無意味な一日　第1059話・12.23

「徐々に首をかしげたくなるような不思議な気持ちだ」目覚めると頭がモヤモヤしている。別に体調不良ではないがどうも変な気持ち。「今日は休みだしもっと寝ていようかな」
　頭がすっきりしないしもう少し寝ようかと思ったが、眠れない。目は冷めているようだ。それもそう、もう10時間近く寝ているではないか。

「そりゃもう眠れないわ」仕方なく起き上がった。スッキリはしているが別にどこかが痛いとか痒くもない。ただもやっとした気味の悪さだけが気持ちに引っかかる。
「このモヤモヤは何だろう」服を着て考えた。考えたが何も思い浮かばない。なんとなくであるが無意味な一日になりそうな気がした。

「テレビでも見ようか」特に目的もなくチャンネルをつける。最初のチャンネルはつまらないからすぐに変えた。そこもダメ、あそこもダメと結局のところ一通り見たけどどれもつまらない。
「消去法で行こうか？」
というわけでもう一度チャンネルを変えてみる。当然だが最初に切り替えたのとあまり変わらないチャンネルもあれば、大きく変わっている番組もあった。CMが番組に切り替わったり、逆に番組がCMになったりといった具合だ。
「10分ごとに違うチャンネルを見たらどうなるかな」とか考えたが、つまらない番組を10分も見てられない。結局チャンネルを変える前にテレビを切ってしまった。

「どこかに出かけようかなあ」と思った。しかしそれも悩んだ。気温を見ると限りなく氷点下に近い温度と表示されている。出かけたら寒くて凍えるに違いない。
「どうしようかなあぁ」また考える。外を見ると雲ひとつない天気。太陽が輝いているようにも見え、絶好のお出かけ日和だ。
「やっぱい出かけよう」と思って準備をして外に行くことにした。

　だが外に向かうドアを開けた瞬間に後悔する。「さ、寒い！」思わず体を震わせた。震わせたが今さら諦められない。そのままドアを閉め、震えながら街を歩く。天気は良いがとにかく気温が寒い、寒い。

「やっぱり帰ろうか」目的もなくただ出かただけだから寒さの方が気になる。こうしてまた家に向かって歩くことに。
「せっかくだから別の道に行こう」と思い別の道に向かって歩く。普段歩かない道、それだけでも新鮮だが、少し何かを期待していた。

　だが、何もない。カフェのひとつもあればそこで時間をつぶせるかとか考えたが、あるのは個人の住宅だけ。「何もないのか、何もないまま帰ることになりそうだ」思わずため息をつく。その息が白いものをなって遠くに吐き出される。しばらく忘れていた頭のモヤモヤ感が再発してしまう。

　ここでスマホからメッセージが来た。「うん？あ、あいつ、久しぶりだ」メッセージの相手は友達からである。「久しぶりにこっちに来たよ。暇だったら会わないか？」と書いてあった。「なんと、これはぜひぜひ」すぐに返事。

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「ようやく有意義な時間になった」
予定がない休日、朝のもやもやから始まって、テレビのつまらなさをきっかけに、寒い中勇気を出して外に出たこと。それまでは無意味な時間だと思っていた。

　もし家の中でテレビを見ていたら、友達からのメッセージに対して「行く」と、応じていただろうか？もしかしたら寒いからと断っていたかもしれない。
「だけど、外に出ちゃったからな」そういうことだ。
　外に出てうろうろしている時の連絡だから、すぐに返事をしてそのまま駅に向かった。そのまま友達と再会する。２年ぶりにあった友達はそんなに変わらない。駅前のカフェに入って、お互い近況を足りあった後、学生時代の懐かしい話で盛り上がった。アルコールの置いているカフェだったから久しぶりに、ワインを飲んだ。クリスマス前の楽しい時間はあっという間に過ぎる。

「またな」と、友達と別れたときにはすでに夕暮れとなっていた。真っ赤な西の空を見ながら、ちょうど点灯が始まったイルミネーションが視線に入る。「いい感じだ」駅前からしばらく続くイルミネーションを見ていると、どこかのお店からだろうか？クリスマスソングが聞こえてきた。

　やがて暗くなった夜空、イルミネーションは無くなったが、今度は上を見上げると雲が無く星空が輝いている中を歩く。砂粒のような小さな星が光っている。月はないかと探したが月は見えない。後で知ったがこの日は新月で、月が見えない日だったようだ。それでも星空を見ているだけで心が温かくなる気がするから不思議なもの。こうして家の前まで戻ってきた。

「おかげで、見事にスッキリしたな」無意味に思われた一日だったのに、気が付けば有意義な一日に変わった瞬間である。

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シリーズ　日々掌編短編小説　1059/1000

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