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双子の笑顔 第743話・2.5

「ねえ、最近に気になっていること言っていい?」里美は双子の美里のいる部屋に入ってきたが、いつもの明るい里美とは違って妙に神妙な表情。
「どうしたの里美、今日はそんな暗い表情して何かあったの?」「うん、実はね」里美はここで口をつぐむ。「何よ、はっきり言ったら」「でも、これ美里も、そのお、だから」
「ちょ、ちょっと。私たちって双子だよね。一緒に生まれて一緒に育った仲じゃないの。何で今さら私に隠し事なんてするの!」
「いや、その、隠し事というか、その、ある事実を知ったというかさ」
 里美はなおも言いにくそう。苛立っていた美里の感情が急激に高まった。「なによ!さっきからその態度。内容よりも里美のその態度が気に食わないわ。なんなのよもう!!」明らかに不機嫌に目を吊り上げて怒り出す美里、それを見た里美はようやく観念したようだ。

「ご、ゴメン、美里、今からちゃんと言うから、そんな、怒らないで」「だったらサッサと言いなさいよ。その方が気が楽よ」
 ここで里美は大きく深呼吸。ゆっくりと息を吸い数秒間息を止めた。そして口から吐き出す。横にいた美里は大見えを切るように里美に行ったとはいえ、いよいよ本題を聞くときになると何を言い出すのか不安になる。「里美いったい何......」

「美里、じ、実はなんだけど。私たちはいわゆる一卵性双生児という双子よね」「そ、そうよ、今さら何言っているの。だから顔がそっくりで、着る服も似ている。でもそれは世界中の私たちと同じ双子というのはそんなもの。今さら別に問題ないじゃないの」

「いや、その一卵性双生児って実はクローンじゃないのかなって......」里美は言いたいことを言い切ったのか、一瞬にして安どの表情を浮かべる。だが今度は美里の表情が険しくなった。「クローン...... それって、どっちがどっちのクローンになるの」「え? さ、さあ、私にそんなのわからない。お医者さんに聞いたらわかるかな」

「う、うん、多分わかるかも。で、でもさ、それどっちがオリジナルで、どちらかがコピーされたクローンだとわかっとしてさ、それでだれが得するの?」「え!」美里の一言に、思わず目を見開き口元に手を置く里美。「た、確かに、もし、もしもだよ。私がオリジナルで、美里がその、クローンだったらって。そんな、今さら私のコピーとか言われても」
「それは逆でも同じよ。私がたとえ、そのオリジナルとしてもさ、里美がクローンとか言われても......」

 ついにふたりは、黙ったまま考え込んでしまった。そのまま10分ほどの沈黙が流れる。と言ってもお互いスマホで自分勝手に何か見ているだけだが、お互い同じ部屋に居ながら、どうも話しかけにくい不思議な雰囲気になってしまった。
 それでもようやく口を開いたのが、里美。この問題の言い出しっぺとしての責任を感じていた。

「あ、あのう、美里さ」「あ、な、なに里美」
「さっき変なこと言ってごめん」「さっき、ああ、里美それはもう気にしてもさ、もうやめよう。何か気晴らしに」

「あ、私、取ってくる」里美は美里の意図が分かったのか、立ち上がると、キッチンに行く。すぐに戻ってくると冷蔵庫からビールを持ってきた。「え、里美、ビール!まだ日が明るいのに」
「でも美里、なんとなく気分としては、もう飲まないと収まらないわ」「そ、そうね、今日土曜日も明日日曜日も休みだし......」

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「カンパーイ」こうしてふたりは明るいうちからビールを飲み始めた。つまみは、キッチンを探し回り適当にすぐにつまめるものを適当に用意。
 こうして飲み始めたが、久しぶりにふたりで飲んだからか、気が付けばどんどん酒が進み、いつの間にかビールからワインに代わっている。だから暗くなろうとしていることには、すでにふたりとも酔っぱらっていた。
「キャハハハッハ!」もう今日は、里美がおかしなことを言うから」「いいの。私がどうかしてたの、ハハハハ!今さらどっちがクローンとか、もうわかんないよ」
「そんなのどっちがどっちでもいいの。私たちは唯一の双子というのだけが確かなんだから」
「そうそう、美里!きょうはもっと飲もう」「飲んじゃえ、美里、そのまま朝まで飲んじゃえ!」

 いつしかふたりの間では笑顔が絶えないまま夜が更けていくのだった。



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