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襲来したものって? 第854話・5.27

「おい!上空を見ろ。あの物体大小いくつあるんだ」「か、数えきれないよ!」ある銀河のある恒星系にある惑星Sに住むS星人たちは、上空に無数に浮かんでいる謎の物体にみんな度肝を抜いた。

 これは今に始まったことではない。今から1年前から異変に気付いていた。「我が星Sに宇宙空間から謎の物体が近づいている。物体の軌道を計算するとどうだ。あ、ま、まずい!このままでは衝突するぞ」
 と、天文台からの報告。政府間で対策がおこなわれ始めた。「大きさはどのくらいだ?」「何の成分でできている」「破壊できそうか」と言ったやり取りを繰り返していたが、まだ遠くにあり実態がつかめておらず、一向に明確な対策が立てられない。
 ただ観測だけは毎日忘れることなく続けている。残念ながら物体は確実に惑星Sに近づいていた。もはやよほどおかしな軌道にでもならない限り、衝突は必至。

 だが、そんな中でも少しは光明が見えた。というのは当初は一体の大きな塊だと思われていたが、どうやらそれは複数の小さな塊がひとつに見えていたようなのだ。もしかしたら移動中に何らかの理由で分裂を繰り返したのかもしれないが、それは観測では判明せず正直なところはわからない。

 やがてその大きさもバラバラだと知ることになる。いちばん大きな塊でも直径数百メートル以下であることも判明。「この大きさなら衝突してもわがS星人が滅亡するということはなさそうだ」
「とはいえ、衝突地域の影響は計り知れません」これは今から3か月前にわかったこと。

「物体の成分はまだわからいのか!」「は、はあ、どうやら水に覆われているようですが、その中に核となる岩石や金属のようなものがあるかどうかは......」
 これは政府と天文台とのやり取り。天文台でも現時点で明確なことがわからない。ただ本当は水しかないのではという仮説をたたていた。宇宙空間上で浮かんでいるが、どうもそれが反対側に透けているように見える。それゆえ、余計にわかりにくいのだ。

「探査機を送り込み物体に衝突させろ。そうすれば明確に成分がわかるはずだ!」1か月前に惑星Sを統治する大統領は、苛立ちのあまり天文台に直接命令を下した。ちなみにこの星は単一国家で、元首たる大統領は10年に一度選挙で選ばれる。ただ何期でも立候補できるので、長期独裁政権も可能。この大統領も3期目となり、20年を超える長期政権を維持していた。

 こうして探査機をロケットで送り込む。いくつかある物体中で最も大きいと思われる塊に向けて探査機を向ける。接近を続けるたびに探査機からのデータが地上に送られてきた。「H2Oの可能性が高まったようです」「ということは水なのか?内部の様子は」「わかりません。まもなく衝突させます」

 探査機は大きな物体に激突した。そのとき、物体から細かい無数の破片に砕け散る。ただ当の探査機は破壊されることはなかった。物体の中をそのまま通過。こうして反対側に出てきたのだ。
「データが出ました。やはりH2Oがほぼ100%のようです」「水の塊が落ちて来るのか......」
「あとは我が惑星Sの大気圏に突入した時にどうなるかでしょうね」

 こうして襲来してきた物体が惑星Sに衝突するであろう日を迎えた。それが上空にある無数の透明の塊。「あれが襲来するのか!」「まるで水たまりの化け物だ!」と人々は口々につぶやいた。だがその物体がいよいよ星に向かって大気圏に入った時、専門家が予想していたことが起こった。大気圏に突入するとその際に熱を帯びるためか、塊が沸騰し蒸発していったのだ。

「おお、次々と」落ちてくると思われていたものが、次々と途中で消滅する。専門家が1週間前に出した見解と同じ結果となっていたため、みんな逃げずに肉眼あるいは望遠鏡や双眼鏡で様子を見ている。撮影してネットにUPする者の数は後を絶たず。またテレビ中継までやる始末。もほはや完全なる天体ショウとなっていた。

 こうしてあらゆる水でできた物体は地上に落ちることなく、大気圏内で蒸発した。みんな安心した表情で家に帰る。
 だがそれから間もなく、上空に異変が起こりだした。見たこともないような分厚い雲が作られ始め、どんどん上空を覆った。
「おそらく大気圏内で蒸発して水蒸気となったものが集まって雲を作っているのでしょう。これから1週間から2週間近く雨になるかもしれません」と専門家が言う。   
 そしてこの雲が最大限に大きく、星全体を覆ったとき、突然の雷鳴が地上に向かって大雨が降り出す。

 ここまでは専門家の予想通りだったが、雲に覆われてからもまだ次々と、水の物体が惑星Sに襲来していたことを見落としていた。雲が厚くて捉えることができなかったようだ。こうして絶対的な水の量が多いためか、大雨が3か月以上も続いてしまい......。


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シリーズ 日々掌編短編小説 854/1000

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