見出し画像

次の挑戦は赤穂の忠臣蔵?

こちらの続きの流れですが、単独作品です。

「大樹、入ってもいいか」大学生・伊豆大樹の部屋に来たのは、祖父の茂。「じいちゃんどうぞ」とあっさりと入室を許可するのは、大樹は茂が好きだからだ。
 ドアが開くと、笑顔の茂がいた。
「おう、昨日の第九の演奏、頑張ったなあ。黄金に輝くトランペットを誇らしく向けて吹いている姿。良かったぞ」

「ああ、でもじいちゃん。いつの間にかあんな撮影場所を拡大できるアプリ入れてるし、びっくりしたよ。でも本当に動画UPしてたから恥ずかしい」
「嫌なら消そうか」「いや、いいよ」大樹は嫌がっていながらも、本心はまんざらでもない。

「それより、あの、ワシの小説じゃ」「あ、あれ!あ、僕、歴史詳しくないけど良かったよ。日本初のクリスマスとかそんなエピソード入っていて、勉強になるし」

「そうか、じゃが。それとは別にもう一本ちょっと頭の中でじゃな浮かんだんでどうしたものかと」茂の一言に、大樹は驚きの声をあげる。
「ええ!また考えたの?そんなにいっぱい考えたら頭混乱するよ。ならあの話の続きはどうなるの」

「いや、あれ続きは、まだ全然なんじゃって。突然浮かぶものじゃからどうしようもあるまい」
「まあ僕が書くわけじゃないから。で、そのもう一本って?何書くの?」

「ああ、忠臣蔵をモチーフに書けないかと思って」「え、ちゅうしんぐら?聞いたことはあるけど、それなんだっけ」
「なんじゃ、わからんのか。忠臣蔵は江戸時代にあった赤穂事件というものでじゃ」「江戸時代、あ、戦国の話かと思った」
「それは本能寺のことじゃろ、それとは無関係じゃ。忘れてくれ!」と茂は少し語気を強めた。
「浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)という、今でいう兵庫県の赤穂にいた殿様が、突然吉良上野介(きらこうずけのすけ)に江戸城で切りかかったんじゃ」「いきなり切りかかるって!そんなに嫌いだったの?」大樹は興味深そうに質問する。

「さあ、そこはよくわからん。それが理由で、殿様は切腹させられた。その家臣が納得できないからと準備をする」「かたき討ち!」大樹の一言に茂は大きくうなづいた。
「そして12月14日の夜中に、江戸にあった吉良邸に47人が押し入って吉良を殺す。つまり主君の仇を取ったいう話じゃ。実在の事件をもとに、歌舞伎や映画などでよく演じられて有名になった」

「12月14日って!今日のこと?」
「そうじゃ。まあ今のグレゴリオとかそういうのではなく、昔のだからちょっとずれとるがのう」
「あ、じいちゃんグレゴリオ暦嫌いだもんね」
「そう、何で2月だけ28日と他の月より日が少ないんじゃ、西洋人はそのあたりがいい加減。末締めが2日少ないと、商売人にとってどれだけ大変か、わかっとらん!」どんどん不機嫌になる茂。
「まあまあ、それはいいよ」大樹は両手を茂のほうに開いてなだめる。「それは、じいちゃんの跡を継いだ叔父さんが苦労するだけだから」
 茂は思わず口を緩め「ああ、ハハッハア!すまん。そうじゃな、で話を戻すが、ここで、本能寺のように、パラレルワールドを考えてみようと思ってじゃな」

「え、そのアイデアを僕に?」「ああ、書いてみたいと思ってもじゃ、どうもそこから先に進まん。大樹、何か良い案がないかのう」

「え、その忠臣蔵って初めて詳しく知ったのにいきなり! あ、えっとその切りつけた人」「うん、浅野の殿さまじゃな」
「その人が切りつけなかったらどうなるとか」「おう。でも、それだと何事もなく終わってしまうな」

「そしたら、切腹させられそうになったときにうまく逃げたら」「うーんできるかのう。まあ殿様の身体能力を極端に上げたらできないことはないが、どうじゃろうか」
「あとは、仇を取りに行った47人が返り討ちに会うとか」「おお、ちょっと面白そうじゃ、ただ、ひとりかふたりは逃げて、再チャレンジとか」

「あ、いいのがある。身代わり」「身代わり?なんじゃ」「その殿様と、吉良という人が、切りつけられているタイミングで突然入れ替わる」
「あ、ハハハハ!面白い。それでのちに家臣に討たれたが、その時に大石ら家臣が実は浅野の殿様と知るか。うん、だけどそれに近い話は、すでにオロチヤマタノスケというのが書いておるんじゃ」

「え、考えている人がいたの?」「ああ、それ見てワシも対抗しようとと思ったんじゃが。やっぱり無理のようじゃ」
「そんな理由だったの?あ、それやめたほうがいいよ」衝撃の理由に思わず大樹の声が裏返える。「わかった。諦める。ありがとう」
「うん、あの話の続き頑張って」「大樹プレッシャーを与えるな。忘れたころに書く」といいつつ茂は部屋を出るのだった。


追記:もし「オロチヤマタノスケ」の創作物語に興味がある人がいれば、また代筆するかもしれません。





こちらもよろしくお願いします。

13日は「????笑顔と幸せのスキを運ぶ可憐な花????????はなこ????」さんですが、まだUPされていないようです。UPされたら改めて紹介します。


電子書籍です。千夜一夜物語第3弾発売しました!

ーーーーーーーーーーーーーーー
シリーズ 日々掌編短編小説 328

#小説 #掌編 #短編 #短編小説 #掌編小説   #ショートショート #赤穂事件 #忠臣蔵 #大樹と茂 #オロチヤマタノスケ

この記事が参加している募集

#とは

57,836件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?