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Space santa claus

「本日12月17日は、飛行機の日。これを記念した富士山遊覧ツアーにご参加の皆様ありがとうございます。当機は間もなく富士山上空に差し掛かります」とアナウンスが流れたプロペラ機。
 高度5000メートル上空であったが、この日は下界の天候が良くなかった。そのため、雲のじゅうたんの上を這うように飛んでいる。

 すると雲の上に頭を見せる富士山が見えてきた。ところが「あ、あれは」座席にいたひとりが騒ぐ。「え、何あれ」「オイこっちに近づいて来るぞ」「キャー」

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 2019年12月17日ちょうど一年前に起こっ富士山遊覧飛行機墜落事故。突然バランスを崩したように飛行機は高度を下げ、そのまま富士山の樹海に落下した。乗務員を含め全員死亡と伝えられたが、実はひとりだけ生存している。だがそのひとりはあるところに隔離され、幽閉されていた。なぜならばその生存者があるものを見てしまったのだ。

「わ、私は見たの。雲の上を走っていてこっちに向かって猛スピードで突っ込んできた、トナカイのソリとサンタクロースを!」
 当初航空事故によるショックで、幻覚を見たものだと片付けていたが、別の情報から、この飛行機は上空で謎の物体と激突したという、墜落原因が判明した。
 だが当時富士山周辺で、その高度では他の飛行機などは飛んでいなかったし、他の機体が衝突したという報告もない。
 しかし墜落した機体の破片を集めて検証すると、明らかに何かに接触したことによる墜落事故と結論付けられた。

 ところが極秘にしていたはずの「サンタクロース発言」が、何者かにより外部に漏らされる。その上、その情報がネットで拡散されてしまう。
「本来サンタクロースを見た」という証言しかないのに、尾ひれがついてしまい、ついにさまざまな説が流された。サンタクロース宇宙人説をはじめ、そのサンタクロースが人類を攻撃する準備をしている。あるいは、すでに支配下にあるなど。

 その多くは「都市伝説」「陰謀論」で始末されるが、根強く信じているものも多い。こうして12月になれば、再びその物体が現れるという情報が流れ始める。その影響で望遠鏡が飛ぶように売れたのだ。
 そしてそのUFO(未確認飛行物体)の正体を確かめるべく、ちょうど1年後に調査隊が結成される。自衛隊機2機が、富士山上空に向けて飛び立つ。常に未確認物体が確認できるように、地上の調査本部では、上空を飛ぶ2機の飛行機とリアルタイムで通信ができるようになっていた。

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「2号機へ、謎の物体を発見した。右斜め前方。距離は1000メートル」「1号機了解。こちらの位置からも確認しました。距離は同じ。突然向かってくる恐れあり、警戒されたし」
「2号機了解。あ、さっそくこっちに向かってきました。高度を下げます」

「1号機了解。こちら物体より高度を上げて確認します。現在カメラで物体を録画中。あ、何だあれは!」

「2号機、大丈夫か? 物体との距離を保つことに成功こちらも録画撮影中。あ、まるでソリだ。サンタクロースのソリらしきものを捕らえました。地上の本部見えますでしょうか?」

「1号機へ、こちらもサンタクロースらしきもの確認しました。本部に転送します」画面は本部に大きく映し出される。
 地上の大型スクリーンに映し出される。その光景は物語の通り、赤い服を身にまとった白髭の男性が映っていた。それもはるか上空である。その存在はソリらしきものに乗っており、前方には数匹の動物。見た目はトナカイであった。

「おい、そのままだ!」「物語のサンタクロースが実在しているのか?」地上では、どよめきの声が上がっている。
「2号機、地上へ。向こうから通信が飛んでいます。このまま通信回路を解除。地上との通信がリアルタイムに聞こえるようにします」

「1号機了解!」地上からの支持の元、通信回路が開いた。
「ワレワレハ、ニビルカラキタモノデアル」

「に・日本語? ニビルと言ってなかったか」地上では、まさかの日本語が聞こえたために、かえって驚きの声でざわつく」

「オドロクナ。ワレワレハ、チキュウジンヨリモ、カガクギジュツガウエダ。オマエタチノタメニ、コノチイキデ、リュウツウスル ニホンゴニ、ホンヤクシタ」

「わかった。ニビルといったな。それはどこの国だ」地上を代表したひとりが直接通信相手と会話する。

「クニデハナイ、ワクセイノナマエダ。チキュウノアル、タイヨウケイガイニソンザイスル」
「どういうことだ?太陽系外だって」
「サキホドモイッタトオリダ、カガクギジュツハ、ハルカニタカイ」「では、ニビルの人。ではなぜ我が領土の上空に侵入したのか?理由を応答されたし」

