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リモートワークの日常 第1136話・3.22

「思わぬ出費に、少し頭が痛たいだって!」僕はちょうどパソコンの前にいて、3か月くらい前にSNSで呟いた言葉を見て笑う。
 3か月前は確かに出費が多かった。その理由は目の前にあるパソコンとその周辺機器を新調したからだ。
 なぜそうなったのか、それは僕がリモートワークをするように会社から言われたからである。これは部署の方針でそうなった。それから僕は月に一度だけ出社すれば、後は基本的にリモートだ。会議もZOOMでいいのだし、あと心配があるとすれば自己管理だけだろう。仕事とプライベートの区別がつきにくいから。

 こうして過去のSNSを追いかけるようなことなど、リモートワークをする前では考えられない。良くも悪くも上司がいない空間、もちろんしっかりと結果を出さなければならないが、ちょっとした息抜きが職場にいる時とは大きく違う。息抜きが職場にいるときよりも遥かにゆったりできることは、結果的に気分転換がしっかりとできるから、僕にとっては仕事の効率が大変良い。

 ではどんな一日を送っているか紹介しよう。会議があるときは仕方がないが、そうではないときは結構遅い時間に起きる。どうだろう、下手したらお昼前とかもあるかもしれない。そうするとパソコンを開けるとメールが大量に来て大変だが、そこは優先順位を考えれば難なくクリアできる。

 リモートワークをする前は、お昼ごはんだった時間が、僕にとっては朝ご飯のようなもの。朝食をゆっくりと食べながらのメールチェックは精神的に楽だ。ただ重い内容の業務のメールを見るときはへこんでしまう。こればかりはリモートワークもそれ以前もおんなじだ。

 さて、そこからはマイペースで仕事をする。周りに上司がいないとこんなに気分が楽だとは本当に思わなかった。別に上司と険悪ではないし、むしろ頼りになる人だからいろいろ相談できる。だけどいつもいて目を光らせているような気がすると、どうも気持ちにゆとりが持てない。その点リモートだとそういうプレッシャーがなくて仕事がはかどりやすいのだ。

「そうか」ここで気づいた。僕がリモートワークになった理由は、案外それがあったのかもしれない。確かにリモートワークを始めてから仕事量が増加し見事にこなせているような気がする。

 午後からが僕の本番、午前中の業務のようなものだ。夕方になるとおやつを食べる。もう定時の時間だが僕はこれからが仕事の本番。おやつを食べて小一時間ネットを徘徊しながら休んでからまた仕事が始まる。みんなが家に帰ったり、酒でも飲みに行ったりしている間、僕はひとり黙々仕事をするのだ。オフィスで残業をしていた時の時間でもあったが、残業で少人数で作業するのと、リモートで自宅で仕事をするのとでは全く違う。職場で人がほとんどいない中、静かに仕事をしているほど孤独はない。ちょっとした物音もオフィスに響く。これがまた寂しさを感じるのだ。
 ところがリモートワークだからできること。それはラジオだ。僕はリモートワークの間、ラジオをつけながらずっと仕事をしている。テレビだとみてしまうから駄目だが、ラジオは耳だけの話だし、DJの小気味よい会話も耳だけが反応しているから仕事には影響がない。

 気が付いたが午後10時を回っている。残業をしていてもこの時間になれば家に帰るだろう。だがリモートワークの僕は、まだ仕事の最中だ。ここからは何時にその日の仕事を切り上げるかがポイントだろう。あとは仕事の進捗具合と僕の気力だけで何時まで仕事をするか決まっている。

 そうそう、途中で風呂に入ることもあった。本当は仕事が終わってから風呂に入って眠るのが一番だが、仕事のタイミングによっては先に風呂に入ることもある。湯船につかりながら、仕事で行き詰ったことを考えると、突然ひらめくことだってあるのだ。
 それから夜ご飯も、深夜の時間帯だが適当なタイミングで食べる。いつ食べるかを決められるのもリモートワークの強みだ。

「あれ、もう日付を越えたのか」僕が時計を見ると、いつの間にか日付を超えている。ラジオは深夜番組になっていた。ここはあくまで自宅である。職場のような静まり返ったところから寂しく夜の街を歩く必要もない。
 仕事が何時で切り上げようとも、家から出ることなくベッドに横たわれる。あとは霧の良いところまで仕事をした。日付が越えるころには、大まかな仕事が終わっている。大事なことは、明日の朝職場ですぐに僕からの報告が伝わるよう、関係部署にメールをして終わるのがお決まりだ。

「さて、寝ようかな。ふぁあああ」僕は大あくびをした。リモートワークだからあくびをしても問題ない。時計を見ると深夜1時30分、もう誰も仕事なんかしていない時間だ。「さて、寝よう」僕はもう一度大あくびをするとベッドに直行した。こうしてマイペースで毎日仕事ができる僕のリモートワーク。もう元の職場での仕事に戻れないかもしれないことだけが気がかりだ。

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