翼が生える! 第866話・6.8
「ええ?これ、何?」朝、目覚めると私は突然のことで頭が混乱。夜中のうちからどうも肩の下の肩甲骨のあたりに違和感があった。何かわからないが、その場所に軽い重みを感じつつ寝返りを打つと、でき物のようなものがある気がする。
でも、その時は無性に眠かったので、そのまま朝まで寝たが、朝起きても違和感が収まらない。「なんだろう」と思い、鏡で背中を見たとき、私は何度も瞼を上下に動かして、ありえない光景を目の当たりにする。
「これって、まさか翼なの。なんで?」私の肩甲骨から小さな翼が生えているから驚くのは当然だ。翼の大きさは30センチくらいだろうか?
「見なかったことに」と私はこれは寝ぼけているのだと自分に言い聞かせるように上から服を着た。多少背中に違和感はあったが服を着ればあまり気にならない。こうしてこの日はいつも通りの生活を送る。
私は家に帰ると、急に不安になった。朝見てしまったありえないもの。翼が幻であってほしいと願った。違和感は午前中は感じたが、お昼を過ぎると体が慣れたためかあまり気にならなくなる。私は恐る恐る服を脱ぐ。その時背中にやはり感じた違和感。「ま、まさか......」私は確認しようと、上半身を裸になって背中を鏡に向けて見たが、それを直視する見る勇気がない。
でも大きく深呼吸。勇気を振り絞って見た。その瞬間、驚き以上に絶望のようなものを感じている。
「や、やっぱり翼がついている、なんで?」ついているだけならまだ許せたかもしれない。ではなく翼が成長していたのだ。朝見た時と比べて倍の大きさになっている。「え、これって私飛べるの?」と、ここにきて悲観だけでなくちょっとおかしな希望に目覚めていた。とはいえ根本的にわからない。そもそも翼の使い方が......。
私は背中の肩甲骨を動かして翼が動かないか試してみる。だけど一向に反応しない。「でも、こんなのだれにも相談できないし、ネットに情報もない」私はどうしてよいかわからないままに、それからは昨日までと同じような夜を過ごし、ベッドに横たわった。
次の日の朝、私の背中は相変わらず何かついているのがわかる。「やっぱり翼が、はぁ」私は深いため息をつき、背中の鏡を見た。「ああああ!」私は思わず声を出す。翼はさらに成長しており1メートル近くになっていた。「これは......服が入らないのでは」と、私が直感した通り、もう服に袖を通しても翼が邪魔をしてはいらない。ということで今日は体調不良ということにしてで休むことにした。
「ええ、どうしよう。外にも出られない。切断しようかしらと言ってこの翼が付いたまま外に出るの?それは嫌。でも自分では切れないし、それよりも」私はもう一度翼の生え際を確認した。それを見ると余計に愕然とする。もう体の一部のように、生えている翼。これを取るというのは手や足を切断するのに等しいレベル。そのクラスの手術となれば外科医でないと無理だろうし、そもそも切断した時にどのくらいの痛みが体を襲うのだろうか?
想像しただけでも全身から鳥肌が立つ。
「せめて飛べたら」私は再度、翼が動かないか試してみた。最初は反応しないが、今日は一日外に出られないこともあり根気強く色々試してみる。その甲斐があったのか、少し翼のあたりが反応した気がした。「動く?」私はもっと努力して翼を動かしてみる。すると翼が確かに動く。「そうか、ようし」私は翼が動いたことを喜んだ。
その日の夜中、私は試したくなった。「飛べるかもしれない」と。翼の成長は止まり、背中への違和感もない。私は町が寝静まった夜に外に出た。Tシャツに袖を通したが、そのままでは翼が邪魔をするから私なりに改造。結果的に、後ろは大きな穴をあけて翼が邪魔にならないようにした。
「よし、誰もいないわ」私は家を出てゆっくりと歩く。翼が見えないように黒い上着を羽織るように着てごまかす。こうして人気のないところに来た。ここで上着を脱ぐと翼が姿を現す。ここで昼間練習したように翼を動かてみる。すると翼は動いた。さらに思いっきり翼を動かすと体が浮いた気がするのだ。「と、飛べるの?」私はさらに翼に精神を集中すると、ついに体が空を飛んでいる。あっという間に屋根を見下ろす位置まで上がっていた。すでに翼を自由にコントロールできている。上下左右自由自在に飛べた。私は訳が分からないまま、翼が生えた非人間の姿に変身したように感じている。
「ようやく覚醒したようだな」ここで私に聞こえるのは見知らぬ声。「だ、誰?」私が問いかけると再び声が聞こえた。
「お前は記憶をなくしているようだ。まあいい、今から誘導するからこっちに来なさい。すべての経緯はそれから離そう」
「誘導?」私は意味が解らないが、何かテレパシーのようなものを頭の中で感じ取った。するとその方向がわかる。
私はまだ半信半疑であったが、その誘導している方向に翼を動かした。その声の正体はわからないが、確か記憶をなくしていると言った気がする。「もしかしたら今までの私は本来の私ではなく、今の姿が本来の私の姿?」
私はそう感じだす。「とりあえず行くしかない」私は夜空の闇を何者かに導かれるようにある方向に飛んでいくのだった。
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シリーズ 日々掌編短編小説 866/1000
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