「ソレハオマエタチガ、モトメテイルカラダ」
「求めている?何をだ」代表者の声が裏返った。
「ワレワレハ、オマエタチチキュウジンカラハ、『サンタクロース』ト、ヨバレテイル」

「さ、サンタクロースだと!」地上の本部ではそれを聞いた途端、一斉にざわついた。
「オマエタチニハ、カクシテオキタカッタ。ダガサクネン、オマエタチノコガタヒコウキガ、キュウセッキンシ、ショウトツシタ」
「ということは、遊覧飛行機が突っ込んできたというのか?」

「ソウイウコトダ」「まさか! だがパイロットは死んだ。今となってはわからない」
「サスガニ、ワレラモヨケラレナカッタ。ダガコノソリノ、ゴウキンハ、チキュウジョウノ、アラユルブッシツヨリモカタイ。ダカラワレラハエイキョウガナイ」
「うーん、地球外の物質はそんなに固いのか」

「ダガ、セイゾンシャノクチカラ、ワレラノソンザイガバレテシマッタ」

「お、おう、そういうことだな。もうこの通信は、世界中の人が見ていると思ったほうが良い。ところでサンタクロースとやら、我々は君たちとの戦いを望まない。対等で話し合いをしようではないか」
 代表者がサンタクロースと名乗る存在と和平を申し出るが、そのことに不満を募らせたのは先方の存在。

「タイトウダト!アリエナイ オマエタチカラミテ、ワレワレハ、カミトヨバレルモノニチカイ」「か、神だって!」
「コンカイノコトデ、ショウタイガシラレテシマッタイジョウ、オマエタチヲ、ホロボスコトヲ、カンガエタ」
「う、そ、それは、まさか。し、侵略戦争!」地上の本部は、科学技術が圧倒的に上だとわかるサンタクロース・エイリアンの一言に、一瞬にして静まり返った。

「テハジメニ、カルクイジメルツモリデ、ウイルスヲバラマイタ」
「な、何、ウイルスだと?それってまさか!」静まり返った本部がざわつく。

「ダガ、ワガワクセイノナイブデハ、オマエタチノヨウナ、カトウセイメイタイヲイジメルノハ、ヨクナイト、シャカイモンダイニナッタ。ダカラ、モウ、オマエタチハ、クルシメナイ」
「そう思うのなら、このウイルスをどうにかしてくれないか」

「ソノウイルスハ、ライネンイコウニナレバ、ジョジョニオサマルダロウ」「え、そんな!」「ダカラ、カワリニ、オマエタチニサービスヲ、スルコトニシタ」

「サービス?な、何をだ」「マイトシ、オコナッテイルガ、プレゼントダ」「プレゼント! それはサンタクロースだからか」一時静まり返った地上の本部は、またざわついた。

「スウジツゴヲ、タノシミニセヨ。ワルイモノデハナイ。ヨロコバレルモノ。コトシハ、オマエタチヲイジメタカラ、オワビノシルシニ、イツモヨリ、ゴウカナモノニシタ、デハ!」

 この通信を最後に、相手からの通信が途絶える。地上、上空の2機の航空機から何度か呼びかけたが音沙汰はない。
 そして富士山上空にいた謎の物体。そうサンタクロースそのものも、忽然と消えていた。

 以降は何事もなかったような日が続く。やがて奇跡はクリスマスに起きた。いつも以上に豪華なプレゼントが世界中に配られる。だが人々は、今回プレゼントの主がわかり複雑な気持ち。でもクリスマスプレゼントはもらえるとやっぱり嬉しいのだった。


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【お題】
『サンタクロースは地球を支配している宇宙人だ』
そんな噂が今年になって突如聞こえるようになった。
この噂は何かの陰謀か、それとも何者かが仕掛けたワクワクする企画の伏線か。もしかしたら、この噂はサンタはいないと言われ絶望した子供たちによる復讐なのかもしれない……。
この世界の発明は、全てサンタクロースにより行われてるという噂。
さぁ、あわてんぼうのサンタクロースはこの噂の中どうプレゼントを届ける!


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電子書籍です。千夜一夜物語第3弾発売しました!

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シリーズ 日々掌編短編小説 331

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