとしたとそのとき。
「おはよう! き、君?いったい何を!」
 真下には彼がいた。「え、ああああああ」私は足を滑らせてバランスを崩す。「な、何やってんの!ちょっと待って」彼もあわてて走り出す。
「ち、ちょっと、助けて」私は震えながら手を窓枠につかむ。足でどうにか建物の壁につけ、どうにか上がろうとするが、力が入らない。足が滑ってうまくいかないのだ。
「た、助けて」私が叫ぶと、彼が部屋に入ってきてくれた。
「朝から、どうしたっていうの!」彼は大声を出しながら、私を抱きかかえてくれたので、どうにか部屋に戻る。


 その後、私は朝食の時に、なぜこうなったのか正直に話した。彼は私の奇想天外なことに大笑い。「ハハハハハハ、やっぱり君はいいねえ。そんな俺が、ま、魔術師で君を豚にって、アハハハ!」
「ごめんなさい、疑って」「いいよ、楽しいなあ。そうかこの子のことだな」彼は近くまで来た豚を抱きかかえる。
「彼はこの別荘で飼っているペットのブーちゃんだ。かわいいだろう。君も大切にしてくれ」
 そう言って私の前に来たブーちゃん。私におねだりをするような表情をしている。「だよね。私、なんでこんな勘違いを」そこまで言うと思わず笑いが込み上げてくるのだった。




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